📋 この記事の結論(30秒でわかる)
⚡ 2分岐だけ覚えればOK: 左(VF/pVT) or 右(PEA/Asystole)
🔴 左(VF/pVT): ショック主役。2回目のショック後にアドレナリン、3回目後に抗不整脈薬
🔵 右(PEA/Asystole): アドレナリンをできるだけ早く。ショックは無効
💊 成人の基本量: アドレナリン1mg を 3〜5分ごと
(推奨運用:2ループごと=約4分)
🆕 G2025の変更点: ルートはIVファースト、POCUSは圧迫を止めないなら可
📚 根拠: AHA CPR/ECC Guidelines 2025、ILCOR 2025 CoSTR
🎯 この記事でわかること
☑ ACLS心停止アルゴリズムを2つのルートで整理する方法
☑ アドレナリンの「3分・4分」問題の現場運用
☑ G2025で変わった2つのポイント(IVファースト・POCUS)
☑ タイマーが鳴った時の正しい手順(即投与NGの理由)
📝 著者・監修
万波 大悟
MANAMI DAIGO
急変対応.net 代表
🎓 経歴・資格
🏆 インストラクター資格
AHA-ACLSファカルティ
(提携ITC: JSISH-ITC)
AHA ACLSファカルティ・診療看護師(NP)として、看護師向けの急変対応教育を中心に活動。臨床現場とガイドラインの橋渡しとなる情報発信を続けています。
ACLS(二次救命処置)のプロバイダーコースで、多くの人が最初にぶつかる壁が「心停止アルゴリズム」です。
あの複雑なフローチャートを丸暗記しようとすると、いざ現場や実技試験で頭が真っ白になってしまう──そんな経験、ありませんか?
でも、実はアルゴリズムは「たった2つのルート」に分解すれば、驚くほどシンプルに理解できます。
この記事では、最新のAHAガイドライン(G2025)に基づき、臨床現場でもコース受講でも通用する対応を整理しました。
ここさえ押さえておけば、メガコード(実技試験)も、実際の急変現場も、落ち着いて動けるようになります。

1. 全体像:「左」に行くか、「右」に行くか
心停止の対応は、モニター心電図の波形を見た瞬間に、以下の2つのルートに分かれます。
⚡ 左のルート:Shockable
電気ショックが効く波形
対象波形:
VF(心室細動)
pVT(無脈性心室頻拍)
💊 右のルート:Non-Shockable
電気ショックは効かない波形
対象波形:
PEA(無脈性電気活動)
Asystole(心静止)
💡 まずは「ショック適応か、そうでないか」の判断がすべてのスタート

※日本語訳はG2020です。あまり大きな変更点はありません。
2. 左のルート:VF / pVT の対応(電気ショック)
⚡ 黄金のサイクル(VF/pVT)
1
ショック(除細動)実施
二相性なら推奨エネルギー(例:150J/200J)、わからなければ最大エネルギーで。
2
直ちにCPR再開(2分間)
⚠️ ショック直後に脈の確認はしません!すぐに胸骨圧迫です。
3
リズムチェック(2分後)
まだVFなら、再度ショック。
推奨ジュールは画像の"150"とオレンジマークがついてる部分です。

💊 薬剤投与のタイミング(最重要)
VF/pVTでは、薬を入れるタイミングが決まっています。初回の除細動に反応しない場合、2回目のショック施行後
初回ショックに反応しない場合
ショック → ショック → アドレナリン → ショック → アミオダロン
💉 アドレナリン(1mg)
📍 2回目のショック後、CPR中に投与
🔁 以後、3〜5分ごと(2ループに1回)繰り返し
💡 商品名: ボスミンなど
💊 抗不整脈薬
📍 3回目のショック後、CPR中に投与
アミオダロン: 初回300mg、2回目150mg
リドカイン: 初回1〜1.5mg/kg、2回目0.5〜0.75mg/kg
⚠️ 注意: 2回目ショック後の「CPR 2分間の中で」アドレナリン投与。優先は電気ショック!
🩺 現場の鉄則|救急カートのアドレナリンを確認せよ!
心停止時の第一選択薬はアドレナリン(商品名:ボスミンなど)。アルゴリズムを覚えるだけでなく、「自分の病棟の救急カートにどのタイプが入っているか」を必ず確認しておきましょう。
📦 心停止時に使うのは「1mg/1mL」製剤
🍼 アンプルタイプ
例: ボスミン注 1mg など
特徴: 茶色の遮光アンプル
⚠️ 注意点
・アンプルカットで指を切らないように
・シリンジに吸う手間(数秒)がかかる
💉 プレフィルドシリンジ
例: アドレナリンシリンジ「オーツカ」など
特徴: 最初からシリンジに薬剤入り
✅ メリット
・キャップを外して接続するだけで最速
・コストが高く未採用の病院もあり
🎯 新人さんへのミッション
次の出勤で、救急カートの引き出しを開けて「うちはアンプルか? シリンジか?」を目視確認してください。いざという時の「手触り」をイメージしておくことが大切です。
救急カート内に入ってるアドレナリン(ボスミン)のタイプは確認しておこう💉 投与の3点セット(絶対的なお作法)
心停止時の静脈路投与(IV)には絶対的な手順があります。これをやらないと、薬が心臓まで届きません。
Flush
② 後押し洗浄
生理食塩液20mLでルートを一気に流す(薬剤の残留防止)
Elev
ation
③ 上肢の挙上
投与した腕を高く上げる(重力で心臓へ)
※実臨床ではあまり見かけない...
⏰ 「3〜5分ごと」の現場運用パターン
アドレナリンの投与間隔はガイドラインでは「3〜5分ごと」とされていますが、現場での運用には大きく2つのパターンがあります。
パターンA|きっちり「3分」管理
方法: 薬剤専用タイマー3分で投与
✅ メリット
頻回投与で血中濃度を保ちやすい
⚠️ デメリット
リズムチェック(2分)と薬剤(3分)のタイマーがズレて混乱しやすい
⭐ パターンB|4分(2ループ)管理
方法: リズムチェック2回ごとに投与(2分×2=4分)
✅ メリット
タイマー1つで済む・シンプル・ミスが少ない
💡 特にデメリットなし
3〜5分の範囲内に収まる
💡 現場のコツ
蘇生開始時に、リーダーまたはタイムキーパーが
「アドレナリンは2ループ(4分)ごとに評価して投与します」
と宣言しておくと、チーム全員が共通認識を持てます。
🚨 超重要|タイマーが鳴っても「即投与」は絶対ダメ!
(4分間隔でリズムチェックに合わせる場合)
シミュレーションでも臨床でもよくある危険な間違い
❌ 間違い
タイマーがピピピと鳴った瞬間、「はい時間です!」と反射的にアドレナリンを静注してしまう
🤔 なぜダメなのか?
もし、その直前のリズムチェックで心拍再開(ROSC)していたらどうなるでしょうか?
→ 心臓が動き出しているのに、大量のアドレナリン(1mg)を急速静注することになり、過剰な負荷をかけてしまいます。
✅ 正しい手順
2
波形を確認し、脈がないことを確認(心停止の継続)
📣 大原則
「4分間隔」は「心停止が継続していたら投与する」という意味。秒単位で厳密に管理する必要はなし。「評価 → 再開 → 投与」の順序を守る。
※アドレナリンの薬理作用や効果についてさらに詳しく知りたい方は、[こちらの記事]を参考にしてください。
蘇生時に使うアドレナリンの効果
3. 右のルート:PEA/Asystole の対応(電気ショック適応外)
💊 とにかくアドレナリンを早く!(PEA/Asystole)
📣 現在のガイドラインで最も強調されているポイント
ショック適応外(PEA/心静止)と判断したら、
可能な限り「早急に」アドレナリンを投与する。
⚠️ 注意: VFの時のように「2回目のショックの後…」などと待ってはいけません。ルートが取れ次第、即投与です。
🔁 サイクル
3
リズムチェック
⚡ VF/pVTに変化したら → 左のルートへ移動(ショック準備)!
🔁 変化なければ → CPR継続+原因検索(5H5T)
※関連記事: PEAの原因「5H5T」の詳細は[こちらの記事]をご覧ください。
🆕 G2025変更点|知っておきたい2つのアップデート
AHAガイドライン2025(G2025)で、現場での振る舞いに関わる重要なアップデートがありました。コース受講や臨床対応で差がつくポイントです。
📣 変更の概要
以前はIV/IOがほぼ並列の扱いでしたが、2025ガイドラインでは「まずはIV(静脈路)を優先する」と明記されました。
💡 理由
IOからの薬剤投与は、IVに比べて効果が劣る可能性が示唆された
✅ 現場での動き
まずは腕などの静脈確保を試みる。それが「困難」と判断されたらIOへ。安易に最初からIOを選ばないようにしましょう。
📝 補足
CV(中心静脈)は大量輸液には適していません(内腔が狭くカテーテルが長いため)
📣 変更の概要
心停止の原因検索に超音波(エコー)は有用ですが、G2025では使い方に釘が刺されました。
✅ 推奨の条件
「熟練者が、胸骨圧迫を中断せずに行える場合に限り考慮可」
⚠️ NG
エコーを見るために「ちょっと圧迫止めて!」と中断時間が長すぎるのは絶対にNG
💡 現場での判断
自信がないなら、エコーより圧迫を優先しましょう
💪 共通項目|質の高いCPR(High-Quality CPR)
どの波形であっても、蘇生のベースとなるのはCPR。ここが疎かだと薬も効きません。
✅ CPRパラメータ
💨 換気
過換気を避ける
30:2、挿管後は6秒に1回
📊 EtCO2(呼気終末二酸化炭素分圧)をモニタリング!
⚠️ EtCO2 が 10mmHg未満
CPRの質が悪い可能性あり → もっと強く深く!
🎉 EtCO2 が急に 40mmHg以上に上昇
心拍再開(ROSC)のサインかも!
まとめ:アルゴリズム暗記のコツ
- まず「左(ショック)」か「右(薬)」かを見極める。
- 左(VF/pVT)なら: ショック優先。薬は2回目・3回目のショック後。
- 右(PEA/Asystole)なら: アドレナリン最優先(即入れる)。
- 共通: 絶え間ないCPRと、コミュニケーション。
この基本骨格さえ頭に入っていれば、2025年のコース受講も現場対応も余裕を持って行えます。頑張ってください!
よくある質問(FAQ)
Q1. アドレナリンは「3分ごと」と「4分ごと(2ループ)」のどっちがいい?
どちらもAHAガイドラインの「3〜5分ごと」の範囲内で許容されますが、
「4分ごと(2ループに1回)」 が現場運用ではおすすめです。リズムチェック
(2分)と同期するため、タイマーが1つで済み、チームの混乱が少なくなります。
蘇生開始時にリーダーが「アドレナリンは2ループごとに評価して投与します」と
宣言しておくと、全員の共通認識になります。
Q2. タイマーが鳴った瞬間にアドレナリンを投与していいですか?
リズムチェックのタイミングでアドレナリンを投与しているプロトコルの場合ダメです。 「評価(リズムチェック)→ CPR再開 → 投与」の順を守ります。
タイマー直前にROSCしていた場合、大量のアドレナリンを急速静注すると過剰な
負荷をかけてしまいます。「時間だから打つ」ではなく「心停止が継続していたら
打つ」が正解です。
Q3. VF/pVTでアドレナリンを打つのはいつですか?
2回目のショックの後、CPR中に投与します。1回目のショックで除細動に
成功する可能性があるため、初回からの薬剤投与は不要です。以降は3〜5分ごと
(2ループごと)に反復投与します。
Q4. 抗不整脈薬(アミオダロン/リドカイン)はいつ使いますか?
3回目のショックの後、VF/pVTが継続している場合に考慮します。
- アミオダロン:初回300mg(ボーラス)、2回目150mg
- リドカイン:初回1〜1.5mg/kg、2回目0.5〜0.75mg/kg
どちらを使うかは施設方針次第ですが、アミオダロンが第一選択となることが
多いです。
Q5. PEAや心静止でもアドレナリンは2回目のショック後に投与ですか?
違います。 PEA/Asystoleはそもそもショックが効かないため、「ルートが 取れ次第、可能な限り早く」投与するのが鉄則です。VF/pVTと真逆のタイミングなので混同しないように。
Q6. G2025で「IVファースト」になったのはなぜですか?
IOからの薬剤投与は、IVに比べて効果が劣る可能性が示唆されたためです。
以前はIV/IOがほぼ並列でしたが、G2025では「まず静脈路を試みて、困難なら
IO」という順序が明示されました。安易に最初からIOを選ばないように
しましょう。
Q7. 胸骨圧迫の質は何で評価できますか?
EtCO₂(呼気終末二酸化炭素分圧)のモニタリングが最も実用的です。
- 10mmHg未満:CPRの質が不十分な可能性あり。もっと強く深く
- 急に20mmHg以上(または正常値近くまで)に上昇:ROSC(自己心拍再開)のサインかも
他にAライン(拡張期血圧)の数値も参考になります。
🎥 動画でも学ぶ
🎬 【ACLS】心停止のアルゴリズム
記事と合わせて動画でも復習できます。実際の流れを映像で確認することで、理解がより深まります。
【ACLS】心停止のアルゴリズム 🎯 学んだ知識を実践に変えるコース
記事で理解した心停止アルゴリズムを、実際に体で動けるレベルまで引き上げるには、シミュレーションでの反復練習が不可欠です。急変対応.netでは、目的別に選べる3つの学習オプションを提供しています。
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