アレストです!!
先生呼んで!
はじめに
臨床の急変場面では、「アレスト!」という言葉をよく耳にします。
これは心停止を意味する英語 Cardiac Arrest を略した表現です。
しかし、心停止を発見した際に、「アレスト」というだけでなく、モニターに表示される心電図のリズム、例えば「心静止(Asystole:エイシストリー)」と正確に表現することが重要な場合があります。
理由は、心停止には「心静止」だけでなく、電気ショックが適応となる心リズムも含まれており、それぞれで適切な蘇生手順が異なるからです。
「アレスト!」とだけ表現するのではなく、後述する4つの心リズムのいずれかで共有する方が、医療チーム内での共通認識が生まれ、迅速かつ的確な対応につながります。
以下では、心停止と心静止の違いについて詳しく解説します。
心停止 (Cardiac Arrest) に含まれる心リズム
心停止は以下の4つの心電図リズム(状態)を含む総称です。
大きく分けると、電気ショックが適応となるリズムと適応とならないリズムに分類されます。
- 電気ショック適応: 心室細動 (VF)、無脈性心室頻拍 (pVT)
- 電気ショック非適応: 無脈性電気活動 (PEA)、心静止 (Asystole)
いずれのリズムも、時間が経過すれば心静止(Asystole)に移行します。
そのため、心停止時の初期対応が患者の予後を大きく左右します。
各心リズムの特徴
1. 心静止 (Asystole)
- 定義: 心臓の電気的活動が完全に停止した状態
- 特徴: 心電図は直線的で、電気的活動が一切記録されない
- 対応:
- 胸骨圧迫(CPR)と人工呼吸で心筋への酸素供給を継続
- 早期にアドレナリン投与
- 除細動(電気ショック)は適応外
- 予後: 最も予後が悪い心リズム
2. 無脈性電気活動 (Pulseless Electrical Activity, PEA)
- 定義: 心電図には電気的活動があるが、超低血圧な状態
- 特徴: リズムはあるが"脈拍"が触知できない。
血圧の維持できていないので"無脈性"心室頻拍(pVT)と呼ばれ心停止に分類される。 - 対応:
- 胸骨圧迫(CPR)とアドレナリンの早期投与
- 除細動は適応外
- 注意点: PEAは短時間で心静止に移行するため、早期発見が重要。PEAの判断は脈の触知をしない限り分からないので、認知できないと心静止(Asystole)からCPRが始まってしまうケースが散見される。
3. 心室細動 (Ventricular Fibrillation, VF)
- 定義: 心室が速く不規則に収縮し、血液を送り出せない状態
- 特徴: 心電図にて波形が極めて不規則
- 対応:
- 直ちに除細動(電気ショック)が必要
早期にしないとエネルギー切れで心静止に至ります。 - CPRを併用しながら、血管収縮薬や抗不整脈薬を検討する。
- 直ちに除細動(電気ショック)が必要
- 発生頻度: 院内心停止の20%程度で発生
4. 無脈性心室頻拍 (Pulseless Ventricular Tachycardia, pVT)
- 定義: 心室が高速で拍動し、血液を送り出せない状態
- 特徴: 心電図にて規則的なwide QRS
- 対応:
- 除細動(電気ショック)が適応!
早期にしないとエネルギー切れで心静止に至ります。 - CPRを併用しながら、血管収縮薬や抗不整脈薬を検討する。
- 除細動(電気ショック)が適応!
まとめ
心停止 (Cardiac Arrest) は、心肺停止状態の総称であり、心室細動(VF)や無脈性心室頻拍(pVT)、無脈性電気活動(PEA)、心静止(Asystole)を含みます。 心静止 (Asystole) は、心臓の電気的活動が完全に停止した状態で、心電図上で一切の心拍が認められない状態です。これは、心停止の中でも最も最終形態で予後の悪い心リズムです。
心停止と心静止の違い
項目 | 心停止 (Cardiac Arrest) | 心静止 (Asystole) |
---|---|---|
定義 | 心停止の総称 | 心臓の電気的活動が完全に停止した状態 |
含まれるリズム | VF, pVT, PEA, Asystole | 心停止の中の1リズム |
除細動の適応 | VF/pVTでは適応、 PEA/Asystoleでは適応外 | 適応外 |