看護師のための「NCLS」とは?
BLS・ACLSとの違いや特徴を解説!
病院内の急変時、私たち看護師に求められるのは迅速で的確な対応です。そんなときに役立つのが、NCLS(Nursing Cardiac Life Support)です。
この記事の結論(30秒でわかる)
- NCLS(Nursing Cardiac Life Support) は、看護師のために設計された新しい急変対応コース
- ACLS/ICLSとの最大の違い:心停止"後"だけでなく「心停止の予防(Prevention)」に重点
- 看護師の業務(観察・報告(ISBAR)・記録・家族対応)を網羅
- 2年間の復習参加可、BLS代替として認める病院も
- BLSしか受けたことがない看護師の次のステップとして最適
この記事でわかること
- NCLSの定義・内容・他コースとの違い
- ACLS・ICLS・NCLSの比較表
- 目的別「どれを受けるべきか」の選び方
- NCLSの独自性(予防アプローチ)と学べるスキル
NCLSとは?

NCLSは、看護師向けに設計された救命対応の実践プログラムです。ERや病棟、ICUなどでの急変対応において、看護師が「動ける」スキルを身につけることを目的としています。
こんな方におすすめ!
- 急変対応に自信がない
- BLSは学んだけど現場では不安
- ACLSは医師向けで敷居が高い
- 看護師としての判断や行動を学びたい
BLS・ACLSとの違いは?
院内BLS研修はCPRとAEDにフォーカスがあたっており教習所や市民向けのBLS講習と同レベルのものが専門職である看護師に実施されているケースがあります。院内の急変対応にマッチしておらず、薬剤や気管挿管の介助、チームで動く場面を想定しておらず、現場では役立ちにくいです。通常、初学者である新人や急変対応に経験のない看護師に対して急変対応の研修をした場合、「難しい」と感じるのが普通です。難しいと感じなかったのであれば、それは市民向け教育のBLSと変わらなかった可能性を疑いましょう。
一方、二次救命処置としてはACLSコースやICLSがあります。どちらも二次救命処置まで含んだ内容となります。NCLSとの違いを簡単にお伝えするなら看護師の業務にフォーカスがあたっているかという点に違いがあります。NCLSもACLSやICLS同様、二次救命処置で必要なアルゴリズムを含みますが、看護師の視点にフォーカスが当てられていますので臨床に繋げやすい工夫がされています。また心停止だけではなく、呼吸停止やショックなど心停止に至る手前の状態もシミュレーションで学べるのが特徴です。
BLS・ACLS・ICLSとの違いは?
それぞれのコースの特徴を、1つの表で整理しました。
院内BLS研修は、市民向けBLS講習と同レベルで実施されていることもあり、薬剤対応やチーム動作を含まないため専門職としては物足りないケースが散見されます。一方、ACLSやICLSは二次救命処置のトレーニングとして優秀ですが、「医師の補助」視点になりがちです。
NCLSは、看護師が主役となる場面に徹底的にフォーカスしているのが最大の違いです。
| 項目 | 院内BLS研修 | ACLS | ICLS | NCLS |
|---|---|---|---|---|
| 主催 | 各病院 | AHA(アメリカ心臓協会)ほか | 日本救急医学会 | コードブルー |
| 対象 | 一般・全医療従事者 | 医師・救急/ICU看護師 | 全医療従事者 | すべての看護師 |
| 内容 | 胸骨圧迫・AEDに特化 | 心停止+徐脈/頻拍も含む二次救命処置 | 最初の10分間のチーム蘇生 | 心停止の予防+急変対応(看護師業務にフォーカス) |
| 難易度 | ★☆☆ | ★★★ | ★★☆ | ★☆☆〜★★★(受講者に応じて調整) |
| 強み | 基礎のBLS | 循環器内科・麻酔科専門医試験の条件 | チーム蘇生の基礎固め | 看護師の判断・動きが学べる |
それぞれのコースを詳しく知る
ACLS:世界基準の「蘇生アルゴリズム」を目指すなら
ACLS(Advanced Cardiovascular Life Support) は、AHAが提供する世界標準の二次救命処置コースです。
- 特徴:心停止だけでなく、徐脈・頻脈などの「心停止前」の状態への薬物療法や、高度な気道管理を学ぶ
- 看護師のメリット:医師が何を考え、次にどの指示を出すかを先読みできるようになる。ICU・救急外来・HCUで重宝される
- 看護師のデメリット:心原性心停止(VF/pVT)に偏り気味、医師中心で緊張する場面もある、受講料が高め
ICLS:日本独自の「チーム蘇生」の基本
ICLS(Immediate Cardiac Life Support) は、日本救急医学会が策定したプログラムです。
- 特徴:突然の心停止に対して、最初の10分間に「チームでどう動くか」に特化
- 看護師のメリット:胸骨圧迫・BVM換気・AED/除細動器の使い方を徹底的に叩き込む。一般病棟の看護師が最初に受けるコースとして人気
- 看護師のデメリット:心停止ありきで始まるため、徴候察知や予防の視点は弱い。アルゴリズムの暗記に留まりがち
NCLS:看護師の「日常業務」に最も近い新基準
NCLS(Nursing Cardiac Life Support) は、「看護師が、看護師のために、看護の実践に即して」作られた新しいコース。
他の2つとの最大の違いは、看護師が現場で実際にやる仕事に焦点を当てていることです。
NCLSで学べる内容
- 患者を評価するABCDEアプローチ(フィジカルアセスメント)
- 心停止時の心電図(VF、pVT、PEAなど)の判読と対応
- 5H5T(心停止の原因)への対処
- ROSC後のケア(酸素・血圧・体温管理)
- SAMPLE / OPQRST を含めた緊急度の判断(下記画像)

NCLSの最大の独自性:心停止を「防ぐ」
ACLSやICLSは、基本的に「心臓が止まった後」の対応がメインです。しかしNCLSは、「心停止の予防(Prevention)」 にも大きな重点を置いています。
1. 急変の徴候に気づく力
「なんか患者さんの様子がおかしい」―
―看護師の直感を言語化し、徐々に/急激に心停止へ向かう過程を学びます。
- バイタルサインのわずかな変化を読む
- 「ROSC手前」「ショックになる前」の対応
- 早期警告スコア(NEWSなど)の活用
2. 看護師特有の業務を網羅
蘇生処置そのものだけでなく、看護師が現場で動かなければならない項目を体系的に学べます。
- ISBAR(医師への報告の型)
- 急変時のリーダーシップと役割分担
- 記録の取り方(時系列で何が起きたか)
- 家族への対応・声かけ
- 救急カートの使い方、必要物品の準備
このような「止まってからの対応」ではなく、「心停止にさせない」ための看護師ならではの視点が、NCLSの最大の価値です。
あなたはどれを選ぶ?目的別の選び方
どのコースを受けるか迷ったら、「自分が何を身につけたいか」で選ぶのがおすすめです。
| 目指したいこと | おすすめ |
|---|---|
| 急変の徴候に気づき、看護師の視点で急変を学びたい | ✅ NCLS |
| 心停止だけでなく徐脈・頻拍の心電図も学びたい | ✅ ACLS |
| チーム蘇生の基本をまず身につけたい | ✅ ICLS |
| 最低限のAED・CPRだけ再確認したい | BLS |
看護師として急変対応力を総合的に高めたい場合は、次の順序がおすすめです。
- NCLS(予防〜初期対応まで、看護師視点)
- ACLS(二次救命処置の深堀り)
- 復習参加で定期的にブラッシュアップ
修了後には?
修了者には修了証が発行され、急変対応力の証明としてキャリアアップに活用できます。一部の病院では定期的に義務付けられているBLS研修の履修条件としてNCLSでも代替可としてくれています。2年間は復習参加として何回でも研修に参加できますので急変対応スキルの維持・向上に役立てられます。
まとめ
NCLSは、「そのとき看護師がどう動くか」を明確にするための学びです。チームの中で確実に動けるようになりたい方は、ぜひ受講を検討してみてください!

よくある質問(FAQ)
Q1. NCLSとは何の略ですか?
Nursing Cardiac Life Support の略で、「看護師のための急変対応コース」という意味です。従来の BLS/ACLS/ICLS とは違い、看護師の業務内容にフォーカスして設計された新しい急変対応プログラムです。
Q2. NCLSとBLS(院内研修)の違いは何ですか?
院内BLS研修は、胸骨圧迫とAEDの使い方が中心で、市民向け講習と同レベルのことが多いです。NCLSは薬剤対応、チーム連携、ISBAR報告、家族対応など、看護師が実際に現場で動く領域を包括的に学べます。
Q3. NCLSとACLS、どちらを先に受けるべきですか?
まずNCLSから、次にACLSがおすすめです。NCLSで「看護師としての動き方」と「予防の視点」を身につけてから、ACLSで二次救命処置のアルゴリズムを学ぶ方が、臨床での実用性が圧倒的に高まります。
Q4. NCLSはBLS資格の代わりになりますか?
施設によって異なりますが、一部の病院ではNCLS修了をBLS研修の代替として認めています。受講前に所属施設の担当者に確認してみてください。
Q5. 新人看護師でもNCLSを受けられますか?
受けられます。NCLSは受講者のレベルに応じて難易度を調整してくれるため、新人〜ベテランまで幅広く対応しています。むしろ新人のうちに受講すると、早期から現場でのアセスメント力が鍛えられるのでおすすめです。
Q6. NCLS修了証はどのくらい有効ですか?
修了証に有効期限はありませんが、2年間は「復習参加」として何度でも研修に参加可能です。スキル維持のために定期的に復習するのが推奨されます。
Q7. NCLSはどこで受講できますか?
現在、全国各地で定期開催されています。最新の開催情報はNCLS公式サイトでご確認ください。オンラインでの事前学習+実技の組み合わせ形式で運営されています。
参考情報
- NCLS公式サイト — 開催情報・受講申込
- NCLS公式テキスト — 書籍版
- American Heart Association. ACLS Provider Manual.
- 日本救急医学会 ICLS コース公式サイト
執筆・監修
急変対応.net
万波 大悟(MANAMI DAIGO)
経歴資格
□ 診療看護師(NP)
□ 元救急看護認定看護師
□ AHA-ACLSファカルティ
(提携ITC:JSISH-ITC)
□ 救急看護学会 評議員
本記事は急変対応.net がNCLS運営団体「コードブルー」と連携して執筆しています。
臨床判断にあたっては各施設のプロトコルに従ってください。