ACLS 急変対応マニュアル

【2026年版】気管挿管のタイミング完全ガイド|心停止(CPA)・全身麻酔・看護師のCCFと4STEP判断

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🫁 30秒でわかる|気管挿管のタイミング
🚨 心停止(CPA)時BVMで換気できているなら急がない(CCFを優先)
💉 全身麻酔時:薬剤投与後に十分な効果発現を待って、確実な視野で実施
📊 CCF(胸骨圧迫時間比):80%以上が理想、挿管で中断すると救命率DOWN
心停止の第1候補:BVM・声門上気道デバイス(i-gel等)で対応
🩺 挿管踏み切る条件:熟練者がいる+中断10秒以内でできる
ROSC後:呼吸管理が必要なら挿管を検討
やりがちNG:換気良好なのにルーチンで挿管→CCF低下のみ
📝 監修・執筆
万波 大悟(まなみ だいご)
診療看護師(NP)/AHA-ACLSファカルティ/元 救急看護認定看護師/日本救急看護学会 評議員

心停止時の気管挿管——救命の現場でこの判断に迷ったことがある方、多いのではないでしょうか?

二次救命処置の研修(ACLS/ICLS)ではBVMで換気ができていれば不要と指導しつつ、臨床では患者FULL CODEの場合、気管挿管に踏み切ることが多いような印象を受けます。NCLSでは臨床に即して気管挿管をするシナリオを多めにして介助に慣れるような仕組みにしています。

今回はシミュレーションでも悩む心停止中の気管挿管のタイミングを掘り下げます。

まずは心停止で重要になる概念であるCCFから確認です。

💡 CCF(Chest Compression Fraction)とは?

CCF(胸骨圧迫時間比)とは、「心肺蘇生中にどれだけの時間、胸骨圧迫が行われていたか」を示す指標で、
心拍再開(ROSC)との関連が極めて強いことが知られています。

  • CCFは80%以上が理想とされ、
  • これを下回るとROSC率・生存率が明確に低下するという研究も多くあります。

80%を達成するには...
10分間心停止の対応をしているとしたら8分間は胸骨圧迫に費やしてないといけない

気管挿管は中断時間が延びやすい代表的な処置のため、
「挿管を頑張ることでCCFを落としてしまう」=「救命のチャンスを自ら削る」ことにもなり得るのです。

🧠 気管挿管の位置づけ(JRCガイドライン2020より)

JRC蘇生ガイドライン2020では

「気管挿管は成功率が高い場合には考慮してもよい。ただし、胸骨圧迫中断時間が長引くと気管挿管は有害となるので、胸骨圧迫の中断時間は可能な限り短くするべきである。」
— JRC蘇生ガイドライン2020「成人の二次救命処置」より

CCFを下げないよう気管挿管できるなら"考慮"というニュアンスだね

挿管そのものが目的になるのではなく、蘇生の質が上がる場合には考慮すべきです。

低酸素血症やショックのような病態から心停止に陥った場合には胸骨圧迫だけでなく人工呼吸が重要になります。気管挿管することで確実な気道確保ができます。また気管挿管した場合胸骨圧迫と換気の比率が30:2から6秒に一回となります。気管挿管に伴う胸骨圧迫の中断が短かった場合にはCCFは恐らく上がります。

心停止中の気管挿管 タイミング判断チャート

✅ 判断のステップと根拠解説

STEP 1:BVMで十分な換気ができているか?

  • 換気の確認方法:胸郭の挙上、BVMのバッグの抵抗
  • できていれば、この段階で急いで挿管は不要。CCFを優先したほうがよい
  • できていない場合も二人法の換気やエアウェイを考慮

BVMで換気ができていれば急ぐ必要はない。
VF/pVTのときも同様で電気ショックとCCFを上げた方が良い!
心停止中のSpO2は信憑性がないので参考にはしないのも覚えておいてほしい。

STEP 2:i-gelなどの声門上気道デバイスで対応できるか?

  • JRCも「気管挿管成功率が低いなら声門上デバイスを推奨」

STEP 3:熟練者がいて、圧迫中断時間を最小限にできるか?

  • 中断時間を超えるなら「今はやらない」が正解

STEP 4:ROSCが得られた or 得られそうな状況か?

  • ROSC後は気道や呼吸が不安定ならば気管挿管考慮(気道確保と人工呼吸管理のため)
  • 状況が安定すればこのタイミングで安全に施行

タイミングが悪い挿管の例(やってはいけない)

タイミングの悪い例をまとめました。

臨床では慣れていないスタッフが行うと準備が不十分なまま気管挿管に踏み切る場面をよく見かける。物品からベッドの高さやポジショニングなど準備が整ってなければ成功しない。まずは換気の評価、そして踏み切るのであれば確実な準備を実施してから踏み切りたい。看護師であれば手が空いたタイミングで挿管の準備をしておこう。

状況なぜダメ?
BVMで換気良好だがルーチンで挿管意味がなく、CCFを下げるだけ
チームに熟練者がいない食道挿管リスク+処置時間の増大によるCCF低下
挿管中に胸骨圧迫が止まりがち挿管による一時停止が蘇生の質を低下
処置優先で声かけ・連携が不足誤解・リスク・事故につながりやすい

まとめ:挿管は「換気確保+中断最小+熟練者」がそろったときに

💉 【補足】全身麻酔での気管挿管タイミング
心停止と並んで気管挿管で迷うのが全身麻酔の導入時です。心停止とは異なる原則で動くため、違いを整理しておきましょう。
✅ 全身麻酔での挿管タイミング
1. 麻酔導入:鎮静薬(プロポフォール等)を投与し意識消失を確認
2. マスク換気の確認:BVMで換気できることを確認
3. 筋弛緩薬投与:ロクロニウム、サクシニルコリンなど
4. 十分な効果発現を待つ(30〜60秒程度)
5. 挿管実施:確実な視野・ポジショニングの上で
⚠️ 全身麻酔×挿管で看護師が特に注意すべきこと
・筋弛緩薬の効果発現を焦って急がない(TOFモニタリングなどで確認)
輪状軟骨圧迫の要否を事前に医師と確認
・挿管後はEtCO2の波形を必ず確認(食道挿管の回避)
・フルストマック症例ではRSI(迅速導入)の段取りを理解
項目心停止(CPA)中の挿管全身麻酔導入時の挿管
優先度低(CCF優先)高(必須手技)
タイミングBVM不可・熟練者◎の時薬剤効果発現後(計画的)
薬剤基本的に不使用鎮静薬+筋弛緩薬
時間制約中断10秒以内比較的余裕あり
最重要指標CCF維持気道確保の確実性
共通点✅ EtCO2で位置確認/✅ 熟練者による実施/✅ チーム連携

気管挿管は確実な気道確保手段ですが、使いどころを間違えると救命率を下げるリスクもある行為です。

🔑 ポイントは:

  • BVMやi-gelで足りているなら無理に挿管しない
  • 挿管は熟練者が短時間で実施できるときのみ
  • CCF(胸骨圧迫時間比)を常に意識し、挿管による中断を10秒以内に
❓ よくある質問|気管挿管のタイミング
Q1. 心停止(CPA)時、すぐ挿管したほうがいい?
BVMで十分換気できていれば急ぎません。CCF(胸骨圧迫時間比)を下げないことが救命率に直結するため、挿管で中断するよりBVM・i-gel等で対応するほうが良いケースが多いです。
Q2. CCFって何ですか?
Chest Compression Fractionの略で、蘇生時間のうち胸骨圧迫をしていた割合です。80%以上がROSC率と相関するとされます。挿管で10%以上落ちると救命率が低下します。
Q3. 全身麻酔での挿管タイミングは?
①鎮静薬で意識消失確認、②マスク換気確認、③筋弛緩薬投与、④効果発現を待つ(30〜60秒)、⑤挿管実施、の順です。心停止時とは違い計画的に行います。
Q4. 挿管するタイミングはいつ?(心停止中)
①BVMで換気困難、②声門上気道でも対応不十分、③熟練者が10秒以内で中断できる、④ROSC得られた/得られそう──これらのうち該当する場合に検討します。
Q5. i-gel等の声門上気道デバイスでもいい?
はい。JRCも挿管成功率が低い場合は声門上デバイスを推奨しています。挿入が早く中断時間が短いのがメリットです。
Q6. 挿管中に看護師が気をつけることは?
①物品の事前準備、②ポジショニング・ベッドの高さ調整、③EtCO2の確認、④挿管時間の記録、⑤ROSC後の呼吸管理準備。事前準備が成功の8割です。
Q7. 挿管後の看護で重要なことは?
①チューブ位置の確認(EtCO2・胸郭挙上・聴診)、②固定の確認、③抜管予防、④換気条件の適切な設定支援、⑤鎮静レベルの評価と記録。
Q8. 食道挿管を見抜くには?
EtCO2(呼気終末二酸化炭素)の波形確認が最も確実です。気管挿管なら連続した波形、食道挿管なら波形なしor乏しいです。

📚 出典・参考文献:

  1. 日本蘇生協議会 (JRC). JRC蘇生ガイドライン2020「成人の二次救命処置」
    https://www.japanresuscitationcouncil.org/
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挿管のタイミング判断はシミュレーションで繰り返すことでしか身につきません。急変対応.netのコースでは、CCFを意識した実践的な訓練を提供しています。
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