📋 この記事の結論(30秒でわかる)
💓 ショック=組織への酸素供給不足による細胞障害
⚠️ 血圧低下=ショックではない!初期は血圧が保たれる(代償性ショック)
🔍 ショックの5P: Pallor(蒼白)・Perspiration(冷汗)・Prostration(虚脱)・Pulmonary Insufficiency(呼吸不全)・Pulselessness(脈拍微弱)
🗂️ 5つに分類: ①循環血液量減少性 ②心原性 ③閉塞性 ④分布異常性 ⑤神経原性
🎯 目標: 平均血圧(MAP) ≥ 65 mmHg(SSCG 2021推奨)
💉 昇圧薬: 第一選択はノルアドレナリン、アナフィラキシーはアドレナリンIM
⏰ 敗血症性ショックは1時間バンドル、早期介入が予後を左右
🎯 この記事でわかること
☑ 「血圧低下=ショック」ではない理由(代償性ショック)
☑ ショックの5Pと平均血圧(MAP)の理解
☑ 5分類それぞれの原因・症状・初期対応
☑ 昇圧薬の使い分け・看護師の動き方6ステップ
📉 血圧 80/40...!?
脈が速い、顔色が悪い、意識もおかしい...
これはショックかもしれない。
でも、どのショック?原因は?何から手をつける?
でも、どのショック?原因は?何から手をつける?
✅ この記事のゴール
血圧低下や「なんか変」を見たときに、どのショックか見当をつけ、初期対応が迷わず動けるようになる。
💓 ショックとは?|定義と病態
ショックは、「全身の組織・臓器に十分な酸素が届かず、細胞レベルで障害が起きている状態」です。単なる「血圧が低い状態」ではありません。
⚠️ 「血圧低下=ショック」ではない|代償性ショックを見逃すな
臨床でよくある大きな誤解が「血圧が下がっていないからショックではない」という判断。実は血圧低下はショックの"後期サイン"。初期には血圧が保たれている代償性ショックの段階があります。
📊 ショックの進行3段階
🧬 なぜ初期は血圧が保たれるのか?|代償機構
ショックの初期には、体が生命維持のための代償機構を働かせます:
① 交感神経活性化: 頻脈・血管収縮で血圧維持
② RAA系活性化: Na・水の再吸収で循環血液量維持
③ 血流再分配: 脳・心臓を優先、末梢(皮膚・筋肉)を犠牲に
⚠️ 重要: 健常成人では、循環血液量が30%以上減少して初めて血圧低下が現れます。それまでに頻脈・末梢冷感・意識変容などが先行。「血圧が下がってから対応」では手遅れになることも。
📊 平均血圧(MAP)|ショック管理の最重要指標
ショックの評価・管理では、収縮期血圧(SBP)よりも平均血圧(MAP)が重要視されます。なぜなら、臓器灌流を決めるのは平均血圧だからです。
💡 なぜ収縮期血圧(SBP)よりMAPなのか?
① 臓器灌流圧を直接反映
脳・腎・冠動脈などの灌流は拡張期血圧の影響が大きい。MAPは心周期全体を反映する
脳・腎・冠動脈などの灌流は拡張期血圧の影響が大きい。MAPは心周期全体を反映する
② 測定部位の影響が少ない
SBPは測定部位(上腕・動脈ライン・大腿)で変動するが、MAPはほぼ一定
SBPは測定部位(上腕・動脈ライン・大腿)で変動するが、MAPはほぼ一定
③ 予後予測に優れる
MAP < 65が持続すると、急性腎障害(AKI)や多臓器不全のリスクが上昇
MAP < 65が持続すると、急性腎障害(AKI)や多臓器不全のリスクが上昇
💡 現場で使える簡単チェック|CRT
CRT(Capillary Refill Time:毛細血管再充満時間):爪床を5秒圧迫して離し、色が戻るまでの時間。>2秒で末梢循環不全を疑う。血圧計がなくてもすぐチェック可能。
※ SSCG 2021でも乳酸値と並ぶ蘇生指標として推奨
※ SSCG 2021でも乳酸値と並ぶ蘇生指標として推奨
🔍 ショックの5P|早期発見のコツ
ショックで共通して現れる5つの古典的所見を「5P」と呼びます。すべてPで始まる英単語で覚えやすく、血圧低下を待たずに早期発見できる手がかりです。
💡 覚え方|全部Pで始まる
Pallor + Perspiration + Prostration + Pulmonary Insufficiency + Pulselessness
日本語で覚える場合:
「青(蒼白)くて冷たく(冷汗)、ぐったり(虚脱)してハァハァ(呼吸不全)、脈が弱い(脈拍微弱)」
「青(蒼白)くて冷たく(冷汗)、ぐったり(虚脱)してハァハァ(呼吸不全)、脈が弱い(脈拍微弱)」
📊 モニター・検査値で見るショック
📉 血圧
SBP<90 or 平時より-40
MAP<65
MAP<65
⚡ 心拍数
頻脈(>100)が多い
※神経原性は徐脈
※神経原性は徐脈
🫁 呼吸数
頻呼吸(>24)
代償反応
代償反応
💧 SpO₂
低下 or 末梢循環不良で
測定不能
測定不能
🫘 尿量
<0.5 mL/kg/hr
腎灌流低下
腎灌流低下
🧪 乳酸値
≥2 mmol/L
嫌気性代謝
嫌気性代謝
📊 ICUにおけるショックの頻度
1,600例の未分類ショック患者の分析(Vincent JL et al. NEJM 2014)によると:
☑ 敗血症性ショック(分布異常性): 約62%
☑ 心原性ショック: 約16%
☑ 循環血液量減少性ショック: 約16%
☑ その他の分布異常性(神経原性・アナフィラキシー): 約4%
☑ 閉塞性ショック: 約2%
☑ 心原性ショック: 約16%
☑ 循環血液量減少性ショック: 約16%
☑ その他の分布異常性(神経原性・アナフィラキシー): 約4%
☑ 閉塞性ショック: 約2%
💡 セッティング差: 救急外来(ED)では循環血液量減少性が最多(約30%)、CICU(心臓集中治療室)では心原性が大半(約66%)を占めるなど、配属部署により頻度は大きく異なります。
📚 参考ガイドライン
本記事は以下の国際・国内ガイドラインに基づいて執筆しています。
📘 SSCG 2021 (Surviving Sepsis Campaign Guidelines 2021)
敗血症・敗血症性ショックの国際ガイドライン
敗血症・敗血症性ショックの国際ガイドライン
📗 J-SSCG 2024 (日本版敗血症診療ガイドライン2024)
日本集中治療医学会・日本救急医学会
日本集中治療医学会・日本救急医学会
📙 ACCM Guidelines (American College of Critical Care Medicine)
重症ショック患者の循環管理
重症ショック患者の循環管理
📕 AHA CPR/ECC Guidelines 2025
心停止対応・ROSC後管理
心停止対応・ROSC後管理
📔 JRC蘇生ガイドライン2020
日本蘇生協議会
日本蘇生協議会
📓 日本アナフィラキシー学会 ガイドライン2022
アナフィラキシー診療
アナフィラキシー診療
📒 ATLS 10th Edition (Advanced Trauma Life Support)
出血性ショック・外傷初期評価
出血性ショック・外傷初期評価
🩸 ① 循環血液量減少性ショック(Hypovolemic Shock)
💗 ② 心原性ショック(Cardiogenic Shock)
🚫 ③ 閉塞性ショック(Obstructive Shock)
🦠 ④ 分布異常性ショック(Distributive Shock)|最多
院内ショックで最も多いタイプ。血管拡張と透過性亢進により、血液が血管外に漏れ出す・血管内に留まれない状態。代表が敗血症性ショックとアナフィラキシーショック。
🧠 ⑤ 神経原性ショック(Neurogenic Shock)
📊 5分類 徹底比較表|一目でわかる
5つのショックの特徴を9項目で横断比較しました。鑑別のポイントが一目でわかります。
| 項目 | ①循環血液量減少 | ②心原性 | ③閉塞性 | ④分布異常性 | ⑤神経原性 |
|---|---|---|---|---|---|
| 病態 | 循環血液量↓ | ポンプ機能↓ | 血流の物理的閉塞 | 血管拡張・透過性↑ | 交感神経遮断 |
| 代表疾患 | 外傷・出血 脱水・熱傷 | AMI・心不全 致死性不整脈 | 肺塞栓・気胸 心タンポナーデ | 敗血症 アナフィラキシー | 頸髄・高位胸髄損傷 脳幹障害 |
| 皮膚 | 冷・湿潤・蒼白 | 冷・湿潤・チアノーゼ | 冷・湿潤 | 初期温暖→冷 | 温暖・乾燥 |
| 心拍 | ↑↑(頻脈) | ↑ or 不整 | ↑(頻脈) | ↑(頻脈) | ↓(徐脈!) |
| 頸静脈 | 虚脱 | 怒張 | 怒張 | 正常〜虚脱 | 虚脱 |
| CRT | 延長(>2秒) | 延長(>2秒) | 延長 | 初期は正常 | 正常 |
| 輸液反応 | 良好 | 悪い(肺うっ血) | 限定的 | 初期良好 (30mL/kg) | 良好 |
| 初期対応 | 輸液・輸血・止血 | 強心薬+ 再灌流(PCI) | 原因除去(穿刺・血栓溶解) | 輸液+ NAD/AD(IM) | 輸液+NAD (徐脈ならアトロピン) |
| 昇圧薬 | 原則不要 (輸液優先) | ドブタミン +NAD | 補助的 (NAD) | NAD第一選択 (ア:AD IM) | NAD |
| ICU頻度※ | 約16% | 約16% | 約2% | 約66%(最多) | 4%に含まれる |
※ ICU全体でのショック頻度(Vincent JL et al. N Engl J Med. 2014;370:583、1,600例研究)
※ 分布異常性66%=敗血症性62%+その他分布異常性(神経原性・アナフィラキシー等)4%
※ ED(救急外来)やCICU(心臓集中治療室)ではセッティングにより頻度が大きく異なります
※ 分布異常性66%=敗血症性62%+その他分布異常性(神経原性・アナフィラキシー等)4%
※ ED(救急外来)やCICU(心臓集中治療室)ではセッティングにより頻度が大きく異なります
💡 ここだけ覚えれば識別できる|鑑別の3大ポイント
🔴 皮膚が温かい・乾燥
→ ④分布異常性(初期) or ⑤神経原性
他のショックは皮膚が冷たく湿潤。この2つだけ例外
他のショックは皮膚が冷たく湿潤。この2つだけ例外
🟡 徐脈を伴う
→ ⑤神経原性ほぼ一択
他のショックは全て頻脈。徐脈があれば脊損を疑う
他のショックは全て頻脈。徐脈があれば脊損を疑う
🔵 頸静脈怒張あり
→ ②心原性 or ③閉塞性
右心系への戻り or 心臓のポンプ機能の問題
右心系への戻り or 心臓のポンプ機能の問題
🟢 頸静脈虚脱+出血・脱水歴
→ ①循環血液量減少性の可能性大
血管内ボリューム不足のサイン
血管内ボリューム不足のサイン
🔍 POCUSで鑑別精度UP
可能ならPOCUS(Point-of-Care Ultrasound)で迅速鑑別:
☑ IVC径:虚脱→循環血液量減少、拡張→心原性/閉塞性
☑ 左室壁運動:低下→心原性
☑ 右室拡大:肺塞栓の示唆
☑ 心嚢液:タンポナーデ
☑ Bライン:肺うっ血(心原性) vs 乾いた肺(循環血液量減少)
🎯 ショックの初期対応|ABCDEアプローチに連動
ショックを疑った時の初期対応はABCDEアプローチが基本。同時並行でモニタリング・輸液・原因検索を進めます。
⚡ 並行して進める5項目
☑ 応援要請(ドクターコール・RRS起動)
☑ モニタリング(SpO₂・心電図・血圧・尿量)
☑ 静脈路確保(太い末梢静脈路2本)
☑ 採血(血ガス・乳酸・血培・電解質・凝固)
☑ 輸液(晶質液を分類に応じて)
💉 昇圧薬・強心薬の使い分け
ショック治療では、原因に応じた昇圧薬(血圧上げる)と強心薬(心臓の力を強くする)を使い分けます。受容体特性を理解することがポイント。
👩⚕️ ショック発見時|看護師の動き方6ステップ
ショックを疑ったら、動き方の「型」を持っていると迷いません。看護師として動くべき6ステップを整理しました。
📣 鉄則|「迷ったら呼ぶ」
ショックは時間との闘い。新人看護師ほど「自分の判断に自信がない」と抱え込まず、早めに応援を呼ぶ。代償性ショックの段階で介入できれば、予後は大きく変わります。
❓ よくある質問(FAQ)
Q1. ショックと血圧低下は同じですか?
違います。ショックは「組織への酸素供給不足による細胞障害」であり、血圧低下はショックの後期サイン。初期の代償性ショックでは血圧は保たれており、頻脈・頻呼吸・末梢冷感・CRT延長が先に現れます。血圧低下を待たずに気づくことが重要です。
Q2. 平均血圧(MAP)はなぜ大切ですか?
臓器灌流を直接反映するからです。脳・腎・冠動脈などの灌流は拡張期血圧の影響が大きく、収縮期血圧(SBP)だけでは不十分。SSCG 2021ではショックの蘇生目標をMAP ≥ 65 mmHgとしています。計算式は MAP = DBP + 脈圧/3。
Q3. アナフィラキシーでアドレナリンはIVではダメですか?
原則IM(筋注)です。アナフィラキシーではアドレナリン0.3mg を大腿外側に筋注が第一選択(日本アナフィラキシー学会2022)。IV投与は致死性不整脈のリスクがあり、原則心停止時のみ。筋注は5〜15分で反復可能です。
Q4. 敗血症性ショックの「1時間バンドル」とは?
SSCG 2021・J-SSCG 2024で推奨される敗血症認識後1時間以内に実施すべき5項目です。①乳酸値測定、②血液培養(抗菌薬前)、③広域抗菌薬投与、④晶質液30 mL/kg(低血圧・乳酸≥4時)、⑤NAD開始(MAP<65持続時)。時間との闘いで予後が決まります。
Q5. 神経原性ショックで徐脈になるのはなぜ?
交感神経の遮断によるものです。頸髄・高位胸髄(T6以上)損傷で交感神経路が断たれると、血管拡張で血圧が下がるのに代償性の頻脈が起きないため、むしろ迷走神経優位で徐脈になります。他のショックが頻脈なのと対照的で、鑑別の重要ポイントです。
Q6. ショックの中で最も多いのは何ですか?
分布異常性ショック(特に敗血症性)が最多です。Vincent JL et al. (NEJM 2014)の1,600例研究では、敗血症性が約62%、心原性16%、循環血液量減少性16%、その他分布異常性(神経原性・アナフィラキシー)4%、閉塞性2%。ただし救急外来(ED)では循環血液量減少性が最多になるなど、セッティングで頻度が変わります。
Q7. 新人看護師がショックを発見したら、まず何をすれば?
「応援要請 → ABCDE評価 → 静脈路確保」の3ステップを同時並行で。自分一人で抱え込まず、早めにドクターコール・RRS起動することが鉄則。代償性ショックの段階で介入できれば予後が大きく変わります。「迷ったら呼ぶ」が基本です。
🎯 学んだ知識を実践に変えるコース
記事で理解した知識を、実際に体で動けるレベルまで引き上げるには、シミュレーションでの反復練習が不可欠です。急変対応.netでは、目的別に選べる4つの学習オプションを提供しています。
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