投稿日:2026年1月22日/最終更新日:2026年4月2日
執筆・監修:急変対応.net 編集部(AHA ACLSファカルティ/診療看護師)【30秒でわかる】ABCDEアプローチの要点
- ABCDEとは Airway(気道)→ Breathing(呼吸)→ Circulation(循環)→ Disability(意識/神経)→ Exposure(全身)の順で評価
- 命を奪う順に見る:気道が詰まれば呼吸できない、呼吸が止まれば循環は保てない
- 見つけたらその場で介入:「見る→介入→再評価」をループで回す
- 確定診断より先に「少し良くして時間を稼ぐ」ことが最初のゴール
- 使うのは非心停止患者:心停止ならBLS/CPRアルゴリズムへ即移行
- NEWS2で"気づき"、ABCDEで"行動"、SBARで"報告"の3点セット
看護師が「何から見るか」で迷わないための、世界標準の一次評価フレームワークです。
- ABCDEとは?──「まず何が命を奪うか」順に見る一次評価
- まず押さえる9原則(ABCDEを“現場で回る形”にする)
- “心停止かどうか”は最初に分ける(ABCDEは非心停止が基本)
- A:Airway(気道)──「声が出るか」「音が変か」
- B:Breathing(呼吸)── SpO₂より先に「呼吸数」と「呼吸仕事量」
- C:Circulation(循環)── 血圧より先に「末梢循環」と「ショックの匂い」
- D:Disability(意識・神経)──「低酸素/低血圧/低血糖」をまず潰す
- E:Exposure(全身観察)── “見ないと分からない致死因子”を拾う
- ABCDEは“1周で終わり”ではない:介入→再評価→次の一手
- NEWS2とABCDE:スコアは“気づき”、ABCDEは“行動”
- 「分かってるのに現場で使われない」問題:研究が示す落とし穴
- 教育の根拠:シミュレーションはABCDEを上手くする(ただし維持が課題)
- 【コピペ用】病棟・救外で使うABCDEチェックリスト(最短版)
- よくある質問(FAQ)
- 参考文献
- 執筆・監修
ABCDEとは?──「まず何が命を奪うか」順に見る一次評価
ABCDEは Airway(気道)→ Breathing(呼吸)→ Circulation(循環)→ Disability(意識/神経)→ Exposure(全身観察) の順に、致死的な異常を先に見つけ、見つけたらその場で介入し、再評価しながら進めるための体系的アプローチです。
重要なのは「診断名を当てる」より先に、いまこの瞬間の生命維持(酸素が脳・臓器に届く流れ)を回復させること。これは多職種で共通言語になりやすく、チームの動きをそろえます。

まず押さえる9原則(ABCDEを“現場で回る形”にする)
Resuscitation Council UK のガイダンスが、ABCDEの運用原則を非常に明確にまとめています。ポイントは次の通りです。
- A→Eの順で評価し、同時に治療する
- 全体像を素早く取り、介入後に必ず再評価
- 致死的な問題は次へ進む前に先に潰す
- 必要なら早期に応援要請(RRT/RRS/上級者)
- チームで同時並行(モニタ装着・ルート確保など)
- コミュニケーションは型(SBARなど)で短く正確に
- 「少し良くして時間を稼ぐ」ことが最初のゴール(確定診断は後でOK)
- 介入の効果が出るまで数分かかることがある(短い間隔で再評価)
- 記録と引き継ぎまでがABCDEの一部
さらに、ERC(欧州蘇生協議会)も院内悪化対応の教育要素として、バイタル測定+ABCDE型アプローチ+SBAR+エスカレーションを明記しています。
“心停止かどうか”は最初に分ける(ABCDEは非心停止が基本)
ABCDEは原則として 「呼吸があり、心停止ではない」患者の初期評価です。
倒れていて反応がなく、呼吸が正常でない(あえぎ呼吸は正常ではない)場合は、まず蘇生アルゴリズム(BLS/CPR)へ移行します。
最初の数秒:第一印象の評価 で「やばさ」を確定する
ABC…と入る前に、まずは 全体の第一印象で「この人は危ない」を確定させます。
- 安全確認(自分・スタッフ・感染対策)
- 外観・呼吸・循環から第一印象を評価
- ヤバいと思ったら患者に声かけ:「大丈夫ですか?」
- 普通に会話できる=気道が保たれ、呼吸・脳灌流がある程度ある
- 反応が鈍い/短い文しか話せない/反応なし=重症の可能性が高い
- 必要ならここで 応援要請を先に入れる(人が来るまでの時間が一番もったいない)
この“最初の見立て”の重要性は、ABCDEの「First steps」として整理されています。
この動画の第一印象はどうですか?
ヤバいですよね。
視線も合わないし呼吸もしてなさそう。
この場合はBLSの手順に進みます。
A:Airway(気道)──「声が出るか」「音が変か」
まず見るもの(短時間で)
- 話せるか(声量、途切れ、嗄声)
- 異常な呼吸音:いびき様(舌根沈下)、ゴロゴロ(分泌物/嘔吐物)、吸気性の笛様音(狭窄)など
- 胸腹部の逆運動(シーソー呼吸)など、閉塞のサイン
- 意識低下があると気道閉塞リスクが上がる
これらは、気道閉塞を疑う手がかりとして整理されています。
その場でできる初期介入(業務範囲で)
- 体位調整、気道開通の基本手技、口腔内の目視と吸引準備
- 必要なら 高濃度酸素を開始しつつ、上級者(医師/麻酔科/救急)へ早期コール
- 「気道が危ない」は 最優先でエスカレーション(Aで詰まるとB以下が全部崩れる)
「気道閉塞は緊急事態で、早期に専門的な助けを呼ぶ」という原則は明確です。
B:Breathing(呼吸)── SpO₂より先に「呼吸数」と「呼吸仕事量」
まず見るもの(見落としやすい順)
- 呼吸数(増加・増加傾向は悪化サイン)
- 呼吸の深さ/リズム/努力呼吸(肩で息、陥没、補助筋使用)
- チアノーゼ、冷汗
- 左右差(胸郭の動き)
- SpO₂ と “今入っている酸素(デバイス/流量/FiO₂の目安)”はセットで記録
呼吸数の重要性や、SpO₂が換気不全(高CO₂)を拾えない点など、現場でハマりやすい注意点に気をつけよう。
その場でできる初期介入
- 体位(起坐位など)・酸素投与(施設プロトコルに沿って)
- 目標SpO₂の考え方:一般に急性呼吸不全では 94–98% を目標、COPDなど高CO₂リスクでは 88–92% を目標とする運用が示されています(施設基準優先)。
- 重篤な呼吸苦、左右差、急激な悪化は 早期にRRT/医師コール(“Bで死ぬ”ケースは速い)
C:Circulation(循環)── 血圧より先に「末梢循環」と「ショックの匂い」
まず見るもの
- 脈(速さ・強さ・規則性)
- 皮膚:冷感、湿潤、蒼白
- 毛細血管再充満、四肢末梢の灌流
- 血圧(取れない/測れないも異常)
- 出血がないか(ドレーン、創部、便・吐血など)
「循環虚脱は原因により治療が異なるが、まず組織灌流の回復を優先し、致死的状態を見つけて緊急対応する」という整理は、ABCDEガイダンスの中核です。
その場でできる初期介入(業務範囲で)
- モニタ装着、静脈路確保・採血準備、輸液/昇圧は施設手順に従う
- 胸痛などでは早期に12誘導や医師評価へつなぐ
- ショック疑いはCで止まって“助けを呼ぶ”(原因鑑別は後からでもよい)
D:Disability(意識・神経)──「低酸素/低血圧/低血糖」をまず潰す
まず見るもの
- 意識レベル(AVPU あるいはGCS)
- 瞳孔(左右差、対光反射)
- 血糖(低血糖は“すぐ治せる致死的原因”になり得る)
- 痙攣、麻痺、急な錯乱
ガイダンスでは、意識障害の一般的原因として 低酸素・高CO₂・低灌流・鎮静/鎮痛薬などを挙げ、まずABCを見直すこと、血糖測定などの初期対応を示しています。
その場でできる初期介入(業務範囲で)
- まず A/B/Cの是正(酸素化と血圧)を優先
- 血糖の是正は施設プロトコルへ
- 気道が守れない意識レベルなら誤嚥リスク対応(体位など)+上級者コール
E:Exposure(全身観察)── “見ないと分からない致死因子”を拾う
まず見るもの
- 体温、発疹(アナフィラキシー/敗血症の手がかり)、出血斑
- 外傷、熱傷、ライン/創部、浮腫
- 体幹の聴診・触診(必要範囲で)
- ただし 露出は最小限+保温+尊厳(低体温を作らない)
「全身を観察するために露出が必要な場面がある一方、尊厳と熱喪失を最小化する」点が強調されています。
ABCDEは“1周で終わり”ではない:介入→再評価→次の一手
ABCDEは直線ではなく、ループです。
Aで介入したらA(+必要ならB)を再評価、Bで介入したらB(+必要ならA/C)を再評価…という具合に回します。これは「初期評価を完了し、定期的に再評価する」「介入の効果判定をする」という原則に基づきます。
NEWS2とABCDE:スコアは“気づき”、ABCDEは“行動”
病棟では「NEWS2が上がったらどうする?」が悩みどころですが、考え方はシンプルです。
- NEWS2:悪化の検知(トリガー)
- ABCDE:悪化に対する一次評価と初期介入(アクション)
英国のe-Learning(NHS系)でも、ABCDEが悪化患者評価の推奨アプローチであり、NEWS2の基盤になっていると説明されています。
またERCの院内悪化対応教育でも、バイタル測定・ABCDE・SBAR・エスカレーションがセットで扱われています。
「分かってるのに現場で使われない」問題:研究が示す落とし穴
ABCDEは有名ですが、実は 現場での実施率・遵守率が十分でないことが複数研究で示されています。
- 救急外来の観察研究では、(トリアージ上)不安定の可能性がある患者でも ABCDEが使われたのは一部だった、という報告があります。
- 知識テスト研究では、ABCDEの理論知識スコアが職種や部署などでばらつき、知識向上の介入が推奨されています。
- 2024年のスコーピングレビューでも、ABCDEのツールは多様で、遵守率の幅が大きい一方、患者アウトカムとの関連データはまだ乏しい、と整理されています。
つまり、皆さんがつまずくのは「概念」より “現場で回す型”。
だからこそ次の2つが効きます。
- コピペできるチェックリスト
- 報告(SBAR)まで含めた一連の流れ
教育の根拠:シミュレーションはABCDEを上手くする(ただし維持が課題)
ABCDEを「できる」に変えるには、座学より シミュレーションが強い、というデータがあります。
- シミュレーションを用いた教育研究で、ABCDE一次評価のパフォーマンスが 受講直後と3–4か月後でも受講前より改善していた、という報告があります。
- 一方で、時間とともに低下しやすいのは CRM(チーム連携・コミュニケーション等)であり、リフレッシャーの必要性も示唆されています。
【コピペ用】病棟・救外で使うABCDEチェックリスト(最短版)
0)最初は第一印象の評価
- □ 安全確認/感染対策
- □ 反応と呼吸を確認(心停止ならCPRへ)
- □ 応援要請を早めに(RRT/医師/先輩)
- □ モニタ・SpO₂・血圧など“早めに装着”
A)Airway
- □ 話せる?声は?
- □ 異常音(いびき/ゴロゴロ/笛)
- □ 体位・気道確保・吸引準備、危なければ上級者コール
B)Breathing
- □ 呼吸数(増加/増加傾向)
- □ 努力呼吸・左右差・SpO₂(酸素条件とセット)
C)Circulation
- □ 脈・皮膚・末梢灌流・血圧
- □ 出血/ショックの匂い
- □ ルート・採血・心電図など、施設手順で同時並行
D)Disability
- □ AVPU/GCS、瞳孔、血糖
- □ まずABCを再確認(低酸素・低灌流・薬剤)
E)Exposure
- □ 体温、発疹、外傷、ライン/創部
- □ 露出は必要最小+保温+尊厳
よくある質問(FAQ)
Q1. ABCDEの覚え方のコツは?
「命を奪う順」 で覚えるのが一番定着します。
- Airway(気道) → 詰まれば数分で死ぬ
- Breathing(呼吸) → 止まれば数分で死ぬ
- Circulation(循環) → 不全で数十分以内に致命的
- Disability(意識/神経) → 可逆的原因(低血糖など)を見逃さない
- Exposure(全身) → 隠れた致死因子を探す
ABCDは5〜10分で命に関わる順で、Eは見落とすと致命的な情報を拾うという意味合いです。
Q2. ABCDEとSAMPLE・OPQRSTの関係は?
別の役割を持つツールで、並行して使います。
| ツール | 目的 |
|---|---|
| ABCDE | 生理学的評価(体の状態を短時間で把握) |
| SAMPLE | 基本情報の問診(既往・薬剤・経緯) |
| OPQRST | 症状の詳細(痛みの性質・時間経過) |
ABCDEで生命徴候を評価しながら、SAMPLEとOPQRSTで情報収集します。患者1人に全部使います。
Q3. ABCDEは心停止患者にも使える?
原則として使いません。心停止患者には BLS/CPR アルゴリズムが優先されます。
ABCDEは「呼吸があり、心停止ではない患者」の初期評価ツールです。倒れて反応なく、正常呼吸がない場合は、ABCDEより先にCPRを開始します。
Q4. ABCDEを1周するのにどれくらい時間がかかる?
慣れた看護師で 1〜3分 程度です。ただし:
- 介入が必要なら各ステップで止まる
- 異常があれば次に進まず再評価
- 「介入→再評価→次の一手」を回すため、実際はループ
「1周で終わり」ではなく、患者が安定するまで繰り返すのが正解です。
Q5. NEWS2とABCDEはどう使い分ける?
明確に役割が違います。
- NEWS2:「この患者は悪化しているかも」の気づき(トリガー)
- ABCDE:気づいた後の一次評価と初期介入(アクション)
- SBAR:評価の結果を医師に伝える型(報告)
「NEWS2が上がった → ABCDEで評価 → SBARで報告」が病棟看護師の基本フロー。
Q6. ABCDEを使うのが難しいと感じます。どうすれば上達しますか?
研究でも、知識だけでは現場で使えないことが指摘されています。
最も効果的な上達法はシミュレーションです。研究では、シミュレーション教育で3〜4ヶ月後もスキルが維持されていたという報告があります。
NCLSやACLSコースでは、ABCDEをシミュレーションで繰り返し使います。「知っている」を「動ける」に変えるには、反復練習が不可欠です。
Q7. 応援要請はABCDEのどこで行うべき?
早ければ早いほど良いです。第一印象で「危ない」と感じたら、A評価の前でもOK。
特に以下は躊躇しない:
- 気道異常(A)
- 急激な呼吸苦(B)
- ショック疑い(C)
- 意識レベル急低下(D)
「応援を呼んで見てもらってから解除する」のは恥ずかしくありません。呼ばずに悪化させる方がよほど問題です。
参考文献
- Resuscitation Council UK. The ABCDE Approach(updated July 2024)
- Thim T, et al. Initial assessment and treatment with the ABCDE approach (Int J Gen Med, 2012)
- Bruinink LJ, et al. The ABCDE approach in critically ill patients: scoping review (Resusc Plus, 2024)
- Drost-de Klerck AM, et al. Simulation training to teach ABCDE primary assessment (BMJ Open, 2020; PMC)
- Schoeber NHC, et al. Healthcare professionals’ knowledge of the systematic ABCDE approach (BMC Emerg Med, 2022; PMC)
- Olgers TJ, et al. ABCDE primary assessment in the ED: observational pilot study (Neth J Med, 2017; PDF)
- European Resuscitation Council. Guidelines 2021: Adult advanced life support(院内悪化対応教育にABCDE型・SBARを含む)
- e-Learning for Healthcare (NHS). ABCDE Approach programme(悪化患者評価の推奨、NEWS2の基盤として言及)
- JMECC(日本内科学会認定 内科救急)資料(非心停止患者への共通アプローチ、ABCD評価など)
- American Heart Association. ACLS Provider Manual(ABCDE関連セクション)
- 日本救急医学会 編. 救急診療指針
- NCLS公式テキスト(コードブルー刊、看護師向けABCDE章含む)
執筆・監修
急変対応.net 編集部
AHA公式 ACLSファカルティ/診療看護師(NP)監修
提携:JSISH-ITC(AHA公式ACLS/BLS/AED/FA講習)
本記事は、Resuscitation Council UK、ERC 2021 Guidelines、複数の査読付き研究論文に基づいて執筆しています。臨床判断にあたっては、各施設のプロトコルおよび主治医の指示に従ってください。
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