ACLS 急変対応コース

【図解】PEA(無脈性電気活動)の急変対応|原因「5H5T」の覚え方と看護師の役割

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「モニターのアラームが鳴って訪室したら、波形は出ている。でも、声をかけても反応がない」

もし、患者さんの頸動脈が触れないのであれば、それはPEA(無脈性電気活動)という非常に危険な状態です。

PEAは、一見すると正常な波形に見えることもあり、対応に迷いやすい急変の一つです。しかし、VF(心室細動)とは明確に対応が違います。

今回は、PEAに遭遇した時に看護師がどう動くべきか、原因検索の語呂合わせ「5H5T」と合わせて解説します。

PEA(無脈性電気活動)とは?

PEA(Pulseless Electrical Activity)とは、心電図モニター上に波形は出ているものの、心臓からの血液の拍出がない(脈が触れない)状態のことです。

心停止(Cardiac Arrest)には4つの波形がありますが、PEAはそのうちの一つです。

【心停止の4つの波形】

  1. VF(心室細動): 電気ショック適応
  2. pVT(無脈性心室頻拍): 電気ショック適応
  3. PEA(無脈性電気活動): 電気ショック適応外 
  4. 4.  Asystole(心静止): 電気ショック適応外

ここが最大のポイント! PEAの場合、心臓は痙攣しているわけではないため、AEDや除細動器(電気ショック)の効果はありません。 行うべきは、「絶え間ない胸骨圧迫」「原因の除去」です。

モニター波形は出ているのに脈がない「PEA(無脈性電気活動)」。

【要注意】「とりあえず血圧測定…」は間違いです!

PEAで最も恐ろしいのは、「モニター波形が出ている安心感」から、心停止の判断が遅れることです。

現場でよく、こんな対応をしてしまっていませんか?

× 間違いの対応例

  • 患者さんの反応がない。
  • モニターを見る → 「あ、脈は出てるな(SRっぽい)」
    ※心リズムが出ているだけで脈は触れない。
  • 「血圧が測れてないだけかな? マンシェット巻き直して!」
  • 「SpO2が拾えてないから、指変えてみて!」

→ この間、患者さんの有効な循環は維持できていません。

モニターではなく「患者さん」を見て!

モニターにどんなに綺麗な波形が出ていても、患者さんに反応がなく、呼吸もしておらず(または死戦期呼吸)、脈が触れなければ、それは「心停止」です。

血圧を測っている時間はありません。SpO2プローブを付け直している暇もありません。 脈がなければ、即座に胸骨圧迫(CPR)を開始してください。

「波形があるのに心マ(胸骨圧迫)していいの?」と不安になるかもしれませんが、脈がないなら押すのが正解です。あなたのその判断が、患者さんを守ります。

【深掘り】なぜ心臓は動いているのに脈がないのか?

院内心停止(IHCA)でPEAになる原因として特に多いのが、「循環血液量減少」「低酸素血症」です。 それぞれ、心臓がどのような状態になってPEAに至るのか、イメージを持っておきましょう。

1. 循環血液量減少(脱水・出血など)

これは、心臓というポンプ自体は元気なのに、「送り出す中身(血液)」が空っぽの状態です。

  1. 出血や脱水で血液が足りなくなる。
  2. 体は代償反応として、心拍数(HR)を上げて循環を維持しようとする(頻脈)。
  3. それでも血液が減り続けると、血圧が保てなくなる。
  4. 最終的に、モニター上の波形(電気活動)はあるが、拍出できず血圧が測定できない状態になる。

まさに、心臓が「空打ち」している状態です。 この場合、PEAの波形は「頻脈(レートが速い)」であることが多いのが特徴です。

【ここが落とし穴!】 Aライン(動脈圧ライン)が入っていたり、人工呼吸器を装着していると、わずかな圧波形が出たりSpO2が表示され続けたりするため、PEAの判断が遅れる(鈍る)ことがあります。 数値に惑わされず、必ず「直接、脈を触れて」確認してください。

2. 低酸素血症(窒息・呼吸不全など)

こちらは、心臓を動かすための「エネルギー(酸素)」が枯渇している状態です。

  1. 体内の酸素が足りなくなる。
  2. 最初は頑張って呼吸数や心拍数を増やそうとする(代償)。
  3. 代償機能が破綻すると、心筋への酸素供給が途絶える。
  4. 心筋の収縮力が落ち、徐々に心拍数が低下する。

そのため、低酸素が原因のPEAは「徐脈(レートが遅い)」として現れることが多いと言われています。

また、心停止になる直前には「脈はあるけど呼吸が止まっている(呼吸停止)」というフェーズが存在することも多いです。 「モニターのアラームが鳴る → 呼吸が止まっている → やがて脈も止まる」という流れを予測し、早期に酸素投与や補助換気(バックバルブマスク)を行うことが重要です。

まずやるべき対応フロー(ACLS)

ドクターが来る前、あるいは到着後のチーム蘇生で、看護師が優先すべき行動は以下の通りです。

1. 胸骨圧迫(CPR)を最優先

「波形が出ているから」と躊躇してはいけません。
脈がなければ心停止です。直ちに胸骨圧迫を開始してください。

2. アドレナリン(ボスミン)の投与

PEAの治療薬はアドレナリンです。

  • 投与量: 1mg(1A)
  • 間隔: 3〜5分ごとに繰り返し投与
  • ※ルート確保がまだなら、骨髄路なども考慮しつつ最速でラインをとります。

3. 「原因」を探す(5H5T)

PEAは「何らかの原因があって、心臓がポンプ機能を失っている」状態です。つまり、原因を取り除けば蘇生する可能性が高いということです。

医師が原因を考えている間に、看護師は**「5H5T」**に基づいて情報を拾い上げ、医師に報告します。

PEAの原因「5H5T」の覚え方とナースのチェックポイント

原因検索の語呂合わせ「5H5T」は、臨床現場で必ず役立ちます。「H」と「T」それぞれの項目に対して、看護師が何を確認すべきかを表にまとめました。

5つの「H」

原因(英語)原因(日本語)看護師のチェック・報告ポイント
Hypovolemia循環血液量減少出血はないか?脱水ではないか?
→ルート全開の準備、輸液の用意
Hypoxia低酸素血症直前のSpO2は?気管チューブは抜けてない?
→10Lリザーバー付マスク、バッグバルブマスク準備
Hydrogen ionアシドーシス糖尿病や腎不全の既往は?
→直近の採血データ(pH)を確認
Hyper/Hypokalemia高/低カリウム血症透析患者さんではないか?利尿剤の使用は?
→直近の電解質データを確認
Hypothermia低体温体が冷え切っていないか?濡れていないか?
→復温の準備

※注意: 5Hには含まれないこともありますが、「低血糖(Hypoglycemia)」もPEAの原因となります。すぐに測定できるため、簡易血糖測定を行うのが鉄則です。

5つの「T」

原因(英語)原因(日本語)看護師のチェック・報告ポイント
Tension pneumothorax緊張性気胸片側の胸郭が上がっていない、呼吸音が聞こえない。
→脱気の準備(18G針など)
Tamponade (cardiac)心タンポナーデ心臓手術後や心外傷はないか?
→心嚢穿刺の準備(エコーを医師へ渡す)
Toxins中毒薬の過剰摂取(OD)の可能性は?
→現場に空のPTPシートがないか確認
Thrombosis (pulmonary)肺塞栓(PE)長期臥床、DVT(血栓)の既往は?
→血栓溶解療法の可能性あり
Thrombosis (coronary)冠動脈血栓(AMI)胸痛の訴えはあったか?
→心カテ室への搬送準備

臨床でのPEAとの戦い方:モニターを「見る」力が患者を救う

PEA(無脈性電気活動)は、心停止の一種です。時間経過とともに蘇生率は急激に低下するため、**「1秒でも早く原因を突き止めること」**が勝負の分かれ目になります。

原因検索のヒントは「経過」にある

まず、患者さんのここまでの経過を思い出してください。

  • 急激に進行した?
    • 例:食事中の窒息、カニューレ抜去後の気胸など。
  • 徐々にバイタルが崩れていた?
    • 例:出血による循環血液量減少、敗血症、呼吸不全など。

多くのPEAは、突然起こるというよりは、何らかの前兆(バイタルサインの変化や症状)を伴って進行します。 「さっきまでどうだったか?」という現病歴や背景情報、そして身体所見(呼吸音、皮下気腫、腹部膨満など)や採血データ、エコー所見を総動員して原因を探ります。

【上級編】モニター心電図が「原因」を教えてくれる?

ここで、原因検索の大きな手がかりとなるポイントをお伝えします。 それは**「QRSの幅」「心拍数(レート)」**です。

ACLS-EP(Experienced Provider)のテキストには、以下のような記載があります。

モニターされた心リズムを再評価し、心拍数とQRS群の幅の広さに注意する。 狭いQRS幅のPEAには心臓以外に原因のある可能性が高い。 このような場合、ただちに治療可能な原因を迅速に同定して、治療しなければ蘇生は望めない。

つまり、モニター上のQRSが**「狭い(Narrow)」「広い(Wide)」**かを見るだけで、ある程度原因を絞り込むことができるのです。

【保存版】QRS幅で予測するPEAの原因一覧表

QRSが狭い場合と広い場合で、疑うべき「H」と「T」は以下のように分類されます。

PEAの原因を究明する手がかりとなる心拍数とQRS幅

どう見分ける?現場での考え方

  • QRSがシュッとしている(狭い)なら…
    • 電気は正常に流れている=心臓自体はまだ元気!
    • 「血液が足りない(出血・脱水)」か「邪魔されている(気胸・塞栓・タンポ)」の可能性大。
    • 看護師の動き: ルート全開、エコー準備、脱気・穿刺の介助準備!
  • QRSがボテッとしている(広い)なら…
    • 電気がうまく伝わっていない=心臓や代謝がおかしい!
    • 「カリウムが高い」「薬物中毒」「心筋梗塞」の可能性大。
    • 看護師の動き: 採血データの確認、マグネシウムやカルシウム製剤の準備!

看護師ができる「医師との連携」

PEAの現場では、医師も焦っています。
そんな時、看護師から次のような声掛けがあると、原因特定がスムーズになります。

  • 「直前のSpO2は80%台まで下がっていました!」(→低酸素?)
  • 「この患者さん、今日透析回っていません!」(→高カリウム?)
  • 「ドレーンからの排液が急に止まりました!」(→タンポナーデ?)

ただ「PEAです!」と言うだけでなく、「PEAになった原因(ヒント)」を投げかけるのが、できるナースの動きです。

まとめ

  • PEA(無脈性電気活動)は、「波形はあるけど脈がない」状態。
  • 除細動(電気ショック)は無効! すぐにCPRとアドレナリン投与を行う。
  • 救命のカギは原因検索。「5H5T」を頭に入れて、バイタルや既往歴からヒントを探す。

PEAは原因さえ解除できれば、劇的に回復する可能性があります。焦らず、まずは確実な胸骨圧迫から始めましょう。

動画教材

Q.「心電図モニターで脈が出てるのにCPRしてもいいの?」

心電図モニターに表示されているのは波形(心電図リズム)であって脈ではない!
頸動脈は触知できないので脈は触れない。心拍数と脈拍数の違いを整理してみよう。

Q.「PEAは除細動の対象になりますか?」

適応となりません。
詳しくまとめたので以下の記事を御覧ください

PEAになぜ除細動は禁忌なのか(別記事)

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