ACLS 臨床看護

【2026年版】EtCO2モニターの使い方・付け方・位置|食道挿管の回避|看護師のCO2チェッカー完全ガイド

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📝 監修・執筆
万波 大悟(まなみ だいご)
診療看護師(NP)/AHA-ACLSファカルティ/元 救急看護認定看護師/日本救急看護学会 評議員
💨 30秒でわかる|EtCO2モニターの使い方
📍 モニターの位置気管チューブと呼吸回路の間(メインストリーム・サイドストリーム)
挿管後確認:連続した波形=気管挿管成功、波形なし=食道挿管の可能性
📊 正常値:35〜45mmHg(正常換気時)
🩺 CO2チェッカー(比色式):紫→黄色に変化で挿管成功(簡易確認)
⚠️ 食道挿管の兆候:波形なし・数値上がらない・色が変わらない
💓 CPR中の活用:10mmHg未満=CPR質不十分、急上昇=ROSC可能性
🫁 片肺挿管:チューブ深すぎの可能性、左右差で確認
はじめに

気管挿管をした時、「本当に気管に入ってる?」と不安になったことはありませんか?

EtCO2(呼気終末二酸化炭素)モニターは、その確認を確実にする最も信頼できるツールです。さらに胸骨圧迫の質の評価やROSC(自己心拍再開)の検出にも使えるため、急変対応では欠かせないモニターです。

一方、致命的な合併症である食道挿管は気づけないと命に関わり、訴訟に発展する可能性も高いため絶対に回避しなければなりません。実際に「食道挿管」でインシデント/事故事例を検索するとたくさんヒットします。

この記事では看護師向けに、EtCO2モニターの使い方・付け方・位置から、食道挿管の回避まで実例を交えて解説します。

💨 EtCO2モニターの4つの役割(画像解説)
EtCO2(End-Tidal CO2:呼気終末二酸化炭素)は呼気中の二酸化炭素分圧で、気管挿管をすることで連続的に測定可能となります。急変対応では以下の4つの重要な役割を持ちます。まずは画像で全体像をつかんでおきましょう。
EtCO2モニターの4つの役割と波形例|胸骨圧迫の質(≧10mmHg)・気管チューブ位置確認(0mmHgは食道挿管)・ROSC検出(>25mmHg上昇)・ROSC後の換気評価(35-45mmHg)|看護師向け急変対応
📊 EtCO2の4つの役割(CPR中〜ROSC後)
① 胸骨圧迫の質の管理(≧10mmHg)
10mmHg未満ならCPRの質が不十分のサイン。深さ・速度の見直しを。
② 気管チューブ位置確認(0mmHg=食道挿管)
波形が出ない・0mmHg持続は食道挿管の可能性大。即座に再挿管準備。
③ ROSCの検出(>25mmHg の上昇)
急激な上昇は自己心拍再開のサイン。脈拍確認のタイミング。
④ ROSC後の換気評価(35-45mmHg)
正常換気時の目標値。過換気(低値)も低換気(高値)も有害。
🔍 なぜEtCO2が循環の指標になるのか?
血中のCO2は血流に乗って肺に運ばれることで呼気から排出されるため、EtCO2が循環の指標となります。

二酸化炭素がたくさん呼気から排出されている = 循環が良い → CPR良好 or ROSC

気管チューブの正しい位置確認には、以下の方法があります。

☐ 視診による胸郭の挙上
☐ チューブ内側の曇り
☐ 聴診による呼吸音の確認(左右差・心窩部含む)

しかし、これらをすべて組み合わせても万全ではありません。そのためAHAおよびJRC蘇生ガイドラインはいずれも、呼気CO2モニター(ETCO2モニター:End-tidal CO2)の使用を推奨しています

📍 レントゲンでの確認について
挿管後はレントゲン撮影も行われますが、気管チューブの深さは確認できるものの、レントゲン上では食道と気管が重なるため、食道挿管の判別は困難です。レントゲンだけに頼らず、必ず他の確認方法と組み合わせてください。
ETCO2モニターとは

ETCO2モニターは、呼気に含まれるCO2を検出する装置です。気管チューブに装着し、心電図モニターと接続することで、CO2の数値がリアルタイムに表示されます。基準値は血中のCO2とほぼ同じで、35〜45mmHgが正常域です。

📊 ETCO2モニターの数値の読み方
・食道挿管の場合:食道にCO2は存在しないため、"0"を示します。
・気管に留置されている場合:数値が表示されます(連続した波形)。

ただし、ETCO2の値だけでは片肺挿管は判別できません。片肺挿管でも気管内にチューブは入っているため、数値は表示されます。そのためETCO2に加えて、左右の呼吸音・胸郭の挙上・チューブ内側の曇りなど複数の確認方法を組み合わせることが重要です。

💭 現場の看護師の声
「EtCO2の重要性は分かったけど、うちの病棟には無いから聴診で確認するしかない...」
「そもそも挿管するのは医師だから、自分には関係ないのかな?」

ETCO2モニター導入のハードルとして、専用ケーブルが高価であることが挙げられます。そのため手術室やICU、ERでは使われていても、一般病棟には配備されていない施設が多いのが現状です。

こうした事情から、私自身もこれまで強く推奨することは控えてきました。しかし急変時のエラーは複数の要因が重なって発生するもので、食道挿管を防ぐ有効な手段の一つがETCO2モニターであることは間違いありません。使える環境にあるなら、ぜひ活用してください。

急変時におけるETCO2の真価を考える

急変時(非心停止を含む)の気管挿管には、以下のような問題点があります。

☐ あらゆる処置が同時並行で進行する
☐ 心停止に移行する可能性がある
☐ 急変対応に不慣れな医療従事者が対応することもある
☐ COVID-19以降、急変現場の人員制限が続き、気管挿管の優先度も上がっている

このように普段とは違う環境や心理状態で挿管する場合、聴診や胸郭の挙上などの従来の確認方法は"人"に依存しており、確認が抜けるリスクや判断を誤る可能性があります。

挿管している間、看護師が一部始終を観察し続けることはできますか?途中で心停止(PEA)に移行する可能性も十分ありますし、患者の状態が悪ければ挿管後の評価としてSpO2は当てになりません。

一方、ETCO2モニターをルーチンで装着する体制があれば、術者だけでなく周囲のスタッフも異常に気づけます。手順に組み込めること、感度・特異度の高い情報が自動的に表示されること──これが急変時におけるETCO2モニターの真価です。

もう一度強調します。食道挿管は非常に致命的で、見逃せば過失認定されるリスクが高い合併症です。挿管する医師の責任だけにせず、看護師として患者の安全を守る立場から、ETCO2モニターの導入・活用を検討してください。

では、実際にどのような事例が起きているのか。「すべて確認したはずなのに食道挿管だった」という衝撃的な実例を見ていきましょう。

🚨 実例で学ぶ|確認したのに食道挿管
これは「通常の確認法だけでは食道挿管を見抜けない」ことを示した実例です。両側呼吸音・呼気戻り・SpO2改善など全ての確認をクリアしたのに食道挿管だったケース。EtCO2がなぜ絶対必要なのか、この事例から学びましょう。
🚨 事例:すべて確認OKだったのに食道挿管→心停止20分
報告年 2012 | 事例ID: AFF453E753821FADC
👤 患者情報
30歳代女性
・疾患:塩化カルシウム中毒(自殺企図)
・状態:意識障害・高度アシドーシス(pH 7.099)
・場所:ICU(救命救急科)・平日夜間(22時台)
⏱️ 事故の経緯(タイムライン)
11:59 塩化カルシウム服用で救急搬送、ICU入室
21:40 呼吸循環不全悪化、人工呼吸器管理方針
22:14 指導医監視下で2年目研修医が挿管(プロポフォール+エスラックス投与)
22:15 挿管後、全ての確認項目OK(両側呼吸音✅/呼気戻り✅/チューブ曇り✅/SpO2 90%台✅)
22:23 SpO2低下、用手換気続けるも改善せず
22:24 PEAで心停止、胸骨圧迫・アドレナリン開始
22:30 喉頭展開→食道挿管と判明・気管に再挿管(約12分の遅延)
22:46 心拍再開(心停止〜再開まで約20分、除細動4回+アンカロン)
🔍 発生要因
確認を怠った(EtCO2を単体で使っていなかった)
観察を怠った
・判断を誤った
・通常とは異なる身体的条件下(夜勤当直中)
🤔 なぜ全確認OKで食道挿管?
塩化カルシウム服用で胃・十二指腸の粘膜が浮腫し、胃の内腔が狭小化。そのため食道に挿管しても、胃から呼気が戻ってくるような現象が起き、さらに腹部の押し上げが両側肺の動きに見えた。通常の身体所見では完全に騙されてしまった状況。
⚠️ さらに:EtCO2モニターは人工呼吸器側にあり、呼吸器接続前にPEAになったため誤挿管に気付けなかった。
😔 結果
障害残存の可能性(高い)
心停止から再開まで約20分・脳虚血による高度の脳障害の可能性
脳低体温療法開始・PCPS開始・血液透析(持続)
💡 改善策(事故報告書より)
「気管挿管直後に、聴診や胸郭の挙上、呼気の戻りを確認するだけではなく、呼気終末二酸化炭酸ガス濃度モニター(EtCO2)を人工呼吸器に装着のものとは別に単体で使用し確認することを徹底し、正確に気管内に挿管していることを確認する。」
📣 この事例から学ぶ最重要教訓
🔥 身体所見だけでは食道挿管を見抜けないケースがある
🔥 胃粘膜の腫脹などで呼気が戻ってくるように見えることがある
🔥 SpO2改善は直後の判断材料にならない(Preoxygenation後は遅れて低下)
EtCO2は挿管直後から独立で確認すべき(人工呼吸器接続を待たない)
✅ 気管挿管介助で看護師はEtCO2を先に準備しておく
波形が出る=確実に気管、波形なし=食道の疑い
最後に

本記事ではEtCO2モニターと食道挿管に焦点を当てて解説しました。

近年はエコーによるチューブ位置確認の手法も報告されていますが、術者のスキルに依存する部分が大きく、まだ一般的とは言えないため今回は割愛しています。

食道挿管を回避する仕組みとして、上級医や専門スタッフをすぐ呼べる体制も重要です。しかし実際の臨床現場、特に夜間や休日の病棟では、それが難しい施設が多いのが現状です。

EtCO2モニターを全部署に配置するには、コストや使い方の教育など様々なハードルがあります。それでも「できることから始める」ことが、患者の安全を守る第一歩です。

📌 補足|心停止時のEtCO2モニターから分かること
☑ 気管チューブの位置確認
☑ CPRの質評価・蘇生中止の判断材料
☑ ROSC(自己心拍再開)の検出

気管挿管の介助については、以下の動画でも詳しく解説しています。あわせてご覧ください。

❓ よくある質問|EtCO2モニター
Q1. EtCO2モニターはどこにつける?
気管チューブと呼吸回路(BVMや人工呼吸器)の間に装着します。メインストリーム型は気道内に直接、サイドストリーム型は回路に接続したチューブから呼気を採取します。
Q2. EtCO2の正常値は?
正常換気時は35〜45mmHgです。CPR中は10mmHg以上あれば質の良いCPRとされ、25mmHg以上の急上昇はROSCの可能性を示します。
Q3. 食道挿管はEtCO2でどう見抜く?
波形が出ない・0mmHg持続が食道挿管の典型サインです。比色式CO2チェッカーなら色が変わりません。挿管後5〜6呼吸連続で確認します。
Q4. CO2チェッカー(比色式)とEtCO2モニターの違いは?
比色式は紫→黄色の変化で簡易確認(定性的)、EtCO2モニターは数値と波形で連続的に表示(定量的)です。急変時は両方あると理想的ですが、モニター優先です。
Q5. 片肺挿管はEtCO2でわかる?
EtCO2だけでは片肺挿管は分かりません。気管には入っているので波形は出ます。聴診による左右差の確認と胸郭挙上の観察を併用します。
Q6. 看護師はEtCO2のどこを見る?
波形の有無(食道挿管の否定)、②数値の推移(CPR質・ROSC検出)、③換気条件の妥当性(正常値35-45)、④急変の前兆(急激な変化)を観察します。
🎯 EtCO2の使いこなしを実践で学ぶ
EtCO2モニターの活用はシミュレーションで繰り返すことで身につきます。急変対応.netのコースでは、食道挿管の回避・CPRの質評価など、実践的な訓練を提供しています。
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