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【看護師向け】ショック5分類完全ガイド|原因・症状・初期対応・薬剤使い分け【2026年版】

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📋 この記事の結論(30秒でわかる)
💓 ショック=組織への酸素供給不足による細胞障害
⚠️ 血圧低下=ショックではない!初期は血圧が保たれる(代償性ショック)
🔍 ショックの5P: Pallor(蒼白)・Perspiration(冷汗)・Prostration(虚脱)・Pulmonary Insufficiency(呼吸不全)・Pulselessness(脈拍微弱)
🗂️ 5つに分類: ①循環血液量減少性 ②心原性 ③閉塞性 ④分布異常性 ⑤神経原性
🎯 目標: 平均血圧(MAP) ≥ 65 mmHg(SSCG 2021推奨)
💉 昇圧薬: 第一選択はノルアドレナリン、アナフィラキシーはアドレナリンIM
⏰ 敗血症性ショックは1時間バンドル、早期介入が予後を左右
🎯 この記事でわかること
☑ 「血圧低下=ショック」ではない理由(代償性ショック)
☑ ショックの5Pと平均血圧(MAP)の理解
☑ 5分類それぞれの原因・症状・初期対応
☑ 昇圧薬の使い分け・看護師の動き方6ステップ
📉 血圧 80/40...!?
脈が速い、顔色が悪い、意識もおかしい...
これはショックかもしれない。
でも、どのショック?原因は?何から手をつける?
✅ この記事のゴール
血圧低下や「なんか変」を見たときに、どのショックか見当をつけ、初期対応が迷わず動けるようになる。
💓 ショックとは?|定義と病態
ショックは、「全身の組織・臓器に十分な酸素が届かず、細胞レベルで障害が起きている状態」です。単なる「血圧が低い状態」ではありません。
📖 ショックの定義
SSCG 2021・ACCM・JRC2020参照
組織灌流不全による細胞機能障害
= 酸素供給(DO₂) < 酸素需要(VO₂)の状態
🔍 ショックで何が起きているか?
末梢循環不全 → 皮膚冷感・蒼白・CRT延長
意識障害 → 脳灌流低下(JCS・GCS悪化)
腎灌流低下 → 尿量減少(0.5 mL/kg/hr未満)
代謝性アシドーシス → 乳酸値上昇(≥2 mmol/L)
頻呼吸・頻脈 → 代償反応
⚠️ 「血圧低下=ショック」ではない|代償性ショックを見逃すな
臨床でよくある大きな誤解が「血圧が下がっていないからショックではない」という判断。実は血圧低下はショックの"後期サイン"。初期には血圧が保たれている代償性ショックの段階があります。
📊 ショックの進行3段階
① 代償性ショック(初期)|見逃しやすい!
血圧は保たれている(代償機構による)
頻脈・頻呼吸が出現
末梢冷感・蒼白・CRT延長(2秒以上)
☑ 意識はほぼ清明(軽い不穏・不安)
☑ 尿量やや減少
💡 ここで気づけるかが勝負!
看護師が「なんか変」と感じる段階。血圧だけを見ていると見逃す。
② 進行性ショック(中期)|血圧低下出現
収縮期血圧 < 90 mmHg or 平時より-40
意識障害出現(JCS・GCS悪化)
尿量減少(<0.5 mL/kg/hr)
乳酸値上昇(≥2 mmol/L)
☑ チアノーゼ・冷汗
③ 不可逆性ショック(末期)|臓器不全
多臓器不全(MOF)
DIC(播種性血管内凝固)
☑ 治療抵抗性の低血圧
☑ 無尿・意識消失
🚨 ここまで行くと治療しても救命困難
だからこそ①の段階で気づくことが重要
🧬 なぜ初期は血圧が保たれるのか?|代償機構
ショックの初期には、体が生命維持のための代償機構を働かせます:
① 交感神経活性化: 頻脈・血管収縮で血圧維持
② RAA系活性化: Na・水の再吸収で循環血液量維持
③ 血流再分配: 脳・心臓を優先、末梢(皮膚・筋肉)を犠牲に
⚠️ 重要: 健常成人では、循環血液量が30%以上減少して初めて血圧低下が現れます。それまでに頻脈・末梢冷感・意識変容などが先行。「血圧が下がってから対応」では手遅れになることも。
📊 平均血圧(MAP)|ショック管理の最重要指標
ショックの評価・管理では、収縮期血圧(SBP)よりも平均血圧(MAP)が重要視されます。なぜなら、臓器灌流を決めるのは平均血圧だからです。
🧮 平均血圧(MAP)の計算式
MAP = 拡張期血圧(DBP) + 脈圧/3
= DBP + (SBP - DBP)/3
💡 計算例:
血圧 120/80 mmHgの場合
MAP = 80 + (120-80)/3 = 80 + 13.3 = 約93 mmHg
⚠️ 低血圧の例:
血圧 80/40 mmHgの場合
MAP = 40 + (80-40)/3 = 40 + 13.3 = 約53 mmHg → 目標65未満
🎯 MAP目標値|ガイドライン別
📘 敗血症性ショック|SSCG 2021
MAP ≥ 65 mmHgを初期蘇生の目標(弱い推奨・中等度の質)
📙 一般的なショック|ACCM
MAP ≥ 65 mmHgを維持、重症例や慢性高血圧患者では個別調整
📗 日本版敗血症診療ガイドライン2024(J-SSCG 2024)
初期目標MAP ≥ 65 mmHg、輸液反応性を評価しながら昇圧薬併用
💡 なぜ収縮期血圧(SBP)よりMAPなのか?
① 臓器灌流圧を直接反映
脳・腎・冠動脈などの灌流は拡張期血圧の影響が大きい。MAPは心周期全体を反映する
② 測定部位の影響が少ない
SBPは測定部位(上腕・動脈ライン・大腿)で変動するが、MAPはほぼ一定
③ 予後予測に優れる
MAP < 65が持続すると、急性腎障害(AKI)や多臓器不全のリスクが上昇
💡 現場で使える簡単チェック|CRT
CRT(Capillary Refill Time:毛細血管再充満時間):爪床を5秒圧迫して離し、色が戻るまでの時間。>2秒で末梢循環不全を疑う。血圧計がなくてもすぐチェック可能。
※ SSCG 2021でも乳酸値と並ぶ蘇生指標として推奨
🔍 ショックの5P|早期発見のコツ
ショックで共通して現れる5つの古典的所見を「5P」と呼びます。すべてPで始まる英単語で覚えやすく、血圧低下を待たずに早期発見できる手がかりです。
💧 1. Pallor(蒼白)
皮膚・粘膜・結膜の色が悪い。末梢血管収縮による血流低下が原因。
観察部位: 顔・口唇・結膜・爪床
❄️ 2. Perspiration(冷汗)
冷たくて湿った皮膚。交感神経刺激による発汗と末梢血管収縮の合わさった所見。
観察部位: 額・手掌・腋窩
🥶 3. Prostration(虚脱)
虚脱感・脱力・倦怠感。意識レベル低下(不穏→傾眠→昏睡)。脳灌流低下の表れ。
評価: JCS・GCS・反応の鈍さ
🫁 4. Pulmonary Insufficiency(呼吸不全)
頻呼吸(>24回/分)が特徴。代謝性アシドーシスの代償。後期にはSpO₂低下。
観察: 呼吸数・努力呼吸・SpO₂
💗 5. Pulselessness(脈拍微弱)
頻脈(>100)かつ微弱な脈。末梢(橈骨動脈)で触れにくい。
注意: 神経原性ショックは徐脈になる例外
💡 覚え方|全部Pで始まる
Pallor + Perspiration + Prostration + Pulmonary Insufficiency + Pulselessness
日本語で覚える場合:
青(蒼白)くて冷たく(冷汗)ぐったり(虚脱)してハァハァ(呼吸不全)脈が弱い(脈拍微弱)
📊 モニター・検査値で見るショック
📉 血圧
SBP<90 or 平時より-40
MAP<65
⚡ 心拍数
頻脈(>100)が多い
※神経原性は徐脈
🫁 呼吸数
頻呼吸(>24)
代償反応
💧 SpO₂
低下 or 末梢循環不良で
測定不能
🫘 尿量
<0.5 mL/kg/hr
腎灌流低下
🧪 乳酸値
≥2 mmol/L
嫌気性代謝
📊 ICUにおけるショックの頻度
1,600例の未分類ショック患者の分析(Vincent JL et al. NEJM 2014)によると:
敗血症性ショック(分布異常性): 約62%
心原性ショック: 約16%
循環血液量減少性ショック: 約16%
その他の分布異常性(神経原性・アナフィラキシー): 約4%
閉塞性ショック: 約2%
💡 セッティング差: 救急外来(ED)では循環血液量減少性が最多(約30%)、CICU(心臓集中治療室)では心原性が大半(約66%)を占めるなど、配属部署により頻度は大きく異なります。
📚 参考ガイドライン
本記事は以下の国際・国内ガイドラインに基づいて執筆しています。
📘 SSCG 2021 (Surviving Sepsis Campaign Guidelines 2021)
敗血症・敗血症性ショックの国際ガイドライン
📗 J-SSCG 2024 (日本版敗血症診療ガイドライン2024)
日本集中治療医学会・日本救急医学会
📙 ACCM Guidelines (American College of Critical Care Medicine)
重症ショック患者の循環管理
📕 AHA CPR/ECC Guidelines 2025
心停止対応・ROSC後管理
📔 JRC蘇生ガイドライン2020
日本蘇生協議会
📓 日本アナフィラキシー学会 ガイドライン2022
アナフィラキシー診療
📒 ATLS 10th Edition (Advanced Trauma Life Support)
出血性ショック・外傷初期評価
🩸 ① 循環血液量減少性ショック(Hypovolemic Shock)
🩸 Hypovolemic Shock
血管内容量の減少|入れ物はあるが中身が足りない
🔍 主な原因
🩸 出血性
外傷・消化管出血・破裂
💧 非出血性
脱水・嘔吐・下痢・熱傷
📊 出血性ショックの重症度|ATLS分類
Class出血量心拍血圧意識
I<15%<100正常軽度不安
II15-30%100-120正常〜↓不安
III30-40%120-140低下混乱
IV>40%>140著明低下傾眠〜昏睡
※ Class I-IIは代償性、Class IIIから血圧低下が明確化
👩‍⚕️ 初期対応
出血源の特定と止血(圧迫・ターニケット)
静脈路確保(太い末梢ライン2本 or 中心静脈)
輸液:晶質液(生理食塩水・乳酸リンゲル)
輸血:出血性はRBC・FFP・PC(1:1:1)
保温(低体温=凝固障害)
💡 看護師のポイント
☑ 出血量の過小評価注意(見えない出血:腹腔内・後腹膜)
ショックインデックス(SI)=心拍÷SBPで推定(≥1は要注意)
☑ 死の三徴(低体温・アシドーシス・凝固障害)を避ける
💗 ② 心原性ショック(Cardiogenic Shock)
💗 Cardiogenic Shock
ポンプ機能の破綻|心臓が血を送れない
🔍 主な原因
🫀 急性心筋梗塞(AMI)
最多・広範囲心筋虚血
💔 重症心不全
急性非代償・うっ血性
⚡ 致死性不整脈
VT・VF・完全房室ブロック
🔧 機械的合併症
心室破裂・弁膜症
📊 特徴的な症状
うっ血所見(Coarse crackle, wheezes・頸静脈怒張・浮腫)
チアノーゼ・末梢冷感
胸痛(AMIの場合)
☑ 心電図異常(ST変化・不整脈)
☑ 心エコーで壁運動低下
👩‍⚕️ 初期対応
酸素投与(SpO₂≥94%)
ABC評価・12誘導心電図
輸液は慎重に(肺水腫悪化に注意)
強心薬:ドブタミン・ミルリノン
昇圧薬:ノルアドレナリン(低血圧時)
AMIなら緊急PCI(再灌流療法)
☑ 重症例:IABP・ECMO(補助循環)
💡 看護師のポイント
☑ 循環血液量減少性と違い大量輸液は害となる場合も(肺うっ血悪化)
起座呼吸を楽にする体位(ファウラー位)
☑ (必要時)心カテ・PCI準備を並行
🚫 ③ 閉塞性ショック(Obstructive Shock)
🚫 Obstructive Shock
血流の物理的閉塞|心臓は元気でも血が流れない
🔍 主な原因|3大閉塞性
🫁 肺血栓塞栓症(massive PE)
右心系の急性後負荷↑・右心不全
💨 緊張性気胸
胸腔内圧↑・静脈還流↓・縦隔偏位
💧 心タンポナーデ
心膜液貯留・拡張障害
📊 特徴的な症状
頸静脈怒張(3つとも共通)
☑ 呼吸困難・胸痛
☑ 緊張性気胸:患側の呼吸音消失・気管偏位
☑ タンポナーデ:ベック3徴(血圧低下・心音減弱・頸静脈怒張)
☑ 肺塞栓:SpO₂低下・心電図S1Q3T3
👩‍⚕️ 初期対応|原因除去が最優先!
肺塞栓 → 血栓溶解療法(tPA)・カテーテル治療・抗凝固
緊張性気胸緊急胸腔ドレーン or 針穿刺(第2肋間鎖骨中線)
心タンポナーデ心膜穿刺で排液
☑ 輸液・昇圧薬は補助的(原因除去まで)
💡 看護師のポイント
薬だけでは治らない|物理的原因除去が必須
☑ 緊張性気胸は「診断即治療」|検査より先に脱気
☑ ドレーン・穿刺物品を迅速準備
🦠 ④ 分布異常性ショック(Distributive Shock)|最多
院内ショックで最も多いタイプ。血管拡張と透過性亢進により、血液が血管外に漏れ出す・血管内に留まれない状態。代表が敗血症性ショックアナフィラキシーショック
🦠 敗血症性ショック(Septic Shock)
感染に対する宿主反応の制御不全・最多のショック
📖 Sepsis-3定義(2016)
敗血症: 感染に対する制御不全な宿主反応による、生命を脅かす臓器障害
敗血症性ショック: 十分な輸液を行ってもMAP ≥ 65維持に昇圧薬必要、かつ乳酸 > 2 mmol/L
🎯 qSOFA(迅速SOFA)|簡易スクリーニング
意識変容(GCS<15)
呼吸数 ≥ 22/分
収縮期血圧 ≤ 100 mmHg
2項目以上で敗血症疑い・臓器障害の可能性を評価
⏰ 1時間バンドル(SSCG 2021/J-SSCG 2024)
敗血症認識後1時間以内に実施すべき5項目
① 乳酸値測定(>2なら再測定)
② 血液培養(抗菌薬投与前)
③ 広域抗菌薬投与(1時間以内)
④ 晶質液30 mL/kg急速投与(低血圧 or 乳酸≥4)
⑤ 昇圧薬(NAD)開始(輸液でもMAP<65)
💡 看護師のポイント
Warm shock初期は四肢温かい(血管拡張)
Cold shock後期は末梢冷感・皮膚湿潤
☑ 血培は抗菌薬投与前に2セット(好気・嫌気)
☑ 時間との闘い・1時間バンドル意識
💥 アナフィラキシーショック
IgE介在性・数分で進行する緊急事態
🔍 主な原因(日本アナフィラキシー学会2022)
薬剤(抗菌薬・造影剤・NSAIDs)|院内最多
食物(ピーナッツ・小麦・甲殻類)
ハチ毒
☑ ラテックス
📊 4徴候(複数臓器を巻き込む)
皮膚・粘膜:蕁麻疹・紅潮・血管浮腫
呼吸器:吸気性喘鳴は要注意・嗄声・喉頭浮腫
循環:血圧低下・頻脈
消化器:腹痛・嘔吐・下痢
💉 第一選択はアドレナリンIM!
アドレナリン 0.3-0.5 mg IM
(成人量・大腿外側・筋注)
→ 効果不十分なら5〜15分後に反復
☑ 原因薬剤・アレルゲン除去
☑ ABC評価・酸素投与
☑ 仰臥位・下肢挙上(呼吸困難時は起座位)
☑ 輸液(晶質液 1-2L急速)
☑ 補助:H1/H2抗ヒスタミン薬・ステロイド
☑ 気道浮腫なら早期気管挿管検討
💡 看護師のポイント
アドレナリンはIV ではなくIM(IVは心停止時)
二相性反応:数時間後に再発する可能性|観察継続
☑ 既往・アレルギー歴の確認
☑ エピペン使用歴の確認
🧠 ⑤ 神経原性ショック(Neurogenic Shock)
🧠 Neurogenic Shock
交感神経遮断|血管拡張+徐脈の例外的ショック
🔍 主な原因
🦴 頸髄・高位胸髄損傷
T6以上・交感神経路の遮断
🧠 脳幹障害
延髄・橋の障害
💉 硬膜外・脊髄麻酔
高位麻酔の合併症
📊 特徴的な症状|他のショックと違う点
血圧低下 + 徐脈(ショックの例外!普通は頻脈)
皮膚温暖・乾燥(末梢血管拡張)
☑ 脊損による麻痺・感覚障害
☑ 体温調節障害(冷環境で低体温)
⚠️ Spinal Shock(脊髄ショック)との混同注意
神経原性ショック(Neurogenic Shock):循環系の異常・昇圧薬が必要
脊髄ショック(Spinal Shock):脊髄損傷直後の全反射消失・循環異常を必ずしも伴わない
👩‍⚕️ 初期対応
輸液(晶質液・目標MAP ≥ 65〜85)
ノルアドレナリン(α+β刺激で効果的)
徐脈が強い場合:アトロピン
☑ 保温・体温管理
☑ 頸椎固定・脊損の原因治療
💡 看護師のポイント
頻脈がない=ショックではない、は誤り|血圧+皮膚温暖に注意
☑ 外傷患者の頸髄損傷を見落とさない
☑ 体位変換時の起立性低血圧に注意
📊 5分類 徹底比較表|一目でわかる
5つのショックの特徴を9項目で横断比較しました。鑑別のポイントが一目でわかります。
項目①循環血液量減少②心原性③閉塞性④分布異常性⑤神経原性
病態循環血液量↓ポンプ機能↓血流の物理的閉塞血管拡張・透過性↑交感神経遮断
代表疾患外傷・出血
脱水・熱傷
AMI・心不全
致死性不整脈
肺塞栓・気胸
心タンポナーデ
敗血症
アナフィラキシー
頸髄・高位胸髄損傷
脳幹障害
皮膚冷・湿潤・蒼白冷・湿潤・チアノーゼ冷・湿潤初期温暖→冷温暖・乾燥
心拍↑↑(頻脈)↑ or 不整↑(頻脈)↑(頻脈)↓(徐脈!)
頸静脈虚脱怒張怒張正常〜虚脱虚脱
CRT延長(>2秒)延長(>2秒)延長初期は正常正常
輸液反応良好悪い(肺うっ血)限定的初期良好
(30mL/kg)
良好
初期対応輸液・輸血・止血強心薬+
再灌流(PCI)
原因除去(穿刺・血栓溶解)輸液+
NAD/AD(IM)
輸液+NAD
(徐脈ならアトロピン)
昇圧薬原則不要
(輸液優先)
ドブタミン
+NAD
補助的
(NAD)
NAD第一選択
(ア:AD IM)
NAD
ICU頻度約16%約16%約2%約66%(最多)4%に含まれる
※ ICU全体でのショック頻度(Vincent JL et al. N Engl J Med. 2014;370:583、1,600例研究)
※ 分布異常性66%=敗血症性62%+その他分布異常性(神経原性・アナフィラキシー等)4%
※ ED(救急外来)やCICU(心臓集中治療室)ではセッティングにより頻度が大きく異なります
💡 ここだけ覚えれば識別できる|鑑別の3大ポイント
🔴 皮膚が温かい・乾燥
④分布異常性(初期) or ⑤神経原性
他のショックは皮膚が冷たく湿潤。この2つだけ例外
🟡 徐脈を伴う
⑤神経原性ほぼ一択
他のショックは全て頻脈。徐脈があれば脊損を疑う
🔵 頸静脈怒張あり
②心原性 or ③閉塞性
右心系への戻り or 心臓のポンプ機能の問題
🟢 頸静脈虚脱+出血・脱水歴
①循環血液量減少性の可能性大
血管内ボリューム不足のサイン
🔍 POCUSで鑑別精度UP
可能ならPOCUS(Point-of-Care Ultrasound)で迅速鑑別:
IVC径:虚脱→循環血液量減少、拡張→心原性/閉塞性
左室壁運動:低下→心原性
右室拡大:肺塞栓の示唆
心嚢液:タンポナーデ
Bライン:肺うっ血(心原性) vs 乾いた肺(循環血液量減少)
🎯 ショックの初期対応|ABCDEアプローチに連動
ショックを疑った時の初期対応はABCDEアプローチが基本。同時並行でモニタリング・輸液・原因検索を進めます。
A
Airway(気道)
気道開通の確認・異物・分泌物・喉頭浮腫の評価
アナフィラキシー時は早期気管挿管を検討
B
Breathing(呼吸)
酸素投与(目標SpO₂≥94%)・呼吸数・努力呼吸評価
緊張性気胸肺塞栓を除外
C
Circulation(循環)
末梢静脈路2本・輸液・血圧・脈・CRT・出血源評価
乳酸値・血培提出・12誘導心電図
D
Disability(意識・神経)
GCS・JCS・瞳孔・麻痺評価
血糖測定・脊髄損傷評価(頸椎固定)
E
Exposure(全身露出・原因検索)
全身観察・皮疹・外傷・出血点・体温管理
POCUS(FAST・心エコー)で鑑別
⚡ 並行して進める5項目
応援要請(ドクターコール・RRS起動)
モニタリング(SpO₂・心電図・血圧・尿量)
静脈路確保(太い末梢静脈路2本)
採血(血ガス・乳酸・血培・電解質・凝固)
輸液(晶質液を分類に応じて)
🔍 ショック鑑別の3ステップ
Step 1: 皮膚を診る
冷たい・湿潤 → 循環血液量減少/心原性/閉塞性/後期の分布異常性
温かい・乾燥 → 初期の分布異常性 or 神経原性
Step 2: 頸静脈を診る
怒張 → 心原性 or 閉塞性
虚脱 → 循環血液量減少 or 分布異常性 or 神経原性
Step 3: 心拍数を診る
頻脈 → ほぼ全てのショック
徐脈 → 神経原性ショック(脊損疑い)
💉 昇圧薬・強心薬の使い分け
ショック治療では、原因に応じた昇圧薬(血圧上げる)強心薬(心臓の力を強くする)を使い分けます。受容体特性を理解することがポイント。
💧 ノルアドレナリン(NAD)
α1中心・昇圧の第一選択
受容体: α1 >> β1 (β2ほぼなし)
作用: 血管収縮・血圧↑
用量: 0.05〜0.5 μg/kg/分
第一選択: 敗血症性・神経原性
投与: 持続静注(CV推奨)
🩸 アドレナリン(AD)
α+β両方刺激・万能型
受容体: α1 + β1 + β2
作用: 血管収縮+心機能↑+気管支拡張
用量: 0.01〜0.5 μg/kg/分
第一選択: 心停止・アナフィラキシー
投与: 心停止IV/IO、アナフィラキシーIM
💜 ドパミン
用量依存性の3段階
低用量(1-3): 腎血管拡張(D1)
中用量(5-10): β1(心収縮力↑)
高用量(10-20): α1(血管収縮)
位置づけ: SSCG 2021で非推奨
注意: 頻脈性不整脈を誘発しやすい
💚 ドブタミン
β1中心・心機能↑ 強心薬
受容体: β1 >> β2 >> α1
作用: 心収縮力↑・軽い血管拡張
用量: 2〜20 μg/kg/分
第一選択: 心原性ショック
注意: 血圧低下ならNADと併用
🎯 ショック別|昇圧薬の選択
🩸 循環血液量減少性:
原則輸液・輸血で対応。持続低血圧ならNAD併用
💗 心原性:
ドブタミン(心機能↑) + 血圧低値ならNAD併用。PCI・IABP考慮
🚫 閉塞性:
昇圧薬は補助的原因除去(穿刺・血栓溶解)が最優先
🦠 敗血症性ショック:
NAD第一選択(SSCG 2021)。難治性ならバソプレシン追加。MAP≥65目標
💥 アナフィラキシー:
アドレナリン0.3mg IM(大腿外側)が絶対第一選択。IV使用は心停止時のみ
🧠 神経原性:
NAD+輸液。徐脈が強い場合アトロピン。目標MAP≥85も(脊損時)
👩‍⚕️ ショック発見時|看護師の動き方6ステップ
ショックを疑ったら、動き方の「型」を持っていると迷いません。看護師として動くべき6ステップを整理しました。
1
STEP 1
🚨 応援要請
ナースコール・ドクターコール・RRS起動・「誰か来て!」
2
STEP 2
📊 ABCDE評価+モニタリング
意識・呼吸・脈・血圧・SpO₂・CRT・皮膚・尿量
3
STEP 3
💉 静脈路確保+採血
太い末梢路2本・血ガス・乳酸・血培・電解質
4
STEP 4
💧 輸液・酸素投与
晶質液急速(敗血症は30mL/kg)・酸素(SpO₂≥94%)
5
STEP 5
🔍 原因検索と医師への報告
既往・発症状況・症状をISBAR形式で報告・POCUS準備
6
STEP 6
📝 継続モニタリング+記録
バイタル・尿量・介入・反応を時系列で記録
📣 鉄則|「迷ったら呼ぶ」
ショックは時間との闘い。新人看護師ほど「自分の判断に自信がない」と抱え込まず、早めに応援を呼ぶ。代償性ショックの段階で介入できれば、予後は大きく変わります。
❓ よくある質問(FAQ)
Q1. ショックと血圧低下は同じですか?
違います。ショックは「組織への酸素供給不足による細胞障害」であり、血圧低下はショックの後期サイン。初期の代償性ショックでは血圧は保たれており、頻脈・頻呼吸・末梢冷感・CRT延長が先に現れます。血圧低下を待たずに気づくことが重要です。
Q2. 平均血圧(MAP)はなぜ大切ですか?
臓器灌流を直接反映するからです。脳・腎・冠動脈などの灌流は拡張期血圧の影響が大きく、収縮期血圧(SBP)だけでは不十分。SSCG 2021ではショックの蘇生目標をMAP ≥ 65 mmHgとしています。計算式は MAP = DBP + 脈圧/3
Q3. アナフィラキシーでアドレナリンはIVではダメですか?
原則IM(筋注)です。アナフィラキシーではアドレナリン0.3mg を大腿外側に筋注が第一選択(日本アナフィラキシー学会2022)。IV投与は致死性不整脈のリスクがあり、原則心停止時のみ。筋注は5〜15分で反復可能です。
Q4. 敗血症性ショックの「1時間バンドル」とは?
SSCG 2021・J-SSCG 2024で推奨される敗血症認識後1時間以内に実施すべき5項目です。①乳酸値測定、②血液培養(抗菌薬前)、③広域抗菌薬投与、④晶質液30 mL/kg(低血圧・乳酸≥4時)、⑤NAD開始(MAP<65持続時)。時間との闘いで予後が決まります。
Q5. 神経原性ショックで徐脈になるのはなぜ?
交感神経の遮断によるものです。頸髄・高位胸髄(T6以上)損傷で交感神経路が断たれると、血管拡張で血圧が下がるのに代償性の頻脈が起きないため、むしろ迷走神経優位で徐脈になります。他のショックが頻脈なのと対照的で、鑑別の重要ポイントです。
Q6. ショックの中で最も多いのは何ですか?
分布異常性ショック(特に敗血症性)が最多です。Vincent JL et al. (NEJM 2014)の1,600例研究では、敗血症性が約62%、心原性16%、循環血液量減少性16%、その他分布異常性(神経原性・アナフィラキシー)4%、閉塞性2%。ただし救急外来(ED)では循環血液量減少性が最多になるなど、セッティングで頻度が変わります。
Q7. 新人看護師がショックを発見したら、まず何をすれば?
「応援要請 → ABCDE評価 → 静脈路確保」の3ステップを同時並行で。自分一人で抱え込まず、早めにドクターコール・RRS起動することが鉄則。代償性ショックの段階で介入できれば予後が大きく変わります。「迷ったら呼ぶ」が基本です。
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📝 執筆・監修
万波 大悟
MANAMI DAIGO
急変対応.net 代表
🎓 経歴・資格
👨‍⚕️ 現職
診療看護師(NP)
🏥 専門資格
元 救急看護認定看護師
🏆 インストラクター
AHA-ACLSファカルティ
(提携ITC: JSISH-ITC)
📚 学会活動
救急看護学会 評議員
📌 本記事はSSCG 2021、J-SSCG 2024、AHA CPR/ECCガイドライン2025、日本アナフィラキシー学会ガイドライン2022に準拠して執筆しています。臨床判断にあたっては各施設のプロトコルに従ってください。

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