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【保存版】症状別 急変対応マニュアル|胸痛・呼吸困難・意識障害他

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胸痛?呼吸困難?意識障害?——病棟で症状を見たとき、最初にすべきことは「症状名にとらわれない」ことです。症状は結果であり、その奥にある循環・呼吸・脳・代謝の異常を見抜くのが急変対応の本質です。
本記事は、看護師が病棟で出会う頻度が高い8症状の判断軸を一覧でまとめたハブ記事です。各症状の「至急報告基準」「主要鑑別」「ABCDE評価のポイント」「ピットフォール」を保存版でまとめ、より詳しい解説は個別記事(順次公開予定)でご確認いただけます。
新人看護師のスマホに保存して、病棟で症状を見たときに即引ける判断ツールとして活用してください。
30秒で分かる症状別 急変対応
📌 まず押さえる:報告には3段階ある
看護師が困るのは「報告するかどうか」ではなく、どの温度感で報告するか。本記事では報告を3段階で示します。
🚨 緊急コール 数分単位で来てほしい(今すぐ来てください) / ⚡ 早期報告 15-30分以内に診てほしい(早めに診てください) / 📋 相談・経過報告 先輩・医師に共有(相談・共有です)

共通の3ステップ:① 症状を見たらABCDEで評価(症状名で動かない)/② NEWS2で重症度を客観化/③ RSBARで報告(冒頭で温度感を伝える)
📍 本記事の位置づけ|急変対応 4ステップとの関係
本記事は、急変対応マニュアル|4ステップで読み解く保存版ガイド(察知→情報統合→判断・報告→介入)の「症状別の実践応用」です。

4ステップの中でも特にSTEP 2(情報統合)+STEP 3(判断・報告)を、8症状ごとに具体化しました。「型を学ぶならbasics、症状から判断するなら本記事」と使い分けてください。
急変対応の全体像と型を先に押さえたい方は、まずbasics記事から読むのがおすすめです。

1. 症状別アプローチの基本姿勢|症状名で動かない

「胸痛」「呼吸困難」「意識障害」——これらは症状(主訴)であって、診断ではありません。看護師が陥りやすい罠は、症状名で動こうとすること。たとえば「胸痛」と聞いた瞬間に「ACS(急性冠症候群)?」と頭が固まると、本当の鑑別(肺塞栓・大動脈解離・気胸・帯状疱疹など)を見逃します。
急変対応の基本姿勢は、「症状」より先に「ABCDE」。症状名は鑑別の手がかりに過ぎず、まずは気道・呼吸・循環・意識・体表を順に評価して、命に関わる異常を最初に拾うのが鉄則です。
症状を見たら、まずこの3つを自問する
問い①:命に関わるか?
→ ABCDEのいずれかに異常があれば、症状名より先に介入。気道閉塞・呼吸停止・脈触知不良・意識消失は別格。
問い②:いつもと違うか?
→ バイタルが正常範囲でも、悪化傾向・尿量低下・反応鈍麻・「なんか変」があれば観察強化+医師報告検討。
問い③:背景は?
→ 既往(心疾患・COPD・糖尿病)、内服(抗凝固薬・βブロッカー・ステロイド)、最近の経過(手術後・抗菌薬投与中)を踏まえて鑑別を絞る
報告には3段階ある|温度感で伝える
看護師が困るのは「報告するかどうか」ではなく、どの温度感で報告するかです。本記事では症状の所見から、報告レベルを3段階で示します。RSBAR冒頭の用件で温度感を伝えるのがコツです。
🚨 緊急コール(数分単位)|「今すぐ来てください」
意識消失・呼吸停止・心停止疑い(脈触知不良含む)
痙攣5分以上持続/反復(てんかん重積)
SBP90未満+灌流不全徴候(冷汗・末梢冷感・意識変化)
急激なSpO2低下+努力呼吸・チアノーゼ
新規胸痛+冷汗・嘔気・血圧低下(ACS・大動脈解離・肺塞栓を強く疑う)
急激な腹痛+板状硬(触れただけで強い痛み・腹部全体が硬い)・血圧低下(消化管穿孔・腹部大動脈瘤破裂)
NEWS2合計7点以上(または単一項目3点)|施設基準に従いRRT/医師へ即連絡
急激な全身状態の悪化(数分前と比べ明らかな変化)
⚡ 早期報告(15-30分以内)|「早めに診てください」
新規発症の胸痛(安定)(冷汗・血圧低下を伴わない)
呼吸苦あり・会話可能(SpO2低下+努力呼吸軽度)
頻脈/徐脈+症状あり(動悸・めまい・倦怠感)
NEWS2上昇(5-6点) / 単一項目2点
発熱+全身状態悪化(NEWS2上昇・qSOFA補助で陽性)
軽度の意識変容(GCS-1点低下・「いつもと違う」)
持続する症状(頭痛・めまい・嘔吐などが反復)
📋 相談・経過報告|「相談・共有です」
腹痛持続(バイタル安定だが訴え続いている)
食欲低下・摂取量減少
「なんかいつもと違う」(数値正常だが看護師の直感)
バイタルトレンド悪化(数時間かけてじわじわ)
尿量低下傾向(0.5mL/kg/hr未満が続く)
夜間の不眠・不穏傾向
軽度の不快感(本人の訴えあるがバイタル安定)
※ いずれも先輩・リーダーと共有するのが基本。新人ひとりの判断ではなく「○○先輩と相談した結果」を冒頭に添えると、医師の警戒も和らぎます。
心停止・呼吸停止は別格
意識なし・反応なしの場合は、10秒以内に頸動脈で脈確認。脈なし=心停止 → 胸骨圧迫が最優先。脈ありの呼吸停止 → 換気(BVM)が最優先。BLSアルゴリズムに従って動きます。

2. 8症状の判断軸 早見表

以下、緊急度の高い順に8症状の判断軸をまとめます。各症状について「至急報告基準」「主要鑑別」「ピットフォール」をコンパクトに記載。個別の深掘り記事は順次公開していきます。
バッジの見方:症状全体の最大緊急度を示します。各症状内では「🚨 緊急コール」「⚡ 早期報告」「📋 相談・経過報告」の3段階で温度感を振り分けています。
🚨 緊急コールあり = 緊急コール対象を含む症状 / ⚡ 即評価 = 評価して条件次第で緊急コール / 📋 経過観察+共有 = 観察+先輩相談+早めの医師連絡

3. 意識障害(GCS低下)|D評価・最重要

🚨 緊急コールあり
意識障害は「脳の異常」とは限らない。看護師の評価では、まず「治療可能な4大原因」(低酸素・低血圧・低血糖・高CO2)を最初に潰すのが優先順位です。GCS-2点以上低下/JCS悪化/普段と比べ明らかな反応低下があれば至急報告を検討します。血糖測定を必ず行います(分単位で介入できる原因)。COPD・肥満低換気・神経筋疾患・慢性高CO2血症リスク患者ではCO2ナルコーシスにも注意します。
🚨 緊急コール|「今すぐ来てください」
意識消失・呼吸停止 / 新規意識消失 / 瞳孔不同・対光反射消失 / 痙攣を伴う / 低血糖(BS<70)を伴う / 麻痺・構音障害(脳卒中疑い)
⚡ 早期報告|「早めに診てください」
GCS-2点以上低下 / JCS悪化 / 普段と比べ明らかな反応低下(でも会話可能) / 軽度傾眠
📋 相談・経過報告|「相談・共有です」
「いつもよりぼーっとしている」程度 / 不眠後の集中低下 / 睡眠中の覚醒不良 / バイタル安定だが反応がやや鈍い傾向
主要鑑別:低酸素・低血圧・低血糖・高CO2(4大原因)→ 脳卒中・脳症・薬剤性・代謝異常
ピットフォール:「眠そう」で済ませない / 血糖測定を必ず / 瞳孔チェックを行う / 抗凝固薬使用中なら脳出血を強く疑う

4. 呼吸困難・SpO2低下|A/B評価

🚨 緊急コールあり
呼吸困難は「SpO2の数字だけで判断しない」のが鉄則。努力呼吸・補助筋使用・会話の途切れを必ず観察します。SpO2 92%でも努力呼吸が強ければ緊急、逆に低めでも安定していれば慢性の可能性。COPD・肥満低換気・神経筋疾患など慢性高CO2血症リスク患者では、SpO2目標88-92%を目安に酸素投与を調整します。ただし重度低酸素時は酸素投与を優先し、その後速やかに再評価します(漫然と高濃度酸素を継続しないことが望まれます)。
気道狭窄の代表的なサインはstridor(吸気性喘鳴)です。喘鳴(wheeze)が呼気優位(主に下気道狭窄)なのに対し、stridorは吸気優位上気道狭窄を示唆する高調音。アナフィラキシー(喉頭浮腫)・異物・腫瘍・喉頭炎などで生じ、気道閉塞は分単位の死に直結します。stridor を聴取したらA評価(気道)を最優先に、原因に応じた緊急対応(アドレナリン筋注・気道確保準備)に動きます。
🚨 緊急コール|「今すぐ来てください」
呼吸停止 / 急激なSpO2低下+努力呼吸(ベースラインから明らかに低下) / 新規チアノーゼ / SpO2測定不能+意識低下/脈触知不良 / stridor(吸気性喘鳴)+呼吸困難(気道狭窄) / 胸痛・血痰・片側下肢腫脹を伴う(肺塞栓疑い)
⚡ 早期報告|「早めに診てください」
SpO2 90%未満で酸素投与で改善 / 患者背景・ベースラインから明らかに低下しているSpO2(COPDなど普段88-92%の患者では普段より明らかな低下) / 呼吸数25以上または8未満 / 呼吸苦あり会話可能 / 努力呼吸軽度 / 起座呼吸傾向
📋 相談・経過報告|「相談・共有です」
SpO2の経時的低下傾向(まだ閾値内) / 軽い息切れの訴え / 体動時の息切れが普段より強い / 痰増加傾向
主要鑑別:心不全 / 肺塞栓 / 気胸 / 肺炎・COPD増悪 / アナフィラキシー(喉頭浮腫・stridor) / 異物・喉頭炎(stridor) / 過換気症候群(他疾患を除外してから)
ピットフォール:SpO2の数字だけで判断しない / 過換気と決めつけない / COPD・肥満低換気・神経筋疾患など慢性高CO2血症リスク患者では漫然と高濃度酸素を継続しない(SpO2 88-92%目安) / stridor(吸気性喘鳴)を喘鳴と混同しない(上気道狭窄=気道緊急) / 呼吸様式を観る

5. ショック(血圧低下)|C評価

🚨 緊急コールあり
ショックは「血圧低下」だけでは捉えられない。組織灌流不全の状態であり、頻脈・冷汗・末梢冷感・尿量低下・意識変化などが先行することもあります。SBP90未満、または平時より20-30mmHg以上低下し、灌流不全徴候を伴う場合はショックを疑います。
🚨 緊急コール|「今すぐ来てください」
SBP90未満+灌流不全徴候(冷汗・末梢冷感・意識変化) / 脈触知不良(橈骨触れない) / 平時より20-30mmHg以上の急激な血圧低下+他兆候 / 失神を伴う低血圧
⚡ 早期報告|「早めに診てください」
SBP90-100台で頻脈・冷汗あり / 尿量低下(0.5mL/kg/hr未満) / 普段より明らかに血圧低下傾向(意識・冷汗なし)
📋 相談・経過報告|「相談・共有です」
血圧の経時的低下傾向 / 軽度の倦怠感・脱力訴え / バイタル安定だが「いつもと違う」/ 食事摂取量低下が続く
📖 詳しく学ぶ
→ ショック5分類完全ガイド(4タイプの原因・症状・初期対応・薬剤使い分け)

6. 胸痛|心血管系の決定打

⚡ 即評価
胸痛は「死につながる5つ(Killer Chest Pain)」を最初に除外するのが鉄則。ACS・大動脈解離・肺塞栓・緊張性気胸・食道破裂です。OPQRSTで問診し、ABCDEで全身評価。新規発症胸痛は速やかに12誘導心電図を取ります(モニター心電図ではST変化の判定が不十分)。女性・高齢・糖尿病ではACSが非典型的(嘔気・倦怠感のみ)に出ることもあります。
🚨 緊急コール|「今すぐ来てください」
新規発症胸痛+冷汗・嘔気・血圧低下 / 胸背部の引き裂かれる激痛(大動脈解離) / 胸痛+片側呼吸音消失(緊張性気胸) / 胸痛+片側下肢腫脹(肺塞栓) / 新規ST変化 / 左右の血圧差20mmHg以上
⚡ 早期報告|「早めに診てください」
新規発症胸痛(バイタル安定・冷汗なし) / 既往ある胸痛が普段と異なる性状 / 労作時胸痛(数分で軽快) / 軽度の胸部不快感の反復
📋 相談・経過報告|「相談・共有です」
既往ある胸痛で普段通り(短時間で消失) / 動作と関連する胸壁痛・筋肉痛 / バイタル安定だが本人が気にしている軽度の違和感
主要鑑別(Killer Chest Pain):ACS / 大動脈解離 / 肺塞栓 / 緊張性気胸 / 食道破裂 + 心膜炎・帯状疱疹・逆流性食道炎
ピットフォール:「ACS=胸痛」と決めつけない / 大動脈解離(左右血圧差) / 12誘導は速やかに / 軽快しても安心しない(トロポニン陰性確認まで)

7. 頻脈・徐脈|モニター連動

⚡ 即評価
頻脈・徐脈は「心電図モニターの数字だけで判断しない」のが鉄則。波形+脈拍触知+血圧+症状を必ずセットで評価します。波形があっても脈なし=PEA(心停止)。頻拍は「安定/不安定」で、徐脈は「症候性かどうか」で対応が分岐します。
🚨 緊急コール|「今すぐ来てください」
脈触知不良(波形あっても=PEA可能性) / 頻脈+血圧低下・冷汗 / 徐脈+意識障害・血圧低下 / 新規wide QRS頻拍 / 心停止リズム4種(VF・pVT・PEA・Asystole) / 完全房室ブロック疑い
⚡ 早期報告|「早めに診てください」
頻脈/徐脈+症状あり(動悸・めまい・倦怠感) / AF新規発症で循環安定 / 頻脈+発熱(敗血症・脱水で原因検索が必要) / 心電図変化が出現
📋 相談・経過報告|「相談・共有です」
既往あるAFで安定 / 軽い動悸の訴え(脈整・血圧安定) / アラーム頻発するが波形・症状ともに安定 / 体動関連の一過性頻脈
📖 詳しく学ぶ
→ 心電図モニター完全ガイド(モニター視点・心停止4種・症候性不整脈5種)
→ ACLS頻拍アルゴリズム(安定/不安定の判断・同期電気ショック)
→ ACLS徐脈アルゴリズム(症候性徐脈・アトロピン・ペーシング)

8. 発熱・敗血症兆候|NEWS2連動

📋 即評価
発熱は「単独の症状」ではなく「全身炎症の表現」。発熱+頻脈+呼吸数増加+意識変化があれば敗血症を疑います。NEWS2スコアで重症度を客観化し、qSOFA(意識変化・呼吸数22以上・収縮期100以下)は補助指標として活用します。「感染治療中にもかかわらず循環・呼吸・意識・尿量が悪化」している場合は、緊急コール対象です。高齢者・免疫不全では低体温(36℃未満)で敗血症を発症することもあり注意します。
🚨 緊急コール|「今すぐ来てください」
NEWS2合計7点以上(または単一項目3点)※施設基準に従いRRT/医師へ即連絡 / 感染治療中にもかかわらず循環・呼吸・意識・尿量が悪化(敗血症悪化) / 発熱+ショック前兆(SBP90未満・冷汗) / 発熱+意識変化 / 低体温(36℃未満)+全身状態悪化
⚡ 早期報告|「早めに診てください」
発熱+悪寒戦慄(菌血症の可能性) / NEWS2 5-6点 / 免疫不全患者の発熱(白血球減少・ステロイド大量・抗がん剤投与中) / 発熱+全身状態悪化 / qSOFA補助で陽性 / 解熱しないまま全身状態が悪化
📋 相談・経過報告|「相談・共有です」
微熱が続く(NEWS2低値・全身状態安定) / 解熱薬で軽快した発熱 / 体温の経時的トレンド変化 / 食欲低下のみ・倦怠感のみ
📖 詳しく学ぶ
→ 敗血症編|NEWS2活用(「なんか変」の言語化・NEWS2スコア実践・qSOFA・敗血症悪化のサイン)

9. 痙攣|D評価・特殊

⚡ 即評価
痙攣は「持続時間」と「反復」が判断の決定打。5分以上続く・反復する痙攣はてんかん重積として迅速な介入が必要です。痙攣中の対応は安全確保(無理に押さえない・口に物を入れない)・側臥位・観察記録が基本。血糖測定を必ず行います(低血糖は分単位で介入可能)。抗凝固薬使用中で頭痛先行・新規痙攣なら脳出血を強く疑います。
🚨 緊急コール|「今すぐ来てください」
5分以上の持続(てんかん重積) / 反復する痙攣(意識回復しないまま再発) / 新規発症の痙攣(既往なし) / 呼吸停止・チアノーゼを伴う / 低血糖(BS<70)を伴う / 頭部打撲・脳卒中疑いを伴う
⚡ 早期報告|「早めに診てください」
単発の短時間痙攣(数分以内に収束)+痙攣後の意識回復が悪い / 既往ある痙攣で普段より頻度・性状が異なる / 痙攣後の頭痛・嘔気持続
📋 相談・経過報告|「相談・共有です」
既往あるてんかんで普段通りの発作(短時間・意識回復良好) / 抗てんかん薬血中濃度フォロー結果 / 不眠・疲労時の前兆症状の訴え
主要鑑別:てんかん発作 / 低血糖 / 脳卒中・脳腫瘍 / 電解質異常 / 薬剤・アルコール離脱 / 失神(全身痙攣を起こすことあり)
ピットフォール:口に物を入れない(歯損傷・窒息リスクあり) / 無理に押さえない / 血糖測定を必ず / 持続時間を測る(5分基準) / 抗凝固薬使用中の見逃し

10. 腹痛|急変前兆としての腹痛

📋 早期報告検討
腹痛は「強さ」「部位」「経過」「バイタル変動を伴うか」で緊急度が分かれます。一般的には早期報告検討レベルですが、急激な腹痛+板状硬(触れただけで強い痛み・腹部全体が硬い)・血圧低下(消化管穿孔・腹部大動脈瘤破裂)は緊急コール対象です。心窩部痛=胃痛と決めつけない(下壁心筋梗塞は心窩部痛として現れる)。抗凝固薬使用中で腹痛+止血困難・出血量増加・血圧低下/頻脈・頭部打撲後を伴う出血は腹腔内出血を疑います。
🚨 緊急コール|「今すぐ来てください」
急激な腹痛+板状硬(触れただけで強い痛み・腹部全体が硬い)→ 消化管穿孔・腹膜炎 / 腹痛+血圧低下/頻脈・冷汗(出血性ショック・腹部大動脈瘤破裂) / 腹痛+タール便・吐血(消化管出血) / 失神を伴う腹痛 / 術後の急激な腹痛(吻合部破綻)
⚡ 早期報告|「早めに診てください」
腹痛+発熱(感染・敗血症の可能性) / 抗凝固薬使用中の腹痛(止血困難・出血量増加・血圧低下/頻脈・頭部打撲後を伴う) / 強い腹痛(板状硬なし・バイタル安定) / 心窩部痛(下壁心筋梗塞鑑別が必要)
📋 相談・経過報告|「相談・共有です」
腹痛持続(バイタル安定・板状硬なし) / 食欲低下・摂取量減少 / 排便状況の変化(便秘傾向・性状変化) / 軽い腹部違和感の反復
主要鑑別(部位別):右上(胆嚢炎・胆管炎) / 心窩部(膵炎・下壁心筋梗塞) / 右下(虫垂炎・尿管結石) / 全体・移動性(腸閉塞・腹膜炎・腹部大動脈瘤破裂)
ピットフォール:「ただの便秘」と決めつけない / 心窩部痛=胃痛と限らない(下壁心筋梗塞注意) / 鎮痛前にバイタル・腹部所見・医師報告を優先(鎮痛後も再評価を継続) / 腹部所見(板状硬:腹部全体が硬い・反跳痛:押して離した時に痛い)を取る / 抗凝固薬使用中の腹痛軽視に注意
📖 各症状の詳細記事を順次公開予定
各症状のOPQRST問診のコツ・SBARテンプレ詳細・症例パターン・ピットフォールなどを掘り下げる個別記事を順次公開していきます。
優先公開予定:意識障害 → 呼吸困難 → ショック → 胸痛 → 頻脈・徐脈。記事公開後はこの場所からリンクされます。

11. 迷ったら一人で抱え込まない|先輩→医師の順

ここまで8症状の判断軸を解説しましたが、「症状を見たけれど、判断に迷う」ことは新人〜中堅まで誰にでも起こります。そのときの正解は「一人で抱え込まない」こと。先輩・リーダーと共に判断するのが、過剰反応も過小反応も防ぐ最善のルートです。
エスカレーション順|3段階の温度感で
🚨 緊急コール(数分単位)|心停止・呼吸停止・SBP90未満+灌流不全・痙攣5分以上 = 医師に至急コール(「至急来てください!」)
⚡ 早期報告(15-30分以内)|新規胸痛(安定)・NEWS2上昇・呼吸苦あり会話可能 = 先輩と判断+医師に連絡(「早めに診ていただけますか?」)
📋 相談・経過報告|腹痛持続・「いつもと違う」・尿量低下傾向 = 先輩・リーダーに相談(「みにきていただけますか?」)

※ いずれの段階でも新人ひとりの判断ではなく、先輩・リーダーと共有してから動くのが基本です。
「○○先輩と相談した結果」がコールを楽にする
新人ひとりの判断ではなく先輩・リーダー判断を経由したコールは過剰報告にならない。冒頭Rで「○○先輩と相談した結果、医師に連絡しています」と添えると医師の警戒も和らぎます。
「報告しすぎ」も「報告しなさすぎ」も避ける
不要な確認コールが多すぎると、現場の認知負荷が上がります。一方で、報告が遅れて患者が悪化するのも医療安全上の問題。先輩と一緒に判断するのがベストな中間解です。急変が疑われるとき(本記事の至急報告基準に該当)は、迷わず報告してください。「報告しすぎかも」と躊躇する必要はありません。

よくある質問(FAQ)

Q1. 症状を見たとき、最初にすべきことは何ですか?
症状名で動かず、まずABCDE(気道・呼吸・循環・意識・体表)で評価することです。症状は結果であり、その奥にある循環・呼吸・脳・代謝の異常を見抜くのが急変対応の本質です。胸痛=ACSと決めつけず、肺塞栓・大動脈解離・気胸も鑑別に入れます。
Q2. 報告の温度感はどう判断しますか?(緊急コール/早期報告/相談の3段階)
看護師が困るのは「報告するかどうか」ではなく、どの温度感で報告するかです。本記事では3段階で示します。
①🚨 緊急コール(数分単位)=今すぐ来てほしい(意識消失・呼吸停止・SBP90未満+灌流不全・痙攣5分以上など)
②⚡ 早期報告(15-30分以内)=早めに診てほしい(新規胸痛で安定・SpO2低下で会話可能・NEWS2上昇など)
③📋 相談・経過報告=先輩・医師に共有(腹痛持続・「いつもと違う」・尿量低下傾向など)
RSBARの冒頭で温度感を伝えるのがコツです。「○○先輩と相談した結果」を添えると医師の警戒も和らぎます。
Q3. 意識障害でまず確認すべきことは?
低酸素・低血圧・低血糖・高CO2の4大原因を最初にチェックします。特に血糖測定は分単位で介入できる原因なので必ず測定してください。COPDなど慢性高CO2血症リスク患者ではCO2貯留(CO2ナルコーシス)にも注意。GCS-2点以上低下、JCS悪化、または普段と比べ明らかな反応低下があれば至急報告を検討します。
Q4. SpO2の数字だけで判断してはいけないのはなぜ?
SpO2が92%でも努力呼吸が強ければ緊急、逆に低めでも安定していれば慢性的な状態の可能性があります。「努力呼吸・補助筋使用・会話の途切れ」など呼吸様式を必ず観察してください。COPD・肥満低換気・神経筋疾患など慢性高CO2血症リスク患者ではSpO2目標88-92%を目安に酸素投与を調整します。ただし重度低酸素時は酸素投与を優先し、その後速やかに再評価します。
Q5. ショック前兆のサインは?
血圧低下が出る前に、頻脈・冷汗・末梢冷感・尿量低下・意識変化が先行することがあります。SBP90未満、または平時より20-30mmHg以上低下し、灌流不全徴候を伴う場合はショックを疑います。橈骨動脈の触知強度・末梢冷感・尿量を一気に評価することが重要です。
Q6. 心電図モニターで波形があるのに脈なしのことがあるのですか?
あります。PEA(Pulseless Electrical Activity:無脈性電気活動)です。波形があってもポンプ機能が破綻している状態で、心停止リズムの一つ。波形を見るときは必ず脈拍触知をセットで確認します。narrow PEA / wide PEA / brady PEAなど波形は多様で、QRSがあっても脈なしなら胸骨圧迫が最優先です。
Q7. 発熱があるとき、どのくらいで医師コールしたほうがいいですか?
発熱の絶対値より、NEWS2スコアと全身状態で判断します。NEWS2合計7点以上(または単一項目3点)では施設基準に従いRRT/医師への即連絡が望まれます。qSOFA(意識変化・呼吸数22以上・収縮期100以下)は補助指標として活用してください。特に「感染治療中にもかかわらず循環・呼吸・意識・尿量が悪化」している場合は、敗血症悪化の典型像で緊急コール対象です。
Q8. 痙攣中、何をすればいいですか?
周囲の安全確保(無理に押さえない)、②気道確保(側臥位・口に物を入れない)、③観察記録(開始時刻・持続時間・型・痙攣後の意識回復)、④酸素投与(SpO2低下時)、⑤血糖測定(低血糖は即介入可能)、⑥5分以上続く・反復は緊急報告。バイトブロックは禁忌です。

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この記事を書いた人

万波 大悟(MANAMI DAIGO)
急変対応.net 代表
現職
診療看護師(NP)
専門資格
元 救急看護認定看護師
インストラクター
AHA-ACLSファカルティ
(提携ITC: JSISH-ITC)
学会活動
日本救急看護学会 評議員

参考文献

1. American Heart Association. 2025 Guidelines for CPR and Emergency Cardiovascular Care. Circulation. 2025;152(suppl 2). |心停止アルゴリズム
2. Resuscitation Council UK. The ABCDE Approach. |ABCDEアプローチの公式ガイダンス
3. Royal College of Physicians. National Early Warning Score (NEWS) 2. RCP London, 2017. |NEWS2の公式ガイダンス
4. Singer M, Deutschman CS, Seymour CW, et al. The Third International Consensus Definitions for Sepsis and Septic Shock (Sepsis-3). JAMA. 2016;315(8):801-810. |敗血症診断基準
5. Evans L, Rhodes A, Alhazzani W, et al. Surviving Sepsis Campaign: International Guidelines for Management of Sepsis and Septic Shock 2021. Crit Care Med. 2021;49(11):e1063-e1143. |敗血症ガイドライン
6. 日本集中治療医学会・日本救急医学会. 日本版敗血症診療ガイドライン 2024(J-SSCG2024). |国内敗血症ガイドライン
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14. 日本蘇生協議会(JRC). JRC蘇生ガイドライン2025. |国内BLS・ACLSガイドライン
15. 日本救急看護学会編. 救急看護ガイドブック. へるす出版. |国内の標準的ガイド
症状名で動かず、ABCDEで動こう。
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個別症状の深掘り記事(意識障害・呼吸困難・ショック・胸痛など)も順次公開していきます。

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