投稿日:2024年11月25日/最終更新日:2026年4月19日
執筆・監修:急変対応.net 編集部(AHA ACLSインストラクター)

アレストです!!
先生呼んで!

この記事でわかること(30秒サマリー)
- 心停止(Cardiac Arrest) は総称で、4つの心電図リズムを含む
- 電気ショック適応:VF(心室細動)/pVT(無脈性心室頻拍)
- 電気ショック非適応:PEA(無脈性電気活動)/Asystole(心静止)
- 心静止(Asystole) は電気活動が完全停止した状態で、4つのうち最も予後が悪いリズム
- 臨床では「アレスト!」と叫ぶだけでなく、4つのどれかを共有すると対応が早くなる
はじめに
臨床の急変場面では、「アレスト!」という言葉をよく耳にします。
これは心停止を意味する英語 Cardiac Arrest を略した表現です。
しかし、心停止を発見した際に、「アレスト」というだけでなく、モニターに表示される心電図のリズム、例えば「心静止(Asystole:エイシストリー)」と正確に表現することが重要な場合があります。
理由は簡単です。
心停止には「心静止」だけでなく、電気ショックが適応となる心リズムも含まれており、それぞれで必要なアクションが異なるからです。
「アレスト」と表現するのではなく、後述する4つの心リズムのいずれかで共有する方が、チーム内での情報共有につながり、迅速かつ的確な対応となる可能性があります。
では、心停止と心静止の違いについて詳しく解説します。
心停止 (Cardiac Arrest) に含まれる心リズム
心停止は以下の4つの心電図リズム(状態)を含む総称です。
大きく分けると、電気ショックが適応となるリズムと適応とならないリズムに分類されます。
- 電気ショック適応: 心室細動 (VF)、無脈性心室頻拍 (pVT)
- 電気ショック非適応: 無脈性電気活動 (PEA)、心静止 (Asystole)
いずれのリズムも、時間が経過すれば心静止(Asystole)に移行します。
そのため、心停止時の初期対応が患者の予後を大きく左右します。

各心リズムの特徴
1. 心静止 (Asystole)
- 定義: 心臓の電気的活動が完全に停止した状態
- 特徴: 心電図は直線的で、電気的活動が一切記録されない
- 対応:
- 胸骨圧迫(CPR)と人工呼吸で心筋への酸素供給を継続
- 早期にアドレナリン投与
- 除細動(電気ショック)は適応外
- 予後: 最も予後が悪い心リズム
2. 無脈性電気活動 (Pulseless Electrical Activity, PEA)
- 定義: 心電図には電気的活動があるが、超低血圧な状態
- 特徴: リズムはあるが"脈拍"が触知できない。
一見正常に見えるリズム(洞調律・徐脈・頻脈など)が 出ていることもある。頸動脈が触知できなければ超低血圧なのでPEAと判断する。 - 対応:
- 胸骨圧迫(CPR)とアドレナリンの早期投与
- 除細動は適応外
- 注意点:モニター波形があるため、心停止の判断が遅れやすい。 「波形が出ているから大丈夫」ではなく、必ず頸動脈の触知で確認する。 短時間で心静止に移行するため、早期認識が重要
3. 心室細動 (Ventricular Fibrillation, VF)
- 定義: 心室が速く不規則に収縮し、血液を送り出せない状態
- 特徴: 心電図にて波形が極めて不規則
- 対応:
- 直ちに除細動(電気ショック)が必要
早期にしないとエネルギー切れで心静止に至ります。 - CPRを併用しながら、血管収縮薬や抗不整脈薬を検討する。
- 直ちに除細動(電気ショック)が必要
- 発生頻度: 院内心停止の20%程度で発生
4. 無脈性心室頻拍 (Pulseless Ventricular Tachycardia, pVT)
- 定義: 心室が高速で拍動し、血液を送り出せない状態
- 特徴: 心電図にて規則的なwide QRS
- 対応:
- 除細動(電気ショック)が適応!
早期にしないとエネルギー切れで心静止に至ります。 - CPRを併用しながら、血管収縮薬や抗不整脈薬を検討する。
- 除細動(電気ショック)が適応!
まとめ
心停止 (Cardiac Arrest) は、心肺停止状態の総称であり、心室細動(VF)や無脈性心室頻拍(pVT)、無脈性電気活動(PEA)、心静止(Asystole)を含みます。 心静止 (Asystole) は、心臓の電気的活動が完全に停止した状態で、心電図上で一切の心拍が認められない状態です。これは、心停止の中でも最も最終形態で予後の悪い心リズムです。
よくある質問(FAQ)
Q1. 「心停止」と「心肺停止」の違いは何ですか?
ほぼ同じ意味で使われますが、厳密には少し違います。
- 心停止(Cardiac Arrest):心臓のポンプ機能が停止した状態
- 心肺停止(CPA: Cardiopulmonary Arrest):心停止に呼吸停止を伴う状態
臨床現場では同義的に使われることが多く、ACLS/NCLSでも「心停止=対応が必要な心肺停止」として扱われます。
Q2. 「アレスト」と「Asystole(エイシストリー)」は同じ意味ですか?
違います。
- アレスト(Arrest):心停止(Cardiac Arrest)の略で、4つのリズムすべてを含む総称
- Asystole(エイシストリー):心停止の中の1リズムで、電気活動が完全停止した状態
「アレスト!」と叫ぶだけでなく、「VFです」「Asystoleです」など具体的なリズム名で共有した方が、チーム対応がスムーズになります。
Q3. 心静止(Asystole)の心電図は完全な直線(フラットライン)ですか?
ほぼ直線ですが、完全な平坦ではありません。わずかなノイズや呼吸性変動は出ます。
重要:完全なフラットラインを見たら、まず確認すべきこと
- 電極が外れていないか
- リードが断線していないか
- モニターのゲインが下がりすぎていないか
- 2誘導以上で確認したか
本物の心静止と技術的トラブル(リード外れなど)を見分けるため、複数誘導での確認が推奨されます。
Q4. PEAと心静止(Asystole)、どちらが予後が悪いですか?
心静止(Asystole)の方が予後が悪いとされています。
- PEAは「何らかの可逆的原因(5H5T)」があれば蘇生の可能性
- 心静止はすでに電気活動が消失した末期的状態で、ROSC(自己心拍再開)の確率が低い
ただし、PEAも早期に原因を除去できなければ心静止へ移行するため、どちらも初期対応のスピードが命です。
Q5. VFとpVTの違いは何ですか?
どちらも電気ショック適応ですが、波形が違います。
- VF(心室細動):心室が無秩序に痙攣。心電図は不規則で波形がバラバラ
- pVT(無脈性心室頻拍):心室が規則的に高速拍動。心電図は規則的なwide QRS
対応は同じ(除細動+CPR+薬剤)なので、臨床では区別より「ショック適応かどうか」の判断が優先されます。
Q6. 「ROSC(ロスク)」とは何ですか?
ROSC(Return of Spontaneous Circulation)=自己心拍再開の略です。
CPRやアドレナリン投与の結果、自分の心臓が再び拍動し始めた状態。モニターで波形が戻るだけでなく、頸動脈の触知とEtCO₂の急上昇(40mmHg以上)がサインになります。
ROSC後は「PCAC(Post-Cardiac Arrest Care)」に進み、気道・循環管理、原因治療、目標温度管理などが必要です。
Q7. 新人看護師が「アレスト!」を発見したら、まず何をすればいいですか?
「評価 → 応援 → CPR」の3ステップです。
- 評価:意識・呼吸・脈(頸動脈)を10秒以内で確認
- 応援要請:ナースコール/院内緊急コール/「誰か来て!」
- CPR開始:胸骨圧迫(深さ5cm以上、テンポ100〜120回/分)
波形の種類(VF/pVT/PEA/Asystole)を判断するのはモニター装着後でOK。まず脈を触れて、なければ押すが鉄則です。
心停止と心静止の違い
| 項目 | 心停止 (Cardiac Arrest) | 心静止 (Asystole) |
|---|---|---|
| 定義 | 心停止の総称 | 心臓の電気的活動が完全に停止した状態 |
| 含まれるリズム | VF, pVT, PEA, Asystole | 心停止の中の1リズム |
| 除細動の適応 | VF/pVTでは適応、 PEA/Asystoleでは適応外 | 適応外 |
著者・監修
急変対応.net
万波 大悟(MANAMI DAIGO)
経歴資格
□ 診療看護師(NP)
□ 元救急看護認定看護師
□ AHA-ACLSファカルティ
(提携ITC:JSISH-ITC)
□ 救急看護学会 評議員
参考文献
- American Heart Association. Guidelines for CPR and ECC 2025.
- American Heart Association. ACLS Provider Manual.
- 日本救急医学会 用語集「心停止」「無脈性電気活動(PEA)」「心静止」
- JRC蘇生ガイドライン 2020