投稿日:2020年8月16日/最終更新日:2026年4月4日
執筆・監修:急変対応.net 編集部(AHA ACLSファカルティ/診療看護師)
本記事はAHA CPR/ECCガイドライン2025に基づいて執筆しています。【30秒でわかる】徐脈アルゴリズムの要点
- 徐脈の定義:HR < 50 bpm
- 症候性徐脈(治療対象):①徐脈 + ②症状あり + ③症状が徐脈由来
- 第一選択薬:アトロピン 1mg IV push(3-5分ごと、最大3mg)
- アトロピン無効時:経皮ペーシング → 経静脈ペーシング/アドレナリン/ドパミン
- 看護師の視点:HR・BPだけでなく、胸痛・呼吸苦・意識障害も評価。応援要請は早めに
- ピットフォール:PEA(無脈性電気活動)との鑑別 → 必ず脈触知で確認
「波形が読めなくても初期対応できる」のがACLS徐脈アルゴリズムの強みです。
うわーHR30bpm!!
心電図苦手だー。わからない。
大丈夫!徐脈のアルゴリズムは非常にシンプルです。
看護師として"波形を読めなくても"初期対応はできます。
ただし、アルゴリズムと一緒に覚えるのが一石二鳥なので早速やっていきましょう。
徐脈の定義
徐脈(bradycardia) は、一般に 心拍数(HR)< 50 bpm と定義されます。
ただし、ACLSで重要なのは 数値だけでなく「症状」 です。
症候性徐脈(symptomatic bradycardia)
以下の3条件すべてを満たすときに、治療介入が必要です:
- 心拍が遅い(HR < 50 bpm)
- 患者に症状がある
- その症状が徐脈に由来している
循環動態の評価ポイント
徐脈を見つけたら、「患者の循環が良好か/不良か」 を見極めます。HR・BP だけでなく、以下も評価します:
- 胸痛・胸部不快感(心筋梗塞・虚血由来の徐脈)
- 呼吸苦(心不全由来の徐脈)
- 意識レベル低下(脳灌流低下)
- 冷汗・皮膚蒼白(ショック兆候)
これらの症状があれば、「症候性徐脈」として即座に治療開始。症状がなければ、モニタリングと観察を継続します。
「徐脈の原因」を考えるクセを
症候性徐脈の治療を始めつつ、原因検索も並行して行います:
- 薬剤:β遮断薬、Ca拮抗薬、ジギタリス中毒
- 虚血:急性冠症候群(特に下壁梗塞)
- 電解質異常:高K血症
- 低酸素・低体温
- 房室ブロック(器質的異常)
- 迷走神経反射(嘔吐・疼痛・排便時など)
特に急性冠症候群に伴う徐脈は、アトロピンだけで解決せず緊急カテーテル治療が必要になることがあります。
症候性徐脈に対する初期対応

ステップ1:アトロピン(第一選択薬)
用量:1 mg IV push
投与間隔:3〜5分ごと
最大総投与量:3 mg
※ G2020での用量引き上げ(0.5mg → 1mg)はG2025でも継続されています。低用量では目的と反して徐脈を悪化させる「逆説的徐脈」のリスクがあるため、最初から1mgを投与します。
(国内では0.5mgとなっていますので医師の指示に従ってください)
アトロピンの作用機序
- 迷走神経(副交感神経)を遮断 → 洞結節の興奮頻度を上げる
- 迷走神経由来の徐脈には有効(迷走神経反射、薬剤性等)
- 器質的な房室ブロック(特に Mobitz II 型・完全房室ブロック)には無効
アトロピンが効かない徐脈は、洞結節が問題ではなく、伝導路が問題なので、ペーシングが必要です。
ステップ2:アトロピン無効 → 次の手
アトロピンが無効な場合、以下を並行して検討します:
- 経皮ペーシング(TCP: Transcutaneous Pacing)
→ 体表から電気刺激。即座に開始できる反面、刺激が強く患者に疼痛。一時しのぎ。 - 薬剤投与
→ アドレナリン点滴 2〜10 μg/min
→ ドパミン点滴 5〜20 μg/kg/min - 専門医コール(循環器医・麻酔科)
→ 経静脈ペーシング(transvenous pacing)の準備

経静脈ペーシング(transvenous pacing)とは
経皮ペーシングの次の段階として位置付けられる治療です。
経皮ペーシングと経静脈ペーシングの違い
| 項目 | 経皮ペーシング(TCP) | 経静脈ペーシング |
|---|---|---|
| 刺入部位 | 体表(電極パッド) | 中心静脈(内頸・大腿・鎖骨下) |
| 電気刺激の強さ | 強い(高出力必要) | 低い(心内膜に直接) |
| 患者の苦痛 | 強い(要鎮静) | 少ない |
| 位置付け | 一時的・救急対応 | 安定した一時ペーシング |
| 実施場所 | ベッドサイド | 処置室・カテラボ |
| 実施者 | 救急医や担当医 | 循環器医・麻酔科医 |
看護師の役割
- 経皮ペーシング中は疼痛管理(鎮静・鎮痛)
- 経静脈ペーシングへ移行するための準備(CV挿入物品、ペーシングリード、X線準備)
- 捕捉確認(electrical capture + mechanical capture):波形が出ているか+脈が触れるか
- 安全管理:電極の外れ、リードの位置ずれ、感染管理
看護師としての徐脈対応フロー
発見時の初期評価
- モニター確認 → HR・血圧・SpO₂・12誘導ECG
- 患者評価:意識、胸痛、冷汗、呼吸苦
- 脈触知(PEAとの鑑別・必須)
- 応援要請(医師・先輩・RRT)
医師への報告(ISBAR)
救急カート・準備物品
- アトロピン1mgアンプル(複数本)
- 経皮ペーシング用パッド
- 除細動器(ペーシング機能付き)
- IVルート確保物品
- 気道管理物品(意識障害時に備えて)
- 鎮静薬(経皮ペーシング時に備えて)
徐脈管理の8原則(AHAプロバイダーマニュアル準拠)
AHA ACLSプロバイダーマニュアルでは、徐脈対応に求められる判断を以下のように整理しています。看護師としても、これらを医師と共有する共通言語として押さえておくと、チーム対応がスムーズになります。
- ✅ 症状の鑑別:徐脈が患者の症状の原因か、無関係かを判断する
- ✅ 房室ブロックの診断:房室ブロックの有無と型(I度/Mobitz I/Mobitz II/完全房室ブロック)を見極める
- ✅ アトロピンの適切な投与:第一選択薬として1mg静注、3〜5分ごとに最大3mgまで
- ✅ 経皮ペーシングの開始判断:アトロピン無効時、あるいは高度房室ブロック疑い時に速やかに準備
- ✅ 代替薬の判断:アドレナリン(2〜10 μg/min)、ドパミン(5〜20 μg/kg/min)の適応と調整
- ✅ 経静脈ペーシングへの移行:循環器医と連携し、安定的なペーシング手段への切替を判断
- ✅ 原因検索の継続:虚血・薬剤中毒・電解質異常など可逆的原因の同定と是正
- ✅ 専門医コンサルトのタイミング:複雑なリズムや治療抵抗性の徐脈では早期に専門医へ相談
これらの判断を流れで捉えるのが、徐脈対応のコツです。単発の知識ではなく「全体の意思決定プロセス」を理解することが、シミュレーションや臨床での動きを洗練させます。
さいごに
頻拍のアルゴリズムにも書きましたが、突然心電図モニターのアラームがなった場合や初期対応するときに、PEA(無脈性電気活動)の存在は抑えておきましょう。
この脈拍のある徐脈なのかPEAなのかは初期評価の結果判断できます。
患者の外観に異常がなかったり、反応がある場合はピットフォールにハマりませんが、外観に異常があり反応がない場合、脈拍を触知しない限り判断できません。
もちろんここには"呼吸"などもはいってくるわけですが、我々は血圧やSpO2を無意識に頼りすぎているため、体系的なアプローチを修得しているとはいえないのかもしれません。
BLSの研修でやっている反応の確認はどのような場合に使うのか?
体系的なアプローチでは何を評価しているのか?
この辺りを整理すると見えてくると思います。
ではまた!!
You Tube動画
よくある質問(FAQ)
Q1. 徐脈はHRいくつから治療対象ですか?
一般的に HR < 50 bpm が徐脈の定義ですが、治療対象になるのは 「症候性徐脈」(症状がある徐脈)です。
- HR 45で症状なし → モニタリング継続
- HR 50で意識レベル低下 → 治療対象
「数値より症状」 で判断します。
Q2. アトロピンは何mgを何分ごとに投与しますか?
1 mg IV push を 3〜5分ごと、最大3mg まで投与します。
G2020で0.5mgから1mgに引き上げられ、G2025でも1mgが維持されています。0.5mgなど低用量では逆説的に徐脈を悪化させることがあるため、AHAの場合は最初から1mgを投与します。
Q3. アトロピンが効かない徐脈ってどういうとき?
アトロピンは迷走神経遮断で洞結節を刺激する薬なので、以下の徐脈には無効です:
- Mobitz II型・完全房室ブロック(伝導路の問題)
- 器質的な洞結節機能不全
- 心筋梗塞急性期(特に下壁梗塞では一時的に有効なことも)
無効な場合はペーシングや昇圧薬に進みます。
Q4. 経皮ペーシングと経静脈ペーシングの違いは?
- 経皮ペーシング(TCP):体表から刺激。即座に開始できるが患者の痛みが強く一時しのぎ
- 経静脈ペーシング:静脈からペーシングリードを心内膜へ挿入。刺激が低く持続可能
現場では経皮ペーシングで時間を稼ぎ、循環器医に引き継いで経静脈ペーシングへ移行します。
Q5. 徐脈とPEAはどう見分けますか?
脈の触知で判断します。
- 徐脈:モニターで波形あり+脈触知あり → アトロピン等で対応
- PEA:モニターで波形あり+脈触知なし → CPR+アドレナリン(心停止扱い)
波形があっても脈がなければ心停止です。徐脈と思ってアトロピンを用意している間にPEAに陥るケースもあるため、必ずまず脈を触れるのが鉄則です。
Q6. 徐脈で応援を呼ぶタイミングは?
症候性徐脈と判断した瞬間です。
- 「様子を見る」は危険
- 完全房室ブロックへ進行することがある
- 心拍出量低下で意識レベルが落ちる前に対応
「応援を呼んで解除するのは恥ずかしくない、呼ばずに悪化させる方が問題」が原則です。
Q7. 徐脈の看護師対応、何をシミュレーションで練習すべき?
以下を反復練習するのがおすすめです:
- 症候性徐脈の判断(症状評価)
- アトロピン投与(用量・タイミング)
- 経皮ペーシングの準備・実施(捕捉確認)
- ISBARでの医師報告
- PEAへの移行を見逃さない(脈触知)
NCLSコースでは、こうしたシミュレーションを看護師の視点で繰り返し練習できます。
関連記事・事前学習におすすめ
ACLSアルゴリズム関連
- 【2025年版】ACLS心停止アルゴリズム図解|アドレナリン投与の「3分・4分」問題も解決!
- 【ACLS】頻拍のアルゴリズムを紹介【看護師向け】
- 【2026年版】PEA(無脈性電気活動)とは|医療者が押さえる原因「5H5T」とACLS対応フロー
- 心停止と心静止(Asystole)の違い【看護師向けACLS/NCLS】
薬剤・手技
急変対応の基礎
実践で使えるようになるならACLSコース
徐脈アルゴリズムは、シミュレーションで繰り返し練習することで現場で使えるスキルになります。
頻拍のアルゴリズムについてはこちら

参考文献
- American Heart Association. 2025 Guidelines for CPR and ECC – Adult Bradycardia Algorithm.
- American Heart Association. ACLS Provider Manual.
- JRC蘇生ガイドライン2025(日本蘇生協議会)
- 日本循環器学会. 不整脈薬物治療ガイドライン.
- 日本救急医学会 用語集「徐脈」「房室ブロック」「経静脈ペーシング」
執筆・監修
急変対応.net 編集部
AHA公式 ACLSファカルティ/診療看護師(NP)監修
提携:JSISH-ITC(AHA公式ACLS/BLS/AED/FA講習)
本記事はAHA CPR/ECCガイドライン2025、JRC蘇生ガイドライン2025に準拠しています。臨床判断にあたっては各施設のプロトコルおよび主治医の指示に従ってください。