この記事の結論(30秒)
・急変が怖いのは、あなたの能力不足ではない
・怖さの正体は教育と臨床の圧倒的なミスマッチ
・院内急変の44%はPEA・89%はモニター装着済み(国循データ)
・AEDは必要だが、教育のウェイトが臨床とズレている
・必要なのは「手順」ではなく「判断の物差し」
この記事でわかること
・院内急変の「残酷なリアル」をデータで理解
・BLS研修が臨床で役に立ちにくい理由
・「手順」の先にある「判断」を身につける方法
・怖さを「確信」に変える4つの改善ポイント
・BLS研修が臨床で役に立ちにくい理由
・「手順」の先にある「判断」を身につける方法
・怖さを「確信」に変える4つの改善ポイント
こんな経験ありませんか?
・「BLSの研修は受けた...なのに、いざ急変に立ち会うと体が動かない」
・「新人だから仕方ない」と言われたが、何年目になっても不安が消えない
・AED使用の練習はたくさんしたが、実際の病棟では使う場面がほぼない
・モニターを見ても「次に何をすればいいか」がわからない
・「新人だから仕方ない」と言われたが、何年目になっても不安が消えない
・AED使用の練習はたくさんしたが、実際の病棟では使う場面がほぼない
・モニターを見ても「次に何をすればいいか」がわからない
救急看護認定看護師、診療看護師(NP)として多くの現場を見てきましたが、この「恐怖」の正体は、個人の能力不足ではなく、「教育と臨床の圧倒的なミスマッチ」にあります。
まずは、私たちが直視すべき「院内急変のリアル」をデータで紐解いてみましょう。
まずは、私たちが直視すべき「院内急変のリアル」をデータで紐解いてみましょう。
Contents
データが示す、院内急変の「残酷なリアル」
国立循環器病研究センターの調査(457例の院内心停止を分析)によると、院内での心停止には、街中での救命とは全く異なる特徴があります。
国立循環器病研究センター(2006年12月〜2015年3月・457例)
・PEA(無脈性電気活動)が最多 → 203例(44%)※電気ショック適応外
・心室細動(VF) → 91例(20%)
・心室頻拍(pVT) → 77例(16%)
・VF/pVT合わせて電気ショック"適応"調律は36%
・心室細動(VF) → 91例(20%)
・心室頻拍(pVT) → 77例(16%)
・VF/pVT合わせて電気ショック"適応"調律は36%
① ほとんどの患者は「モニター装着済み」
院内で心停止が起きた際、実に89%の症例ですでに心電図モニターが装着されていました。
つまり、AEDを持ってきて貼り付ける必要はない状況がほとんど。すでにモニターで波形が見えているのです。
つまり、AEDを持ってきて貼り付ける必要はない状況がほとんど。すでにモニターで波形が見えているのです。
② 8割は「ショック不要」の波形
さらに、心停止時の波形の内訳を見てみましょう。
44%
PEA
無脈性電気活動
無脈性電気活動
約20%
心静止
Asystole
Asystole
36%
VF/VT
除細動適応
除細動適応
病院内での心停止は、呼吸不全や循環不全、代謝異常などが原因で「徐々に悪化して止まる」ケースが多いため、電気ショックが効かない波形(PEA/心静止)が圧倒的に多いのです。
それでも「AED(除細動)」は絶対に必要。だけど…
ここで勘違いしてはいけないのが、「だからAEDはいらない」ということでは決してない、ということです。
VF/VTには除細動が唯一の決定打
VF/VT(心室細動・無脈性心室頻拍)という「救える可能性が高い波形」に対して、唯一の決定打となるのは除細動です。
この36%の患者さんを救うために、除細動のスキルは絶対に欠かせません。
この36%の患者さんを救うために、除細動のスキルは絶対に欠かせません。
問題は、教育の「ウェイト」です。
今のBLS研修の問題点
今のBLS研修は、この「36%のケース」に対して「AED(機械)の指示を待つ」訓練に特化しすぎてはいないでしょうか。
残りの6割以上のケース(PEA/心静止)や、すでにモニターがついている9割の現場で、どう振る舞うべきかの教育が抜け落ちているのです。
残りの6割以上のケース(PEA/心静止)や、すでにモニターがついている9割の現場で、どう振る舞うべきかの教育が抜け落ちているのです。
※循環器病院ではない場合はモニター装着率は下がります。このあたりはご自身の状況で考えてみてください。
「手順」は知っていても「判断」ができない理由
従来のBLS教育は、いわば「点」の教育です。
「反応がなければ呼ぶ」「圧迫する」「AEDを使う」という手順(ドット)を教わります。
しかし、臨床で求められるのは、波形や状況から次のアクションを導き出す「線」の判断です。
「反応がなければ呼ぶ」「圧迫する」「AEDを使う」という手順(ドット)を教わります。
しかし、臨床で求められるのは、波形や状況から次のアクションを導き出す「線」の判断です。
臨床で求められる「線」の判断 例
「モニター波形がPEAだ。
AEDの解析を待つ必要はない。
絶え間ないCPRを続けながら、
すぐに原因検索とアドレナリン投与の準備にかかろう」
AEDの解析を待つ必要はない。
絶え間ないCPRを続けながら、
すぐに原因検索とアドレナリン投与の準備にかかろう」
— まなみ
「判断力」を育てるために必要なこと
この判断ができるようになるためには、AEDの使い方を練習するだけでは不十分です。
「目の前のモニター波形を見て、次に何が起きるかを予測する力」、つまりALS(二次救命処置)の視点を持ち合わせたトレーニングが必要なのです。
「目の前のモニター波形を見て、次に何が起きるかを予測する力」、つまりALS(二次救命処置)の視点を持ち合わせたトレーニングが必要なのです。
教育と現場のギャップ
従来BLS研修のルール
・反応なし→応援要請
・CPR開始
・AED持ってきて
・AEDの音声ガイドに従う
・ショック or CPR継続
・CPR開始
・AED持ってきて
・AEDの音声ガイドに従う
・ショック or CPR継続
実際の院内現場
・すでにモニター装着済み
・波形はPEAがほとんど
・AEDは不要な場面が多い
・CPR+原因検索+薬剤準備
・医師到着後のチーム対応
・波形はPEAがほとんど
・AEDは不要な場面が多い
・CPR+原因検索+薬剤準備
・医師到着後のチーム対応
これだけ前提が違うのに、私たちは右側の現場で、左側のルールしか教わっていないのでフリーズしてしまうのです。
教育を「臨床」に引き寄せるために
「新人だから、まずは市民向けと同じBLSから」
その配慮が、逆に現場でのフリーズを招いています。BLSとALSの境目は本来ありませんので、本当に現場で動ける看護師を育てるためには、最初から「臨床」に即した形に変えるべきです。
その配慮が、逆に現場でのフリーズを招いています。BLSとALSの境目は本来ありませんので、本当に現場で動ける看護師を育てるためには、最初から「臨床」に即した形に変えるべきです。
① シナリオにバリエーションを
心停止ありきで教育するのではなく、心停止かどうかの判断や呼吸停止の場合、話している患者が突然...といったバリエーションを付ける
②「AED」の前に「モニター波形」で判断する
音声ガイドを待つのではなく、自ら波形を見て「ショックが必要か、不要か」を判断する訓練
③「救急カート」を訓練に組み込む
CPRをしながら、次に必要になる薬剤や物品を迷わず準備する訓練
④「なぜ怖いのか」を言語化する
恐怖の正体は「未知」。やることが分かり、予測できれば、恐怖は「確信を持った判断」へと変わります
最後に|怖いままでも、動けるようになれる
急変対応が怖いのは、あなたが看護師として不適格だからではありません。今の教育システムが、病院のリアルに追いついていないだけです。
AEDという「強力な武器」の使い時を知ると同時に、それ以外の8割の状況で何ができるかを知ること。
「手順」の先にある「判断の物差し」を身につけることが、自分自身を、そして何より患者さんを救う力になります。
「判断力」を鍛える学習コース
「手順」の先の「判断の物差し」を身につけるには、シミュレーションでの反復練習が不可欠です。急変対応.netでは、目的別に選べる4つの学習オプションを提供しています。
もっと急変対応を学びたい方へ
急変対応.netでは、新人看護師〜指導者まで目的別に厳選した42記事以上を「急変対応マニュアル」として整理しています。敗血症・ショック・ABCDE・救急カート・心停止対応など、看護師が現場で使える急変対応の知識を体系的に学べます。
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急変対応が「怖い」を卒業する
看護師が知っておくべき優先順位と克服のコツ
執筆・監修
万波 大悟
MANAMI DAIGO
急変対応.net 代表
経歴・資格
現職
診療看護師(NP)
専門資格
元 救急看護認定看護師
インストラクター
AHA-ACLSファカルティ
(提携ITC: JSISH-ITC)
(提携ITC: JSISH-ITC)
学会活動
救急看護学会 評議員
参考文献
・国立循環器病研究センター. 院内心停止(IHCA)の現状分析. 日本心臓血管外科学会雑誌. 2015
・American Heart Association. 2025 Guidelines for CPR and ECC. 2025
・Japan Resuscitation Council. JRC蘇生ガイドライン2025
・J-Stage: 院内心停止の現状と特徴
・American Heart Association. 2025 Guidelines for CPR and ECC. 2025
・Japan Resuscitation Council. JRC蘇生ガイドライン2025
・J-Stage: 院内心停止の現状と特徴