ACLS(二次救命処置)のプロバイダーコースを受講する際、最大の壁となるのが「心停止アルゴリズム」の暗記です。
あの複雑なフローチャートを丸暗記しようとすると、いざ現場(や実技試験)で頭が真っ白になってしまいます。
今回は、最新のAHAガイドライン(G2025)に基づき、2025年の臨床現場やコースで求められる対応を整理しました。 アルゴリズムを「2つのルート」に分解して解説します。
ここさえ押さえておけば、メガコード(実技試験)も怖くありません!

1. 全体像:「左」に行くか、「右」に行くか
心停止の対応は、モニター心電図の波形を見た瞬間に、以下の2つのルートに分かれます。
- 左のルート(Shockable Rhythm):
- VF(心室細動) / pVT(無脈性心室頻拍)
- 対応: 電気ショック(除細動)が必要!
- 右のルート(Non-Shockable Rhythm):
- PEA(無脈性電気活動) / Asystole(心静止)
- 対応: 電気ショックは不要! できる限り早くアドレナリンの投与!
まずは「ショック適応か、そうでないか」の判断がすべてのスタートです。

※日本語訳はG2020です。あまり大きな変更点はありません。
2. 左のルート:VF / pVT の対応(電気ショック)
電気ショックが効く波形です。「ショック → CPR → 薬」のサイクルを繰り返します。
黄金のサイクル
- ショック(除細動)実施
- 二相性なら推奨エネルギー(例:150Jや200J)、わからなければ最大エネルギーで。
- 直ちにCPR再開(2分間)
- ショック直後に脈の確認はしません!すぐに胸骨圧迫です。
- リズムチェック(2分後)
- まだVFなら、再度ショック。
推奨ジュールは画像の"150"とオレンジマークがついてる部分です。

薬剤投与のタイミング(重要!)
VF/pVTでは、薬を入れるタイミングが決まっています。
- アドレナリン(1mg):
- 2回目のショックの後、CPR中に投与。
- 以後、3〜5分ごと(2ループに1回)繰り返し。
- 抗不整脈薬(アミオダロン or リドカイン):
- 3回目のショックの後、CPR中に投与。
- アミオダロン: 初回300mg(ボーラス)、2回目150mg。
- リドカイン: 初回1〜1.5mg/kg、2回目0.5〜0.75mg/kg。
2回目のショック施行後、CPRをしている2分間の中で"アドレナリンの投与"です。
優先されるのは電気ショック!
間違いないように
「ショック、ショック、アドレナリン、ショック、アミオダロン」のリズムで覚えましょう。
【現場の鉄則】救急カートの「アドレナリン」を確認せよ!
心停止時に使用する第一選択薬はアドレナリン(商品名:ボスミンなど)です。 アルゴリズムを覚えるだけでなく、「自分の病棟の救急カートにどのタイプが入っているか」を必ず確認しておきましょう。
- 使うのは「1mg/1mL」製剤
心停止時は、1回 1mgを投与します。
一般的に救急カートに入っているのは以下のどちらか(あるいは両方)です。救急カート内に入ってるアドレナリン(ボスミン)のタイプは確認しておこう ✅️ アンプルタイプ(ボスミン注 1mg など):
茶色の遮光アンプルに入っていることが多いです。
注意点: 焦ってアンプルカットで指を切らないように! シリンジに吸う手間(数秒)がかかります。
✅️ プレフィルドシリンジタイプ(アドレナリンシリンジ「オーツカ」など):
最初からシリンジに薬剤が入っています。
注意点: キャップを外して接続するだけなので最速ですが、コストが高いため採用していない病院もあります。
【新人さんへのミッション】
次の出勤で、救急カートの引き出しを開けて「うちはアンプルか? シリンジか?」を目視確認してください。いざという時の「手触り」をイメージしておくことが大切です。
- 投与の「3点セット」を体に叩き込む
心停止時の静脈路投与(IV)には、絶対的なお作法があります。
これをやらないと、薬が心臓まで届きません。✅️急速静注(IV push):
1mgを勢いよく入れます。
✅️後押し洗浄(Flush):
生理食塩液 20mL でルートを一気に流します。(※薬剤がルート内に残るのを防ぐため)
✅️上肢の挙上(Elevation):
投与した腕を高く上げます。(※重力を使って心臓へ流し込むため)
※あまりやっているのは見たことありません。。。「3〜5分ごと」って結局いつ? 現場で推奨される管理法
アドレナリンの投与間隔は、ガイドラインでは**「3〜5分ごとに反復投与」**とされています。 しかし、現場で「3〜5分」という幅を持たせると、タイムキーパーは悩みますよね。
実は、施設やリーダーの方針によって、大きく2つの管理パターンが存在します。
パターンA:きっちり「3分」管理
- 方法: 薬剤投与専用のタイマーを用意し、3分経つごとに投与する。
- メリット: 頻回に投与できる(薬剤の血中濃度を保ちやすい)。
- デメリット: 「リズムチェック(2分)」と「薬剤(3分)」のタイマーがズレて鳴るため、現場が混乱しやすい。
パターンB:リズムチェックに合わせた「4分(2ループ)」管理
★推奨
- 方法: リズムチェック(2分)を2回行うごとに投与する(2分×2回=4分)。
- メリット: リズムチェックのタイミングと同期するため、タイマーが1つで済み、シンプルでミスが少ない。
- デメリット: 特になし(3〜5分の範囲内に収まっているため許容内)。
個人的には、**「4分間隔(2ループに1回)」**の方が、計算がシンプルでチームの混乱が少ないためおすすめです。
【現場のコツ】 蘇生開始時に、リーダーまたはタイムキーパーが**「アドレナリンは2ループ(4分)ごとに評価して投与します」**と宣言しておくと、チーム全員が共通認識を持てます。
【超重要】タイマーが鳴っても「即投与」は絶対ダメ!
ここで、シミュレーションでも臨床でもよくある危険な間違いがあります。
× 間違い タイマーがピピピと鳴った瞬間、「はい時間です!」と反射的にアドレナリンを静注してしまう。
なぜダメなのか? もし、その直前のリズムチェックで心拍再開(ROSC)していたらどうなるでしょうか? 心臓が動き出しているのに、大量のアドレナリン(1mg)を急速静注することになり、過剰な負荷をかけてしまいます。
〇 正しい手順
- リズムチェックの時間が来る(タイマーが鳴る)。
- 波形を確認し、脈がないことを確認(心停止の継続)。
- CPR(胸骨圧迫)を再開する。
- その後に、アドレナリンを投与する。
「4分間隔」というのは、あくまで**「心停止が継続していたら投与する」という意味です。 秒単位で厳密に管理する必要はありません。焦らず「評価(リズムチェック)→ 再開 → 投与」**の順序を守ってください。
※アドレナリンの薬理作用や効果についてさらに詳しく知りたい方は、[こちらの記事]を参考にしてください。
蘇生時に使うアドレナリンの効果
3. 右のルート:PEA / Asystole の対応(電気不要)
電気ショックは効果がありません。ここでの主役は「質の高いCPR」と「早期の薬剤投与」です。
とにかく「アドレナリン」を早く!
現在のガイドラインで最も強調されているポイントがここです。
- ショック適応外(PEA/心静止)と判断したら、可能な限り「早急に」アドレナリンを投与する。
VFの時のように「2回目のショックの後…」などと待ってはいけません。ルートが取れ次第、即投与です。
サイクル
- CPR(2分間)
- アドレナリン投与(3〜5分ごと)
- リズムチェック
- もしVF/pVTに変化したら? → 「左のルート」へ移動(ショック準備)!
- 変化なければ? → CPR継続 + 原因検索(5H5T)。
※関連記事: PEAの原因「5H5T」の詳細は[こちらの記事]をご覧ください。
4. 共通項目:質の高いCPR(High-Quality CPR)
どの波形であっても、蘇生のベースとなるのはCPRです。ここが疎かだと薬も効きません。
- 深さ: 5cm以上
- 速さ: 100〜120回/分
- リコイル: 圧迫解除を完全に(胸をしっかり戻す)
- 中断: 最小限にする(10秒以内!)
- 換気: 過換気を避ける(30:2、挿管後は6秒に1回)
「EtCO2(呼気終末二酸化炭素分圧)」を監視しましょう!
- EtCO2が10mmHg未満の場合:CPRの質が悪い可能性あり。もっと強く深く!
- EtCO2が急に40mmHg以上に上昇:心拍再開(ROSC)のサインかも!
まとめ:アルゴリズム暗記のコツ
- まず「左(ショック)」か「右(薬)」かを見極める。
- 左(VF/pVT)なら: ショック優先。薬は2回目・3回目のショック後。
- 右(PEA/Asystole)なら: アドレナリン最優先(即入れる)。
- 共通: 絶え間ないCPRと、コミュニケーション。
この基本骨格さえ頭に入っていれば、2025年のコース受講も現場対応も余裕を持って行えます。頑張ってください!
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