急変対応マニュアル

リズムチェックの落とし穴:モニターだけ見て“戻った?”は危険

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はじめに:現場で一番多い“ズレ”

蘇生中2分ごとにリズムチェック。リズムチェックで、画面に整った波形が出る。

その瞬間に出るセリフがこれです。

  • 「(モニターだけ見て)脈出てます!」
  • 「戻ったか」

ここが危険です。
波形が整っても、脈があるとは限りません。 PEA(無脈性電気活動)は、「心リズムはあるけど超低血圧な」状態です。だから“モニターだけ”でROSC判断はできません。

脈とリズムが慣習的にごちゃごちゃなっていますので注意が必要です。


リズムチェックの目的は2つだけ

リズムチェックでやることは、基本的に次の2つです。

  1. ショックするか(VF/pVTか)を決める
  2. ROSCのサインがあるかを見極める(ただし止める時間は最小)

この「止める時間は最小」が最重要。
ILCORは、胸骨圧迫を2分ごとに一時停止してリズム評価することを提案しつつ、停止の影響や中断最小化の重要性を繰り返し述べています。 


落とし穴①:モニター波形=ROSC と誤認する(PEAを見逃す)

“整った波形”が出ても、以下のどれかならROSCではなくPEAです。

  • 触知できる脈がない
  • 血圧波形がない
  • 患者の反応・呼吸が戻らない

リズムチェック中の脈確認は10秒以内、そしてはっきり脈を触れなければ直ちに胸骨圧迫再開が推奨されています。 

現場ルール:
「脈が“確実に”あると言えないなら、PEAとして扱って心マ再開」


落とし穴②:リズムチェックが“長い”

中断が長くなる典型パターンはこれです。

  • 「これなんの波形?」議論が始まる
  • 脈を探し続ける(10秒を超える)
  • 充電してない/パッドが剥がれている/操作に慣れていない

胸骨圧迫の中断は、胸骨圧迫率(CCF:蘇生中に胸骨圧迫している時間の割合)を下げます。
CCFが高いほど生存と関連することが報告されています。 


落とし穴③:ショック前後の“止まりすぎ”(Peri-shock pause)

ショックが必要な場面(VF/pVT)で、ありがちな中断が ショック前後の停止です。

  • 充電のために止める
  • 解析のために止める
  • ショック後に“いちいち”波形・脈を見て止まる

Peri-shock pause(ショック周辺の胸骨圧迫中断)が長いほど、除細動成功や生存が悪化する関連が示されています(特にショック前の停止時間が重要)。 

AHAでは、事前充電やショック後はリズムチェックを挟まず直ちに胸骨圧迫を再開することが推奨されています。 


正しい“2分サイクル運用”:止めるのは10秒、止める前に準備

ここからが実務。
2分サイクルを「止めない設計」にすると、リズムチェックは短く、ミスも減ります。 

2分サイクルの型(声かけテンプレつき)

1:45

  • タイムキーパー:「リズムチェック15秒前です。」

1:50

  • リーダー:「10秒後にリズムチェック。脈の触知しといて。」
  • 脈担当:頸動脈or大腿動脈触知の部位を“当てておく”(止めてから探さない)

1:55〜1:59(まだ心マは止めない)

2:00(止める:ここから10秒勝負)

  • リーダー:「リズムチェック」
  • 解析:ショック適応?
    • ショック適応なら:電気ショック → 即心マ再開(“戻った?”は後回し) 
      ※パッドの場合は充電中も胸骨圧迫
    • ショック非適応ショック/整った波形なら:脈確認(10秒以内)
      • 脈が確実にある → ROSC対応へ
      • 脈が不確実/触れない → 心マ再開(PEA扱い)

「脈、わからない問題」を潰す現実解

脈は現場で一番揉めます。だから運用で潰します。

  • “確実でないなら無い”ルール(10秒以内) 
  • ETCO₂があるなら、急な上昇はROSCの手がかりになり得る(ただし最終判断は循環所見とセット) 

今日から使える:リズムチェックの“コピペ用ルール”5行

  1. リズムチェックは2分ごと。止めるのは10秒以内。 
  2. 波形が整っても脈がない=PEA。モニターだけでROSC判断しない。 
  3. 脈が“確実に”触れないなら、即心マ再開。 
  4. ショック後は即心マ再開(後ショックの確認で止まらない)。 
  5. ショック周りの停止(peri-shock pause)は短いほど良い。 

まとめ:リズムチェックは「中断を最小にした意思決定」

  • リズムチェックは2分ごと、脈確認は10秒以内が基本。 
  • 「モニターだけ見て“戻った?”」はPEAを生む。
  • 中断が長いほど、胸骨圧迫率が下がり、予後に不利になり得る。 
  • ショック前後の停止は短く(peri-shock pauseを削る)。 

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参考文献(根拠)

  1. International Liaison Committee on Resuscitation (ILCOR). Adult Basic Life Support CoSTR 2025(胸骨圧迫は2分ごとのリズム評価、no-flow/中断最小化の論点)。 
  2. American Heart Association. Adult Basic Life Support(リズムチェック中の脈確認は10秒以内、脈が確実でなければ即心マ再開/ショック後は心マを直ちに再開、など)。 
  3. American Heart Association. Adult Cardiac Arrest Algorithm 2025(2分サイクル、High-Quality CPR:中断最小化)。 
  4. Christenson J, et al. Chest compression fraction and survival(CCFが生存と独立して関連)。Circulation. 2009. 
  5. Cheskes S, et al. Peri-shock pause and outcomes(ショック周辺の中断が予後と関連)。Circulation. 2011. 
  6. Cheskes S, et al. Impact of peri-shock pause on survival(特にpre-shock pause短縮が予後に寄与)。Resuscitation. 2013/2014. 
  7. European Resuscitation Council Guidelines 2025(ショック直後のリズム/脈チェックでCPRを遅らせない)。 
  8. Wigginton JG, et al. AHA Adult Advanced Life Support 2025(ETCO₂の急上昇をROSC検出の補助として使用し得る等)

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