ACLS 急変対応マニュアル

A. 【2026年版】ACLS頻拍アルゴリズム|安定vs不安定・同期電気ショック200J・アデノシン【G2025対応・看護師向け】

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投稿日:2020年8月15日/最終更新日:2026年4月4日
執筆・監修:急変対応.net 編集部(AHA ACLSファカルティ/診療看護師)
本記事はAHA CPR/ECCガイドライン2025に基づいて執筆しています。

【30秒でわかる】頻拍アルゴリズムの要点

  • 頻拍の定義:HR > 100 bpm(ACLS対応は概ね150 bpm以上)
  • 最重要判断:患者が安定か不安定か
  • 不安定 = 低血圧/意識障害/ショック徴候/胸痛/急性心不全
  • 不安定な頻拍:薬は不要、即時の同期電気ショック(200J以上)
  • 安定な頻拍:QRS幅と規則性で分岐 → 迷走神経刺激・アデノシン・抗不整脈薬
  • 🆕 G2025変更点:AF/心房粗動で 200J以上の初回エネルギーが推奨
  • ピットフォール:モニター波形があっても脈なし = PEA(心停止扱い)

「数値・波形より患者の状態」で判断するのがACLS頻拍の原則です。

頻拍とは|ACLSで対応するのはどの範囲?

頻拍(tachycardia) は、一般に HR > 100 bpm と定義されます。ACLSアルゴリズムの対象となるのは、概ね HR ≥ 150 bpm の頻拍です。

ACLS頻拍アルゴリズムの骨格

頻拍対応は、以下の順序で判断します

✅️まず心停止かどうかを判断(必要時、脈触知)

✅️ 脈あり患者は安定か不安定か?

バイタル測定

□ 不安定 → 同期電気ショック(即時)
□ 安定 → 心電図評価(QRS幅・規則性)→ 薬剤療法

心停止との鑑別(最重要)

モニターに頻拍の波形が見えていても、脈がなければPEA(無脈性電気活)=心停止です。

  • 頻拍(脈あり):頻拍アルゴリズムへ
  • PEA(脈なし):CPR+アドレナリンの心停止アルゴリズムへ

「モニターで動いているから大丈夫」と思い込まずに、必ず脈を触知して鑑別します。これは徐脈アルゴリズムでも全く同じ原則です。

安定 vs 不安定の判断

心電図モニターに頻拍波形が出ても、波形だけで治療方針は決まりません
判断するのは患者の症状・自他覚所見です。

不安定な頻拍の5つのサイン

以下のいずれかがあれば「不安定」と判断します:

  1. 低血圧(ショック)
  2. 急性意識障害
  3. ショックの徴候(冷汗・皮膚蒼白・末梢循環不全)
  4. 虚血性胸部不快感(胸痛・圧迫感)
  5. 急性心不全(AHF)(呼吸苦・肺水腫)

なぜ症状で判断するのか

不安定な頻拍の病態は、「心拍が速すぎる/有効拍動でない」ため、心拍出量が低下しています。これが続くと臓器灌流が悪化し、心停止に移行します。

つまり、心拍出量の破綻を示す症状があるかどうかが、介入の緊急度を決めるわけです。

🆕 G2025での同期電気ショックの変更点

AHA 2025ガイドラインでは、頻拍への同期電気ショック(cardioversion)について、初回エネルギー設定の明確化使うべきでない戦略の明示が行われました。

G2020 vs G2025 主要変更点

項目G2020G2025
AF/心房粗動の初回エネルギー低エネルギー(50-100J)も可200J以上を推奨(biphasic)
低エネルギーショック許容避けるべき
Double sequential cardioversion不明原則使わない(2b)
WCTへのVerapamil/Diltiazem慎重使用使用不可(harm)
不安定・irregular・polymorphic WCTへのアデノシン慎重使用使用不可(harm)

なぜ200J以上?

3,000人以上の患者を含むランダム化試験・メタ解析により、200Jで初回成功率90%超が示されました。低エネルギーでは成功率が低く、結果的に総電気量が増えて害になるため、最初から200J以上が推奨されます。

看護師が押さえるべき実務ポイント

Double sequential shock(2台同時ショック) は初期対応で使わない

除細動器の初回設定を200J以上に合わせる(施設プロトコル確認)

同期モード(sync) を必ず確認(非同期ショック=除細動との混同に注意)

成功しない場合はエネルギーを段階的に上げる(300J → 360J等)

不安定な頻拍 → 即時の同期電気ショック

不安定な頻拍と判断したら、薬剤投与を待たずに同期電気ショックを準備します。

同期電気ショックとは?

心電図のR波(心室興奮の頂点)にショックを同期させる方法です。

なぜ同期が必要か

  • T波(心再分極)の時期は「vulnerable period(脆弱期)」で、この時にショックを与えるとVF(心室細動)を誘発するリスクがある
  • R波に同期することでこのリスクを回避できる

エネルギー設定(G2025対応)

リズム初回エネルギー備考
心房細動(AF)200J以上(biphasic)G2025で明確化
心房粗動200J以上(biphasic)初回200Jでも90%成功
単形性VT(pulse有り)100J成功しなければ段階的に増量
多形性VT(pulse有り)非同期ショック(除細動)同期不可→VFに準じる
narrow regular SVT50-100J段階的に増量

処置の流れ

  1. 患者への説明(意識がある場合)
  2. 鎮静(ミダゾラム/プロポフォール等、施設指示)
  3. パッド装着、sync モードを有効化
  4. R波同期確認
  5. ショック実施
  6. 効果判定(心電図・脈・血圧・意識)
  7. 成功しなければエネルギーを上げて再実施

安定した頻拍 → QRS幅と規則性で分岐

安定していれば、薬剤療法が第一選択です。QRS幅規則性で以下の4タイプに分類します。

タイプ代表例第一選択
Narrow QRS・規則的PSVT(AVNRT/AVRT)迷走神経刺激 → アデノシン
Narrow QRS・不規則AF、多源性心房頻拍β遮断薬/Ca拮抗薬
Wide QRS・規則的VT、SVT+脚ブロックアミオダロン/プロカインアミド
Wide QRS・不規則polymorphic VT、pre-excited AF要注意(下記参照)

⚠️ G2025で強調された禁忌

以下は患者に害を及ぼす可能性があるため避けてください:

  • WCT(Wide Complex Tachycardia)へのVerapamil/Diltiazem
    → WPW症候群などでVFを誘発するリスク
  • 不安定/irregular/polymorphic WCTへのアデノシン
    → リズムを悪化させる可能性

薬剤が無効な場合

薬剤・迷走神経刺激に無効で頻拍が持続するなら、安定でも専門医に相談(同期電気ショック)に進みます。
(G2025でCOR: 1推奨)。

アデノシンの使い方

※国内ではATP(アデホス)用量が違います。

適応:narrow QRS・規則的な頻拍(PSVT疑い)

投与方法

  • 初回6 mg 急速IV push(1〜2秒で)
  • 2回目:初回無効なら 12 mg 急速IV push
  • 投与後は生理食塩水20mLでフラッシュ(半減期が極短いため、速やかに中枢循環に届ける必要)

看護師が押さえるべきポイント

  • 近位の太い血管から投与(肘窩や中心静脈)
  • 3方活栓を使い、薬→フラッシュを連続して流す
  • 投与直後に一過性の心停止様波形(数秒〜10秒)が出ることを患者に伝える
  • 心電図記録を投与時から連続取得(診断的価値が高い)

⚠️ アデノシン禁忌・注意

  • コントロール不良の気管支喘息・COPDの発作時 → 気管支痙攣のリスク
  • 不安定な頻拍 → ショックが優先
  • Irregular / polymorphic WCT → G2025で明確に禁忌(COR: 3: Harm)
  • 妊娠中は投与可能(安全・有効)

🔑 SAMPLE問診の M(内服薬)・P(既往歴) は、アデノシン投与可否の判断に直結します。既往に喘息・COPDがあれば要注意。

看護師としての頻拍対応フロー

発見時の初期評価

  1. モニター確認 → HR・血圧・SpO₂・波形
  2. 患者評価:意識、胸痛、冷汗、呼吸苦
  3. 脈触知(PEAとの鑑別・必須)
  4. 応援要請(医師・先輩・RRT)
  5. 12誘導ECG(波形解析用)

医師への報告(ISBAR)

I(Identify):病棟◯◯、看護師△△です。

S(Situation):◯◯さん、HR180で頻拍です。波形はnarrow/wide/regular/irregular。

B(Background):既往に◯◯、内服◯◯(お薬手帳確認)。

A(Assessment):BP80/50、冷汗・胸痛あり、不安定な頻拍と判断。

R(Recommendation):至急診察を。除細動器を準備し、ルート確保します。

救急カート・準備物品

  • 除細動器(同期機能確認)、パッド
  • 鎮静薬(ミダゾラム、ラボナール等、施設指示)
  • アデノシン(6mg・12mg、フラッシュ用生食)
  • アミオダロン(WCT対応)
  • IVルート確保物品、12誘導ECG
  • 気道管理物品(鎮静時備え)

さいごに

さて、今回は頻拍のアルゴリズムを紹介しました。
大事なのは安定か不安定か判断することですが、もう一つあります。

それは、不明な点や不安な点があれば同時並行で専門医に相談することです。
もちろん不安定な頻拍の場合はその猶予もないので、躊躇わずに同期ショックが優先されるわけです。

また、今回の話はACLSコースにおける"アルゴリズム"の内容です。臨床で診療する場合(特に専門医も)、このアルゴリズムは当てはまらないことも多々あることは覚えておきましょう。

とはいえ、安定か不安定か判断するポイントやその後の治療の流れを想像できるのとできないとでは全然違うと思いますので、役立つことを期待しています。

ではまた!

【ACLS】頻拍のアルゴリズム

よくある質問(FAQ)

Q1. 頻拍はHRいくつから治療対象ですか?

HR > 100 bpmが頻拍の定義ですが、ACLSの頻拍アルゴリズムで介入対象になるのは概ね HR ≥ 150 bpm かつ 症状がある場合 です。HRが高くても症状がなければモニタリング優先、低めでも症状があれば緊急対応となります。

Q2. 安定と不安定はどう見分けますか?

以下のいずれかがあれば「不安定」と判断します。

  • 低血圧(ショック)
  • 急性意識障害
  • ショックの徴候(冷汗・皮膚蒼白)
  • 虚血性胸部不快感
  • 急性心不全

数値や波形でなく、患者の全体像で判断するのがACLSの鉄則です。

Q3. 🆕 G2025で同期電気ショックは何が変わりましたか?

最大の変更は 「AF/心房粗動の初回エネルギーを200J以上にする」 ことが明確に推奨された点です。

  • 200Jで初回成功率90%超のエビデンス
  • 低エネルギーショックは「避けるべき」に
  • Double sequential shock は原則使わない
  • WCTへのVerapamil/Diltiazemは「harm」

Q4. 同期電気ショックと除細動の違いは?

  • 同期電気ショック(cardioversion)脈のある頻拍 に対して、R波に同期して通電。VF誘発を避けるため。
  • 除細動(defibrillation)VF・pulseless VT(心停止) に対して、非同期で通電。

機器のsyncモードを忘れると、頻拍で非同期ショックを撃ってしまいVFを誘発する危険があります。

Q5. アデノシンを投与すると心停止するんですか?

一時的に心停止様波形が数秒〜10秒出ることがありますが、正常に戻ります。アデノシンは半減期が10秒未満と極短く、AV結節の伝導を一時的にブロックすることで頻拍を停止させます。

患者には事前に「数秒間、心電図の波形が止まったように見えることがあります」と説明しておくと安心です。

Q6. Wide QRS頻拍にアデノシンは使えますか?

条件付きです。

  • 使える:安定・regular・monomorphic WCT(診断目的でも可、COR: 2b)
  • 使えない:不安定、irregular、polymorphic WCT(G2025で「harm」)

迷ったら使わず、アミオダロン等の抗不整脈薬または同期電気ショックに進みます。

Q7. 頻拍の看護師対応、シミュレーションで何を練習すべき?

以下を反復練習するのがおすすめです:

  1. 安定/不安定の判断(症状評価)
  2. 同期モード(sync)の確認
  3. 鎮静薬の準備と投与タイミング
  4. アデノシン投与の手順(急速IV+フラッシュ)
  5. ISBARでの医師報告
  6. PEAへの移行を見逃さない(脈触知)

NCLSコースでは、これらを看護師の視点で繰り返し練習できます。

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実践で使えるようになるならACLSコース

頻拍アルゴリズムは、シミュレーションで繰り返し練習することで現場で使えるスキルになります。

参考文献

  • American Heart Association. 2025 Guidelines for CPR and ECC – Adult Tachycardia Algorithm.
  • American Heart Association. ACLS Provider Manual.
  • JRC蘇生ガイドライン2020(日本蘇生協議会)
  • 日本循環器学会. 不整脈薬物治療ガイドライン.
  • 2025 AHA Focused Update on Cardioversion for AF/Atrial Flutter

執筆・監修

急変対応.net 編集部
AHA公式 ACLSファカルティ/診療看護師(NP)監修
提携:JSISH-ITC(AHA公式ACLS/BLS/AED/FA講習)

本記事はAHA CPR/ECCガイドライン2025、JRC蘇生ガイドライン2025に準拠しています。臨床判断にあたっては各施設のプロトコルおよび主治医の指示に従ってください。

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