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【看護師向け】心電図モニターの読み方完全ガイド|心停止リズム4種と症候性不整脈5種|VF/VT/PEA/SVT/ 心房細動/徐脈

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モニターを見ても何が異常か分からない。アラームが鳴っても「これは様子見でいいの?コールするべき?」と判断に迷う。

この記事では、看護師が"危険を見抜く"ために最低限必要な不整脈を、心停止リズム4種(VF/pVT/PEA/心静止)+症候性で緊急度が変わる不整脈5種(脈ありVT/SVT/心房細動/徐脈・ブロック/PVC)に整理して、判別方法と緊急度別対応を徹底解説します。新人看護師の入門から、ICU・CCU看護師の整理まで、1記事で完結する保存版です。
【30秒でわかる】心電図モニター波形を読む鉄則
・看護師の目的は「読む」ではなく「危険を見抜く」
QRS幅・脈拍・規則性の3つでほぼ判別できる
即除細動:VF / 無脈性VT
除細動非適応:PEA / 心静止(質の高いCPR+5H5T)
症候性(意識・血圧低下)があるかで緊急度が決まる
・モニター波形だけで判断せず、必ず患者を見る(脈・意識)
・アーチファクトを除外できれば、半分は解決
この記事でわかること
・正常波形(P/QRS/T)の基本
心停止リズム4種+症候性不整脈4種の判別と即対応
・モニターアラーム対応の基準
・アーチファクト・誤認識の見分け方
・コール基準とSBARでの伝え方
・FAQと関連記事

看護師が心電図を読む意味|"読むこと"を目的にしない

心電図を学ぶ多くの看護師が、最初の一歩で躓きます。実はその原因はほぼ共通で、根本的な勘違いから始まっています。
なぜ多くの看護師が心電図で躓くのか
答えは1つ:「読むこと」自体を目的にしてしまうから。
・心電図の本を買って読み込む
・波形パターンを丸暗記する
・「読めるようになりたい」と勉強する

→ でも、現場で使えるようにならない
それは、"読むこと"が看護師の仕事ではないからです。看護師がやるべきは"危険を見抜いて行動する"こと。本来の目的とずれた勉強をしてしまうから、覚えても覚えても定着しないのです。

正しい学習順序|2ステップで身につける

看護師の心電図学習には明確な順序があります。この順序を間違えると、いつまでも"使える知識"にはなりません。
1
危険な心電図を覚えて対応できる
最初に身につけるべきは"見たら動ける"レベル

・VF / pVT / PEA / 心静止 → 即CPR
・症候性のVT・SVT・徐脈 → 至急コール
・新規発症のAF・III度ブロック → 報告

波形を読めなくてもいい。「見たら何をするか」を体に染み込ませることが先です。本記事の"心停止リズム4種"から覚えるのが王道。
2
アセスメントの情報ツールの"一つ"として捉える
危険波形の対応を覚えたら、次は心電図を"単独の情報"として読まない段階へ。

心電図は、看護アセスメントの数ある情報ツールの一つです。
・バイタルサイン(BP・HR・SpO2・体温)
・身体所見(冷感・意識・呼吸)
・問診(OPQRST等)
・治療経過(薬剤・輸液・既往)

これらと複合的に考えることで、はじめて心電図が意味を持ちます。「PVCあり」だけでは判断できなくても、「低K血症の可能性 + 利尿薬使用中 + 食欲低下」という文脈と合わせれば対応が見える。これがプロの読み方です。
学習のマインドセット|3つの問い
心電図を見るたびに、自分にこの3つを問いかけてください。
Q1: これは危険な波形か?(STEP 1)
Q2: 患者の状態(意識・呼吸・脈・症状)はどうか?
Q3: 他の情報(バイタル・既往・治療)と合わせると、何が起きているか?(STEP 2)
波形を読むのが目的ではない。患者の状態を理解して動くのが目的です。

看護師が心電図モニターを見る目的|"読む"のではなく"危険を見抜く"

看護師が心電図モニターを見るとき、医師のように"診断する"必要はありません。看護師の役割は明確です。
医師の役割
診断・治療方針の決定
・12誘導心電図で診断
・治療薬・抗不整脈薬の選択
・カテーテル・植え込みデバイスの判断
・複雑な波形の読影
看護師の役割
危険の早期発見・初動
異常波形を見抜く(コールのトリガー)
患者の状態と照合(脈・意識)
即対応(CPR・応援要請・除細動準備)
SBARで報告
看護師が覚えるべきは"パターン認識"
すべての心電図を読めるようになる必要はありません。「これは危ない」と即座に判断できる8つのパターンを押さえれば、現場で困ることはほぼなくなります。

医師に相談する前に「何が起きているか仮説を持てる」レベルが目標です。

モニター心電図と12誘導心電図の違い

看護師が日常的に見るのはモニター心電図(3点誘導 or 5点誘導)で、12誘導心電図とは別物です。役割を明確に分けて理解しましょう。
モニター心電図
3〜5点誘導
連続監視
・リズム・心拍数の確認
不整脈の検出
・心筋虚血の大まかな把握(II・V誘導)
・看護師の主戦場
12誘導心電図
10個の電極で12方向
瞬間的な記録
虚血の部位特定(下壁・前壁等)
・ST変化の詳細評価
・診断確定用
・医師の主戦場
看護師にとって重要なのは:モニターで「何かおかしい」を察知 → 必要なら12誘導をオーダーする/取得する判断、という流れ。モニターは"トリガー"、12誘導は"確定"の役割です。

解剖生理|心臓伝導システムと心電図波形の対応

心電図は心臓の電気活動を記録したもの。波形の意味を理解するには、心臓のどこで電気が生まれ、どう伝わるかを知っておくと、暗記ではなく"納得"で覚えられます。
心臓伝導システムの流れ
電気信号は決まったルートを通って心臓を動かします。

SA結節(洞結節)(右心房上部)
↓ 心臓のペースメーカー、電気を生み出す
心房を伝導(右房 → 左房)
↓ 心房が収縮する電気の広がり
AV結節(房室結節)
↓ 一旦"間"を空けて(電気を遅らせる)、心室に伝える
ヒス束 → 脚 → プルキンエ線維
↓ 高速で心室全体に電気を伝える
心室全体が収縮

心電図の各波形は"どこの電気活動"か

P波 = 心房の収縮(SA結節→心房の伝導)
SA結節から発生した電気が心房を伝わる時に出る波。
P波がない=SA結節からの正常な信号が出ていない
→ 心房細動・接合部調律・ペーシングなどを疑う
PR間隔 = AV結節を通る時間
P波の始まりからQRS波の始まりまで。AV結節での"待機時間"を反映。
正常:0.12〜0.20秒
延長(0.20秒超)=I度AVブロック(AV結節の伝導が遅い)
P波の後にQRSが来ない=II度・III度AVブロック
QRS波 = 心室の収縮(ヒス束→プルキンエ線維)
高速伝導路(ヒス-プルキンエ系)を電気が走るため、幅が狭く鋭い
QRS幅(正常 0.12秒未満):正常な高速伝導路を使っている証拠
QRS幅が広い:高速伝導路を使っていない=心室筋を直接伝わっている
→ 心室起源(VT・PVC)、脚ブロック、ペーシング、変行伝導など
T波 = 心室の再分極
収縮した心室が"元に戻る"電気活動。
陰性T(陥没)=虚血を疑う
巨大T(尖鋭)=高K血症などを疑う
T波の上にQRSが乗る(R on T)=再分極が完了する前に次の刺激が入る → VFリスク
解剖生理を理解するメリット
波形を"形"だけで覚えると、すぐに忘れます。

波形の異常 = どこの伝導の異常かがわかる
・初めて見る波形でも"こういう機序だな"と推測できる
・薬剤の作用機序(アトロピン=AV結節、アミオダロン=心室)も納得

解剖生理は暗記の量を減らし、応用力を上げる最良の投資です。

正常波形の基本|P・QRS・Tを5秒で見る

異常を見抜くには、正常がどう見えるかを頭に入れておく必要があります。覚えるのはP・QRS・Tの3つだけです。
P波|心房の収縮
・QRS波のに小さな"丸い波"
P波がない=心房細動・接合部調律など
P波があってもQRSが続かない=房室ブロック疑い
QRS波|心室の収縮(看護師が一番見るところ)
幅(Width):0.12秒(3マス)未満が正常 = "narrow QRS"
幅が広い(wide QRS)=心室起源を疑う(ただし伝導障害・上室性頻拍+変行伝導・脚ブロック・ペーシング・高K血症等でも生じる)
QRSがなく平坦に近い=心静止を疑う
QRSがあっても脈がない=PEA(narrow/wide/brady PEAなどQRSは様々)
振幅:大きすぎ・小さすぎは要注意
T波|心室の再分極
・QRS波のに滑らかな波
陰性T=虚血疑い
巨大T=高K血症などを疑う
・T波の上にQRSが重なる=R on T(VFリスク)
正常な波形|"P→QRS→T"が規則的に並ぶ
正常な波形は次のように見えます:

P波(小さい丸)→ QRS波(鋭く尖る)→ T波(滑らかな丸)
これが規則正しいリズムで繰り返される。

心拍数は60〜100回/分(成人安静時)。

モニター波形の見方|"5秒チェック"のステップ

モニターを見るときは、5秒で4つを確認するだけ。これで90%の異常はキャッチできます。
1
心拍数(HR)|何回?
50未満=徐脈(症候性なら危険)
100超=頻脈(150超は要注意)
・アラーム閾値は施設・患者ごとの設定による(例:40〜150など)
2
規則性|リズムは整?不整?
整(regular)=正常洞調律・SVT・徐脈など
不整(irregular)=心房細動・期外収縮・ブロック
絶対不整(リズムが完全にバラバラ)=心房細動の典型
3
QRS幅|狭い?広い?
狭い(narrow)=上室性(心房・房室結節)起源の可能性が高い
広い(wide)=心室起源を第一に疑う(ただし伝導障害(脚ブロック)・SVT+変行伝導・ペーシング・高K血症でも生じる)
QRS幅は危険度の指標(脈なしのwide QRSは致死的不整脈の可能性)
4
P波|あるか?QRSと連動してるか?
P波あり、QRS連動=正常洞調律 or 洞性頻脈/徐脈
P波なし、不整=心房細動
P波あり、QRSが続かない=房室ブロック
最重要|モニター波形だけでは判断しない
モニターは"電気的活動"を見ているだけです。機械的に心臓が動いているか(=脈があるか)とは別物です。

波形あり+脈なし=PEA(無脈性電気活動)
波形あり+症状あり=症候性(緊急度高)
波形あり+患者は普通=様子見可能なことも

モニターでアラーム → 必ず患者を見に行く(意識・脈・呼吸)が鉄則です。

心停止リズム 4種|即CPR適応の波形

ここから先が本記事の核心。看護師が真っ先に見抜くべき「心停止リズム」4種類です。これらが出たら即CPR・応援要請。命に直結する波形です。
心停止リズム 01
VF(心室細動 / Ventricular Fibrillation)
波形の特徴
不規則・不定形のギザギザ波(基線が乱れる)
・P波・QRS波・T波の区別がつかない
・心室筋がバラバラに収縮し、心拍出ゼロ
意識・呼吸・脈なし=心停止
解剖生理ポイント:正常な刺激伝導(SA→AV→ヒス・プルキンエ系)が完全に崩壊し、心室筋細胞が各々勝手に脱分極を繰り返す状態。協調収縮ができず心拍出ゼロ。除細動で全細胞を一旦リセットし、SA結節主導の正常リズムへの復帰を促すのがショックの目的。
即対応|除細動適応
1. 意識・呼吸・脈の確認(なければCPR開始)
2. 応援要請(コードブルー)
3. CPR開始(質の高い胸骨圧迫)
4. 除細動器到着次第ショック
5. ショック後すぐCPR再開(2分間)
6. アドレナリン投与・気道管理
重要:「波形だけ」で判断せず、必ず脈拍確認。患者が普通に話していたらアーチファクトの可能性大。ACLS心停止アルゴリズムを参照。
心停止リズム 02
pVT(無脈性心室頻拍 / pulseless VT)
波形の特徴
幅広い(wide)QRSが連続(0.12秒以上)
規則的な速いリズム(150〜250回/分)
・P波が見えない(QRSに埋もれる)
脈なし=心停止扱い
脈ありVTは別の対応(後述・徐脈/頻脈の項目)
解剖生理ポイント:心室内の異常な"異所性興奮源(リエントリー回路など)"から発生。正常なヒス・プルキンエ系を使わず心室筋を直接伝導するためQRSが幅広くなる。脈なしになるのは、心拍数が速すぎて拡張期に十分な血液が充填されないため拍出ゼロに陥った状態。
即対応|VFと同じ(除細動適応)
1. 脈拍確認(必須)
2. 脈なし → VFと同じ扱い(CPR + 除細動)
3. 脈あり → VTアルゴリズム(同期電気ショックや薬剤)
脈ありVT vs 無脈性VT:波形は同じでも対応が真逆。脈拍確認が分岐点です。ACLS頻拍アルゴリズムもあわせて確認。
心停止リズム 03
PEA(無脈性電気活動 / Pulseless Electrical Activity)
波形の特徴
QRSは出ている(波形は様々:narrow PEA / wide PEA / brady PEAなど)
・洞調律のような波形・徐脈様の波形・wide QRSの波形まで多様
波形は出ているのに脈がない(電気と機械の乖離)
院内心停止の最多原因(国循データ:44%)
波形だけでは絶対に判別できない=脈拍確認必須
解剖生理ポイント:電気的には興奮が伝わっているが、心筋が機械的に収縮できない状態(電気-機械的解離)。原因は循環血液量の不足(Hypovolemia)、酸素不足(Hypoxia)、心タンポナーデ、緊張性気胸、肺塞栓など"心臓が動こうとしても動けない"状況。原因の解除なしに改善しないのがVF/VTとの最大の違い。だから5H5Tを潰す。
即対応|除細動非適応
1. 脈拍確認(脈なし=PEA確定)
2. 応援要請(コードブルー)
3. 質の高いCPRを開始(除細動はしない)
4. 原因検索(5H5T)を並行
5. アドレナリン投与(3〜5分ごと)
6. 原因が分かれば是正(輸液・除圧・対症療法)
重要:PEAでは除細動しても無効。原因(5H5T:Hypovolemia/Hypoxia/H+/Hypo-Hyperkalemia/Hypothermia + Tension pneumothorax/Tamponade/Toxins/Thrombosis)を見つけて治すのが鍵。詳細はPEA完全ガイドへ。
心停止リズム 04
心静止(Asystole)
波形の特徴
ほぼ平坦な線(flat line)
・電気活動が完全に停止
・国循データで院内心停止の20%
非ショック適応(除細動しても無効)
・予後は最も悪い(原因が解決可能でない場合)
解剖生理ポイント:SA結節も含め、全心筋の電気活動が消失した状態。除細動は"異常な電気を一旦止めて正常リズムに戻す"治療なので、止めるべき電気がないAsystoleには無効。CPRで心臓に酸素・栄養を送り続け、アドレナリン・原因解除でSA結節の活動再開を待つしかない。
即対応|PEAとほぼ同じ
1. 本当に心静止か確認(電極外れ・誘導確認)
2. 応援要請(コードブルー)
3. 質の高いCPR
4. 原因検索(5H5T)
5. アドレナリン投与
必ず確認:本当に心静止なのか、それとも電極外れ・接触不良か?患者の意識・呼吸・脈を確認しないと判断できません。心停止と心静止の違いも参考に。

心停止リズム4種の判別早見表

波形特徴除細動対応
VF不規則ギザギザ適応CPR + 即除細動
pVTwide QRS連続・脈なし適応CPR + 即除細動
PEA波形あるが脈なし非適応CPR + 5H5T検索
心静止flat line非適応CPR + 5H5T検索
覚えるコツ:「VF/pVT」=除細動2種、「PEA/心静止」=非除細動2種に分けて記憶。CPRはどれも必須、違うのは"電気を流すか流さないか"だけ。

症候性で緊急度が変わる不整脈 5種

ここからは心停止ではないものの、看護師が押さえるべき4つの不整脈です。これらは「症候性かどうか」で緊急度がガラリと変わります。健康な人にも単発で出ることがあるため、"波形だけで危険"と決めつけないことが大切です。
「症候性」=不整脈に伴う症状あり
意識レベル低下(失神・もうろう)
血圧低下(ショック徴候)
胸痛・冷汗
急性心不全徴候(息切れ・浮腫)

これらを伴うと緊急対応(電気ショック・薬剤)が必要。なければ薬剤コントロール・観察で対応することが多い。
症候性不整脈 05|頻脈系(wide QRS)
脈ありVT(心室頻拍 / Ventricular Tachycardia)
波形の特徴
幅広い(wide)QRSが連続(0.12秒以上)
規則的な速いリズム(150〜250回/分)
・P波が見えない(QRSに埋もれる)
脈がある=心拍出は維持されている状態
脈なしVTは即CPR(Part2参照)
解剖生理ポイント:心室内のリエントリー回路や異常自動能から発生。心室筋を直接伝導するためQRS幅広い。脈の有無は心拍数と心室機能のバランスで決まる。同じVTでも心拍数が比較的緩やか・心機能良好なら脈あり、頻拍すぎる・心機能低下では脈なしへ移行しやすい。だから「同じ波形でも対応が分かれる」。
最重要|まず脈拍確認
VTを見たら必ず脈拍確認。脈の有無で対応が真逆になります。

脈なし無脈性VT(pVT):即CPR + 除細動(ACLSアルゴリズム)
脈あり安定 vs 不安定で分岐(以下)
不安定な脈ありVT
症候性 → 緊急
"不安定"の定義:
・意識レベル低下
・血圧低下(収縮期90未満)
・胸痛・冷汗
・急性心不全徴候

対応:同期電気ショック(医師指示)
安定な脈ありVT
無症候 → 準緊急
"安定"の定義:
・意識清明
・血圧維持
・自覚症状軽度

対応:
抗不整脈薬(アミオダロン等)
・12誘導取得
・ICU移送検討
看護師の役割:VT発見時は"脈確認 → 症状確認 → 至急コール"の流れ。安定でもいつ不安定化するか分からないため、医師到着まで継続観察+除細動器準備。詳細はACLS頻拍アルゴリズムへ。
症候性不整脈 06|頻脈系(narrow QRS)
SVT(上室性頻拍 / Supraventricular Tachycardia)
波形の特徴
narrow QRS(0.12秒未満)
規則的で速いリズム(150〜250回/分)
・P波が見えにくい(QRSに重なる)
・突然始まり、突然終わる
・若い人にも起きる(発作性上室性頻拍)
解剖生理ポイント:AV結節や心房内のリエントリー回路で電気が"くるくる回る"ことで発生(AVNRT・AVRTなど)。正常な伝導路(ヒス・プルキンエ系)を使うのでQRSは狭い。迷走神経刺激(息こらえ等)・アデノシンが効くのは、AV結節の伝導を一時的にブロックすることでリエントリー回路を断ち切るため。
即対応|症候性で分岐
症候性(意識・血圧低下)あり
同期電気ショック(医師指示で実施)

症候性なし(安定)
迷走神経刺激手技(息こらえ等)
→ アデノシン投与(医師オーダー)
→ 12誘導取得・モニター継続観察
看護師ポイント:SVTは意識ある状態で発症することが多い。患者は動悸・不安を訴える。落ち着いて声をかけ、12誘導の準備を。ACLS頻拍アルゴリズム参照。
症候性不整脈 07|頻度No.1
心房細動(Atrial Fibrillation / AF)
波形の特徴
P波がない(基線が細かく揺れる=f波)
絶対不整(R-R間隔がバラバラ)=最大の特徴
・QRSは狭い(narrow)
・心拍数は様々(60〜200回/分)
高齢者で多い・血栓塞栓症リスクあり(特に持続性・CHA2DS2-VAScスコア高値)
・新規発症?既存?を必ず確認
解剖生理ポイント:心房筋(特に肺静脈起始部)で異常な電気興奮が無秩序に発生し、心房がバラバラに痙攣する状態。AV結節がランダムに伝導するためR-R間隔が絶対不整に。心房がうまく収縮できない=心房内に血液が滞留→血栓ができ、剥がれて飛ぶと脳梗塞などの塞栓症に。だから抗凝固療法が重要。
即対応|症候性で分岐
症候性(血圧低下・心不全悪化等)
緊急コール・同期電気ショック検討

新規発症のAF
→ 12誘導記録・カルテで既往確認・医師報告
背景疾患検索(心不全・虚血・感染症等)
抗凝固薬の適応評価(CHA2DS2-VAScスコア・持続時間など医師判断)

既存AF・心拍数コントロール内
→ 経過観察(指示の範囲で)
注意:AFで心拍数150超(タキカルディアAF)になると、心不全急性増悪につながりやすい。新規発症AFは"即脳梗塞"ではなく、持続時間・CHA2DS2-VAScスコア・背景疾患(心不全・虚血・感染等)を評価する必要があるため、必ず医師報告して方針を決めます。
症候性不整脈 08|徐脈系
徐脈・房室ブロック(AV Block)
波形の特徴
洞性徐脈:P波あり、QRS連動、規則的、HR50未満
I度AVブロック:PR延長(0.20秒超)、QRS連動
II度AVブロック:P波の一部にQRSが続かない
III度(完全)AVブロック:P波とQRSが独立して動く(致命的)
洞停止:突然P波が消える(数秒間の心停止)
解剖生理ポイント:SA結節の機能低下(洞性徐脈・洞停止)・AV結節の伝導障害(AVブロック)・刺激伝導系全体の障害で発生。アトロピンは副交感神経をブロックしてSA結節・AV結節の伝導を促進する薬。III度AVブロックは心房と心室が完全に独立して動く=心室は補充調律(遅い・不安定)に頼るため危険。ペーシングで外から電気刺激を補う必要がある。
即対応|症候性が判断基準
症候性(失神・血圧低下・心不全)
緊急対応(アトロピン・経皮ペーシング)
→ 医師コール

無症候
→ 12誘導取得・観察
→ 医師に報告(新規なら必ず)

III度ブロックは無症候でも報告(突然の心停止リスク)
看護師ポイント:徐脈の患者は朝のバイタル測定で偶然見つかることも多い。「HR40」と書いて報告するだけでなく、意識・血圧・症状があるかを観察してSBARで報告。詳細はACLS徐脈アルゴリズムへ。
症候性不整脈 09|VF前駆の可能性
PVC(心室性期外収縮 / Premature Ventricular Contraction)
波形の特徴
本来のQRSより前に幅広い異常QRSが出現
P波がない(心室から発生)
wide QRS(0.12秒以上)
・健康な人にも単発で出ることがある
・以下のパターンはVFリスクとして注意
解剖生理ポイント:心室内の異所性興奮源から、本来のSA結節リズムより早く電気が出ることで発生。心室筋を直接伝導するのでQRSが幅広い。R on TがVFを誘発しやすい理由は、T波(再分極)中の心室筋は"絶対不応期"を抜けたばかりで興奮しやすい状態のため。電解質異常(低K・低Mg)や心筋虚血で出やすくなる。
警戒すべきPVCの所見
R on T:T波の上にPVCが乗る(VF誘発リスクと考えられている)
多源性:形が違うPVCが混在
連発:2連発(couplet)・3連発以上(non-sustained VT)
頻発:PVC burdenが多い
新規発症:今までなかったのに出現
補足:歴史的に有名なLown分類(R on T・多源性・連発等)は現代では予後予測として限定的とされています。現代的な評価では、基礎心疾患の有無・PVC burden(頻度)・持続性VTへの移行・症候性などを総合して判断します。Lown分類単独で重症度を決めません。
即対応
単発・無症候・基礎心疾患なし:経過観察
R on T・連発・多源性・新規発症・症候性:医師コール
・電解質異常(低K血症・低Mg血症)を考慮
・心筋虚血の可能性も(12誘導取得)
・基礎心疾患(心筋梗塞・心不全等)があれば慎重評価
看護師ポイント:R on Tや連発PVCは警戒所見ですが、波形だけで重症度判断はせず、患者の基礎疾患・症状・電解質と合わせて評価します。急性期病棟・ICUでは要警戒

不整脈の緊急度マップ|症状で緊急度は変わる

緊急度の階層:
最緊急(即CPR・コードブルー)
高緊急(至急医師コール・並行して準備)
中等度(通常コール・12誘導取得)
低緊急〜経過観察(記録・申し送り)
波形・状況緊急度対応
VF最緊急CPR + 即除細動
VT 脈なし(pVT)最緊急CPR + 即除細動
PEA / 心静止最緊急CPR + 5H5T検索
VT 脈あり 不安定高緊急同期電気ショック
VT 脈あり 安定中等度〜高抗不整脈薬・継続観察
SVT 不安定高緊急同期電気ショック検討
SVT 安定中等度迷走神経刺激・薬剤
心房細動 新規中等度12誘導+医師報告
心房細動 既存安定経過観察指示範囲内で観察
徐脈 症候性高緊急アトロピン・ペーシング
徐脈 無症候中等度医師報告+12誘導
III度AVブロック高緊急無症候でも医師コール
PVC R on T・連発高緊急医師コール+電解質確認
PVC 単発・無症候経過観察記録のみ
看護師ポイント:同じ波形でも、"症候性かどうか""新規発症か既存か"で緊急度は大きく変わります。波形だけで判断せず、必ず患者の状態と既往を確認してから報告しましょう。

アーチファクト|"見せかけの異常"を見抜く

モニターで「異常波形だ!」と思っても、実は機械的なノイズ(アーチファクト)のことが多々あります。慌てる前に"本当に異常か"を確認する習慣をつけましょう。
① 体動アーチファクト
VFに似た不規則な揺れに見える
・体位変換・歯磨き・震え・パーキンソン等で発生
判別ポイント:患者は普通に話してる/動いてる → アーチファクト
② 電極外れ・接触不良
flat line(心静止っぽく見える)
・心拍はあるのに「心静止」と表示
判別ポイント:「Lead off」アラームが出てる、患者は普通 → 電極確認
③ 筋電図ノイズ
・基線が細かく揺れる
・寒気・震え・体勢が悪いと出る
・心房細動と見間違えやすい
判別ポイント:R-R間隔は規則的 → 筋電図ノイズ
④ 電気的干渉(ハム雑音)
・電気毛布・電気カミソリ・周辺機器の干渉
・規則的な細かい振動が乗る
判別ポイント:機器の電源を切ると消える
⑤ ダブルカウント
・モニターがT波もR波と数えて、HR表示が2倍になる
・実際60なのに「120」と表示
判別ポイント:表示値と実際の脈拍が乖離 → 誘導変更
鉄則|"波形より患者を見る"
モニターでアラームが鳴ったら、必ず:

STEP 1: 患者の元へ行く
STEP 2: 意識・呼吸・脈を見る
STEP 3: 普通なら → アーチファクト疑いで電極確認
STEP 4: 異常なら → 即対応(CPR含む)

波形だけ見て「アーチファクトだろう」と決めつけるのが最大の事故。実際の波形変化を見逃すケースがあります。

心電図モニターアラーム対応|"アラーム疲労"を防ぐ

ICU・救急では1日に数百回鳴るアラーム。すべてを真剣に対応していたら看護師が消耗します。"重要なアラームに集中する"ための整理が必要です。
レッドアラーム
最優先・即対応
・VF / VT / Asystole
・SpO2極度低下
・血圧極度低下
すぐ患者の元へ
イエローアラーム
準優先・確認
・徐脈 / 頻脈
・PVC頻発
・SpO2軽度低下
確認・経過観察
テクニカル
機器・電極系
・Lead off(電極外れ)
・電池切れ
・通信エラー
機器確認
アラーム設定の見直しも大切
不必要なアラームが鳴り続ける状態は、本当の危険を見逃す原因になります(=アラーム疲労)。

・アラーム閾値は施設のプロトコルや患者ごとの設定による(例:HR下限40、上限150など)
患者の状態に合わせて閾値を調整(医師指示・施設ルールで)
・PVC頻発の患者で「PVC alarm」を毎回鳴らすか?
・夜間の体動アラームを減らす設定

看護師から医師へ、設定変更を提案する姿勢も大事です。

医師コール判断|波形+症状で即決する

モニター上の異常を見つけたとき、「コールする/しない」「至急/経過観察」を判断する基準です。
即コール+CPR(コードブルー)
・VF / pVT / PEA / 心静止
・意識・呼吸・脈なし
応援要請+CPR開始
至急コール(SBARで「すぐ来てください」)
・症候性SVT/AF/徐脈
・III度AVブロック
・R on T・連発PVC
・新規不整脈+症状あり
通常コール(指示・相談)
・新規発症のAF(無症候)
・無症候の徐脈・II度ブロック
・PVC頻発(R on Tなし)
・「いつもと違う」印象
→ 12誘導取得+SBARで報告
経過観察(記録のみ)
・既往のあるAF・徐脈で安定
・単発PVC
・アーチファクトと判断できる場合
→ 記録+申し送り

SBARでの伝え方|心電図モニター異常の報告例

モニター異常を医師に伝えるとき、SBARで整理すると伝わります。詳しくはSBAR完全ガイド参照。
例1|症候性SVTの報告
「〇〇先生、305号室の田中さんすぐ来てください。
モニターでHR180、narrow QRSのSVTが出現、血圧が80台に低下、冷汗ありです。
12誘導は今取っています。不安定な頻脈と判断しています」
例2|新規発症の心房細動の報告
「〇〇先生、相談です。305号室の田中さん、
さきほどから新規でAfに移行、HR110台で安定してます。
意識清明、血圧は通常範囲、自覚症状なし。
カルテで既往は確認できなかったので、抗凝固薬の検討と精査の方針をご相談したいです」
例3|症候性徐脈の至急コール
「〇〇先生、305号室の田中さんすぐ来てください。
HRが30台に低下、II度AVブロックに見えます。
意識レベル低下、血圧80台、冷汗あり。
症候性徐脈と判断、アトロピン準備しています

【コピペ用】心電図モニター波形チェックリスト

スマホでスクショ・ナースステーションに貼る用の5秒チェックリストです。
5秒チェックリスト
□ HR(50未満?100超?)
□ リズム(規則的?不整?絶対不整?)
□ QRS幅(狭い?広い?)
□ P波(あるか?QRSと連動?)
□ 患者の状態(意識・呼吸・脈)
□ アーチファクト除外できたか?
□ 既往と比較して新規か?
即コール基準(これが出たら迷わず)
□ VF / pVT(コードブルー)
□ PEA / 心静止(コードブルー)
□ III度AVブロック
□ 症候性SVT・徐脈・AF
□ R on T・連発PVC
□ 「いつもと違う」+患者状態悪化

よくある質問(FAQ)

Q1. 心電図モニターと12誘導心電図、看護師はどっちを優先?
日常的にはモニター心電図を見ます。モニターで「異常かも」と気づいたら、12誘導心電図を取得して詳しく評価するのが流れです。

モニター=トリガー(気づき)、12誘導=確定(評価)の役割分担と覚えてください。
Q2. 8つの波形、覚えきれないんですが…
最初は"心停止系4つ(VF/pVT/PEA/Asystole)"だけでOKです。これらは即対応が必要なので、最優先で覚えましょう。

慣れてきたらSVT・心房細動・徐脈・PVCを順に学んでいけば、十分現場で動けます。
Q3. アラームが鳴っても判断に迷います
アラームに対する3ステップを習慣化しましょう。

STEP 1: アラームの種類を確認(レッド/イエロー/テクニカル)
STEP 2: 患者の元へ行き、意識・呼吸・脈を見る
STEP 3: 異常があればコール、なければアーチファクト疑いで電極確認

慣れるまでは時間がかかりますが、1週間で習慣化します。
Q4. 「PEAだ」と判断するのが怖いです
PEAは波形だけでは絶対に判別できません。波形は普通でも脈がない=PEA。だから必ず脈拍確認が必要です。

怖がらずに「波形+脈拍」をセットで見る習慣を。脈がなければPEA→CPR開始でOKです。詳しい対応はPEA完全ガイドへ。
Q5. アーチファクトと本物の異常、見分けが不安です
判別の最も確実な方法は"患者を見る"こと。

患者は普通に話してる/動いてる → アーチファクトの可能性大
患者は意識・呼吸・脈なし → 本物の異常

迷ったら必ず患者を見に行くのが鉄則。波形だけで「アーチファクトだろう」と決めつけないこと。
Q6. 心電図の勉強、どうすれば上達しますか?
3つのステップで上達します。

1. 本記事の8波形を覚える
2. 病棟で実際のモニター波形を毎日見る(継続が最強)
3. ACLS・NCLSコースでシミュレーション訓練

特にACLSコースは、心停止リズム識別を集中訓練できます。ACLS 1日コースはBLS資格不要で受講できます。
Q7. 夜勤で異常波形を見ても、医師を起こすべきか迷います
迷ったらまず先輩・夜勤リーダーに相談がベスト。一人で抱え込まないこと。

絶対に起こすべき波形:
・VF / pVT / PEA / 心静止(即コードブルー)
・III度AVブロック・症候性SVT・症候性徐脈
・R on T・連発PVC

詳しい判断基準はSBAR完全ガイドを参考にしてください。

モニター波形を「動ける」にする|学習オプション

モニター波形の判断は、シミュレーション訓練で劇的に上達します。急変対応.netの実技コースで、リズム識別と即対応を体得しましょう。
ACLS 1日コース
リズム識別が学べる
心停止リズムを集中訓練
・BLS資格不要で受講可能
・1日完結で認定取得
・全国8地域で開催
NCLSコース
看護師特化シミュレーション
・看護師特化シナリオ
・モニター判断+対応
・1,041人以上が受講
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執筆・監修

万波 大悟
MANAMI DAIGO
急変対応.net 代表 / 診療看護師(NP)
資格・肩書き
現職
診療看護師(NP)
専門資格
元 救急看護認定看護師
インストラクター
AHA-ACLSファカルティ
(提携ITC: JSISH-ITC)
学会活動
日本救急看護学会 評議員
「モニター波形は"完璧に読める"必要はありません。看護師に求められるのは、"危険な波形を見抜き、即対応できる"こと。本記事の8波形+5秒チェックリストで、明日からの現場が変わります。シミュレーション訓練でさらに磨いてください」
本記事はAHA CPR/ECCガイドライン2025、JRC蘇生ガイドライン2025、AHA ACLSプロバイダーマニュアル等に基づいて執筆しています。臨床判断にあたっては、各施設のプロトコルおよび主治医の指示に従ってください。

参考文献

・American Heart Association. 2025 Guidelines for CPR and ECC
・JRC蘇生ガイドライン2025(日本蘇生協議会)
・American Heart Association. ACLS Provider Manual
・国立循環器病研究センター. 院内心停止症例の分析(457例)
・Lown B. Lown classification of ventricular ectopic beats. Am J Cardiol
・American Association of Critical-Care Nurses (AACN). Practice Alert: Alarm Management
・The Joint Commission. Sentinel Event Alert: Medical device alarm safety in hospitals. 2013
・日本循環器学会. 不整脈薬物治療ガイドライン
・日本救急医療財団 救急蘇生法の指針
・NCLS公式テキスト(コードブルー刊)

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