この記事の結論(30秒)
・敗血症は急変の主要原因の1つ|早期発見こそが急変予防のカギ
・qSOFAだけで判断するのは危険|約半数を見逃すという研究結果
・NEWS2で「小さなサイン」を拾って早期介入につなげる
・時間との闘い|抗菌薬1時間ルールを守るのは看護師の報告次第
・看護師の「なんか変」を言語化する力が急変予防の決め手
この記事でわかること
・敗血症と急変予防の関係
・qSOFAの限界とNEWS2の活用法
・「なんか変」を言語化する3ステップ
・高齢者で注意すべきサイン
・qSOFAの限界とNEWS2の活用法
・「なんか変」を言語化する3ステップ
・高齢者で注意すべきサイン
こんな経験ありませんか?
・「様子見」していたら翌朝には急変していた...
・「なんか変」と感じたけど、上手く医師に伝えられなかった
・qSOFAは1点だけだったから、報告を見送った
・抗菌薬が遅れて、患者さんが急激に悪化した
・「なんか変」と感じたけど、上手く医師に伝えられなかった
・qSOFAは1点だけだったから、報告を見送った
・抗菌薬が遅れて、患者さんが急激に悪化した
敗血症は院内急変の主要原因の1つ。抗菌薬投与が1時間遅れるごとに死亡率が上がることが分かっていて、早期発見こそが急変予防の鍵です。
でも実は、よく使われるqSOFAだけに頼ると半分近く見逃してしまうという研究結果があります。
この記事では、急変対応.netの【急変対応マニュアル・敗血症編】として、看護師が「小さなサイン」を見逃さず、急変を予防するためのコツを整理します。
でも実は、よく使われるqSOFAだけに頼ると半分近く見逃してしまうという研究結果があります。
この記事では、急変対応.netの【急変対応マニュアル・敗血症編】として、看護師が「小さなサイン」を見逃さず、急変を予防するためのコツを整理します。
Contents
敗血症ってどんな病気?|急変につながる"感染の暴走"
敗血症をひとことで言うと:
「感染症がひどくなって、体のいろんな臓器がダメージを受けてる状態」です。
放っておくと急激に血圧低下・意識障害・多臓器不全に進行し、院内死亡率が大きく上がります。
「感染症がひどくなって、体のいろんな臓器がダメージを受けてる状態」です。
放っておくと急激に血圧低下・意識障害・多臓器不全に進行し、院内死亡率が大きく上がります。
イメージしやすい例
肺炎で入院している患者さん
→ だんだん血圧が下がる・意識がボーッとする・尿量が減る
→ これが「感染症で臓器がダメージを受けてる」=敗血症
→ 早く気づかないとショック・心停止へと急変
→ だんだん血圧が下がる・意識がボーッとする・尿量が減る
→ これが「感染症で臓器がダメージを受けてる」=敗血症
→ 早く気づかないとショック・心停止へと急変
医学的な定義(Sepsis-3)
敗血症(Sepsis)
感染に対する制御不全な宿主反応による、生命を脅かす臓器障害
敗血症性ショック(Septic Shock)
十分な輸液をしても血圧が保てず(MAP 65以上を維持するのに昇圧薬が必要)、乳酸値が2 mmol/Lを超える状態
Sepsis-3: 2016年に国際的に発表された敗血症の新しい定義(JAMA 2016)。現在は「感染+臓器障害」を重視。
MAP: 平均血圧(Mean Arterial Pressure)。臓器に血液が届いているかの目安。
MAP: 平均血圧(Mean Arterial Pressure)。臓器に血液が届いているかの目安。
qSOFA|ベッドサイドで使える3項目
qSOFAは検査なしでベッドサイドで評価できる3項目のスコア。感染症の患者さんで「敗血症かも?」と疑うときに使います。
意識
GCS 15未満
(いつもより反応が鈍い・返事がおかしい)
(いつもより反応が鈍い・返事がおかしい)
呼吸数
22 回/分 以上
(息が速い)
(息が速い)
収縮期血圧
100 mmHg 以下
(いつもより低い)
(いつもより低い)
3項目のうち2つ以上当てはまれば"qSOFA陽性"
感染症を疑っている患者さんで2項目以上あれば、敗血症を強く疑って対応を始めます。
qSOFAの落とし穴|急変予防には不十分
qSOFAは簡単で便利ですが、実は見逃しがかなり多いことが分かっています。qSOFAが陽性になる頃にはもう患者さんは悪化していることが多く、急変予防には十分とは言えません。最新のガイドラインでも「qSOFAだけに頼らないで」と明記されています。
qSOFAはどれくらい見逃す?
MDPI 2022(救急搬送886例)
qSOFAの感度 34% = 100人の敗血症患者のうち66人を見逃す
Springer 2022(救急外来312例)
qSOFA 57% vs NEWS2 96% → NEWS2の方が圧倒的に多く拾える
大規模メタ解析(62,338例)
qSOFAのプール感度 46% → 敗血症の半分以上を見逃す計算
ガイドラインの明確な推奨(SSCG 2021)
「急性期の入院患者さんの敗血症スクリーニングでは、qSOFAだけでなく、NEWS・NEWS2・MEWS・SIRSを使うことを推奨する」
日本のガイドライン(J-SSCG 2024)でも「qSOFAは敗血症の早期発見に感度が低い」と明記されています。
なぜqSOFAは急変予防に向かないの?
qSOFAの3項目(意識・呼吸・血圧)は、もうすでに体が悲鳴をあげている状態のサインです。
つまりqSOFAで「陽性」と気づいた時には、患者さんはもう急変の一歩手前。予防するには遅すぎることが多いんです。
急変を防ぐには、もっと早い段階の小さな変化を拾う必要があります。
つまりqSOFAで「陽性」と気づいた時には、患者さんはもう急変の一歩手前。予防するには遅すぎることが多いんです。
急変を防ぐには、もっと早い段階の小さな変化を拾う必要があります。
感度: 病気を正しく拾える割合。感度が低い=見逃しが多い。
SIRS・MEWS: 敗血症や急変を見つけるための他のスコア。日本ではNEWS2が使いやすいです。
SIRS・MEWS: 敗血症や急変を見つけるための他のスコア。日本ではNEWS2が使いやすいです。
NEWS2|急変を予防する早期発見スコア
NEWS2はイギリスで広く使われている早期発見のためのスコア。普段のバイタルサイン7項目を点数化するだけで、敗血症だけでなくあらゆる急変の予兆を早期に捉えられます。看護師の「小さな気づき」を客観的な数字に置き換えられる道具です。
新人さんはまずこれだけ覚えよう
NEWS2で1項目でも3点、または合計5点以上があればただちに医師評価が必要。
特にこの3つを覚えておけば大丈夫:
特にこの3つを覚えておけば大丈夫:
・呼吸数 25回以上 → 3点(かなり速い)
・収縮期血圧 90以下 → 3点(低い)
・心拍数 131以上 → 3点(かなり速い)
NEWS2 スコアリングシステム(公式版)
| 生理学的パラメータ | スコア | ||||||
|---|---|---|---|---|---|---|---|
| 3 | 2 | 1 | 0 | 1 | 2 | 3 | |
| 呼吸数 (回/分) | ≤8 | 9-11 | 12-20 | 21-24 | ≥25 | ||
| SpO₂ Scale 1 (%) | ≤91 | 92-93 | 94-95 | ≥96 | |||
| SpO₂ Scale 2 (%) COPD等 | ≤83 | 84-85 | 86-87 | 88-92 ≥93(室内気) | 93-94 酸素下 | 95-96 酸素下 | ≥97 酸素下 |
| 酸素投与の有無 | 酸素 | 室内気 | |||||
| 収縮期血圧 (mmHg) | ≤90 | 91-100 | 101-110 | 111-219 | ≥220 | ||
| 脈拍 (回/分) | ≤40 | 41-50 | 51-90 | 91-110 | 111-130 | ≥131 | |
| 意識 | 清明 | CVPU | |||||
| 体温 (℃) | ≤35.0 | 35.1-36.0 | 36.1-38.0 | 38.1-39.0 | ≥39.1 | ||
SpO₂ Scale 2: COPDなど慢性低酸素状態の患者さん用(目標SpO2 88-92%)
CVPU: C=Confusion(混乱)/V=Voice(声で反応)/P=Pain(痛みで反応)/U=Unresponsive(反応なし)
出典: Royal College of Physicians. National Early Warning Score (NEWS) 2. 2017
CVPU: C=Confusion(混乱)/V=Voice(声で反応)/P=Pain(痛みで反応)/U=Unresponsive(反応なし)
出典: Royal College of Physicians. National Early Warning Score (NEWS) 2. 2017
NEWS2 判定基準|合計スコアで対応を決める
0点: 最小限のモニタリング(12時間ごとの観察)
1-4点: 低リスク(4〜6時間ごとの評価)
5-6点 or 1項目で3点: 中等度リスク|ただちに医師評価・1時間ごとのモニタリング
7点以上: 高リスク|緊急医師評価・持続モニタリング・ICU検討
NEWS2が急変予防に強い理由
・見逃しが少ない(感度96%という研究も)
・バイタルだけで計算できる(採血不要・勤務中いつでも)
・点数化できるから客観的に医師に伝えられる
・早い段階で小さな変化を捉えられる
・看護記録と連動させれば経時的な悪化も一目
・バイタルだけで計算できる(採血不要・勤務中いつでも)
・点数化できるから客観的に医師に伝えられる
・早い段階で小さな変化を捉えられる
・看護記録と連動させれば経時的な悪化も一目
「なんか変」を言語化する|急変予防の看護師スキル
看護師の一番の強みは、患者さんの「いつもと違う」に気づくこと。この感覚こそが急変予防の最大の武器です。
でも「なんとなく変」のままでは医師に伝わらず、介入が遅れます。大事なのは、その感覚を具体的な言葉・観察項目に置き換えて報告すること。以下のポイントを使って言語化していきましょう。
でも「なんとなく変」のままでは医師に伝わらず、介入が遅れます。大事なのは、その感覚を具体的な言葉・観察項目に置き換えて報告すること。以下のポイントを使って言語化していきましょう。
意識レベルの低下
「反応が遅い」「受け答えがおかしい」「不穏・せん妄」
→ 「GCSがいつもE4V5M6だったが、今日はV4」と具体化
高齢者はこれが唯一のサインのことも
→ 「GCSがいつもE4V5M6だったが、今日はV4」と具体化
高齢者はこれが唯一のサインのことも
末梢循環不全
「手足が冷たい」「蒼白」「CRT 2秒以上」「網状皮斑」
→ 「四肢冷感・CRT 3秒・膝に網状皮斑」と具体化
血圧OKでも末梢が悪ければ要注意
→ 「四肢冷感・CRT 3秒・膝に網状皮斑」と具体化
血圧OKでも末梢が悪ければ要注意
尿量減少
「尿が減った気がする」
→ 「0.5 mL/kg/時を3時間下回る」と数字で
腎灌流低下のサイン
→ 「0.5 mL/kg/時を3時間下回る」と数字で
腎灌流低下のサイン
体温異常
発熱だけでなく36℃未満の低体温も敗血症サイン
→ 「体温35.2℃、悪寒なし、末梢冷感」と具体化
高齢者は低体温型が多い
→ 「体温35.2℃、悪寒なし、末梢冷感」と具体化
高齢者は低体温型が多い
頻呼吸
「なんか息が速い」
→ 「呼吸数22→28/分に上昇、SpO2は95%」
呼吸数は最も早期に変化する
→ 「呼吸数22→28/分に上昇、SpO2は95%」
呼吸数は最も早期に変化する
皮膚所見の変化
初期は温かい→後期に冷たくなる
→ 「1時間前は四肢温暖だったが、現在は冷感」
この変化のタイミングが悪化サイン
→ 「1時間前は四肢温暖だったが、現在は冷感」
この変化のタイミングが悪化サイン
「なんか変」の言語化3ステップ
Step 1: 自分の感覚を書き出す(例:「顔色が悪い」)
Step 2: 観察項目に置き換える(例:「蒼白・CRT 3秒・四肢冷感」)
Step 3: バイタル・スコアの数値と合わせる(例:「NEWS2 5点」)
この3ステップで報告すると、医師も「客観的な変化」として動きやすくなります。これが急変予防の第一歩です。
Step 2: 観察項目に置き換える(例:「蒼白・CRT 3秒・四肢冷感」)
Step 3: バイタル・スコアの数値と合わせる(例:「NEWS2 5点」)
この3ステップで報告すると、医師も「客観的な変化」として動きやすくなります。これが急変予防の第一歩です。
高齢者はサインが出にくい|最大のピットフォール
高齢者・糖尿病・免疫抑制剤を使ってる患者さんでは、典型的な敗血症のサインが出にくく、急変してから気づくケースが多いです:
・熱が出ない(むしろ低体温になることも)
・頻脈が出にくい(β遮断薬を飲んでる人)
・意識障害・せん妄が唯一の症状のことも
・食欲低下・転倒・「いつもと違う」が初発症状
・もともと高血圧の人は"普通の血圧"が実は相対的低血圧
・頻脈が出にくい(β遮断薬を飲んでる人)
・意識障害・せん妄が唯一の症状のことも
・食欲低下・転倒・「いつもと違う」が初発症状
・もともと高血圧の人は"普通の血圧"が実は相対的低血圧
鉄則: 高齢者の「なんとなく調子が悪い」は感染症・敗血症を疑う
CRT(Capillary Refill Time): 爪を5秒押して離したあと、色が戻るまでの時間。末梢の血流の目安。
網状皮斑(mottling): 皮膚にできる網目状の斑点。血流が悪くなっているサイン。
網状皮斑(mottling): 皮膚にできる網目状の斑点。血流が悪くなっているサイン。
敗血症は時間との闘い|1時間の遅れが急変を招く
敗血症を疑ったら「1時間以内に何をするか」が生死を分けます。抗菌薬投与が1時間遅れるごとに死亡率が上がることが複数の研究で示されており、初期対応の遅れ=急変・死亡のリスクに直結します。
看護師の報告の速さが命を守る
医師が敗血症の指示を出すには、まず看護師の気づきと報告が必要です。看護師が5分早く報告すれば、抗菌薬も5分早く入る。この積み重ねが急変予防につながります。
J-SSCG 2024バンドル|直ちにやる5つのこと
バンドルとは「まとめてやるべき治療」のこと。J-SSCG 2024では、感染と臓器障害を疑った時点で直ちに5つの項目を並行して進めることが推奨されています。これらを1時間以内に完遂することが急変予防の鍵です。
バンドルの全体像
直ちに(数分以内〜1時間以内)
① 微生物検査(血液培養2セット+感染巣の検体)
② 抗菌薬投与(経験的抗菌薬)
③ 初期蘇生(調整晶質液・ノルアドレナリン・乳酸繰り返し・心エコー)
可及的速やかに
④ 感染源の探索
⑤ 感染源のコントロール
① 微生物検査(血液培養2セット+感染巣の検体)
② 抗菌薬投与(経験的抗菌薬)
③ 初期蘇生(調整晶質液・ノルアドレナリン・乳酸繰り返し・心エコー)
可及的速やかに
④ 感染源の探索
⑤ 感染源のコントロール
① 血液培養 2セット|抗菌薬の前に
血液培養は原因菌を特定する検査。抗菌薬を投与する前に採取することが鉄則です(抗菌薬投与後だと菌が検出されにくくなる)。
なぜ2セット?
1セットだと皮膚常在菌との区別がつきにくい。別々の部位から2セット採ることで、本当の原因菌かを判断できる
1セットとは?
好気性ボトル1本 + 嫌気性ボトル1本=1セット。2セットで計4本必要
感染巣からも
肺炎なら喀痰、尿路感染なら尿、髄膜炎なら髄液など、感染が疑われる部位からも検体を採取
ピットフォール|抗菌薬投与を遅らせない
血液培養を優先するあまり、抗菌薬投与が大幅に遅れてはいけません。採取が難しい場合でも、45分以上遅れるなら先に抗菌薬を投与することも検討されます(SSCG 2021)。
看護師としては「ルート確保と採血・血培を同時進行」する段取りが大事です。
看護師としては「ルート確保と採血・血培を同時進行」する段取りが大事です。
② 抗菌薬|1時間以内に投与
敗血症を疑ったら1時間以内に広域抗菌薬を投与することが目標(J-SSCG 2024・SSCG 2021)。原因菌が特定される前に、可能性のある菌を広くカバーする抗菌薬を経験的に選びます。
経験的抗菌薬とは
原因菌が分かる前(血液培養結果が出る前)に、感染部位・患者背景・地域の耐性菌傾向から予想して選ぶ抗菌薬。培養結果が出たら適切な抗菌薬へ切り替え(デエスカレーション)。
代表的な経験的抗菌薬
・メロペネム(MEPM)
・ピペラシリン/タゾバクタム(PIPC/TAZ)
・セフェピム(CFPM)
※施設・感染部位・重症度で選択
・ピペラシリン/タゾバクタム(PIPC/TAZ)
・セフェピム(CFPM)
※施設・感染部位・重症度で選択
看護師の動き
・指示受けたら即座に調製・投与
・投与前にアレルギー確認
・投与時刻を正確に記録(1時間以内達成の証拠)
・投与前にアレルギー確認
・投与時刻を正確に記録(1時間以内達成の証拠)
ピットフォール|「指示待ち」で時間ロス
敗血症を疑った時点で「医師に抗菌薬の指示を確認」するのが大事。医師が他のことに集中していると抗菌薬の指示が後回しになることも。
「先生、抗菌薬の指示はいかがしますか?」と能動的に確認する姿勢が、1時間ルールを守る鍵です。
「先生、抗菌薬の指示はいかがしますか?」と能動的に確認する姿勢が、1時間ルールを守る鍵です。
③ 初期輸液|調整晶質液を急速投与
敗血症では血管拡張と血管透過性亢進により血管内のボリュームが減少しています。低血圧や乳酸上昇があれば晶質液を急速投与して循環を回復させます。
推奨される輸液
調整晶質液(ラクテック・フィジオ140・プラズマライトA等)
生食より臓器障害が少ないとされる
生食より臓器障害が少ないとされる
投与量
低血圧・乳酸4 mmol/L以上なら30 mL/kg を3時間以内(SSCG 2021目安)
体重60kgなら1800 mL
体重60kgなら1800 mL
ルート確保
末梢静脈路を2本(太いサイズ18G以上推奨)
急速投与・採血・抗菌薬の並行使用に備える
急速投与・採血・抗菌薬の並行使用に備える
ピットフォール|心不全・腎不全では慎重に
・心不全合併患者:30 mL/kgの急速投与で肺うっ血をきたすことがある。輸液反応性を見ながら慎重に
・高齢者・慢性腎不全:同様に過負荷に注意
・輸液後にSpO2低下・呼吸数増加・肺ラ音が出たら肺うっ血のサイン。すぐ医師報告
・高齢者・慢性腎不全:同様に過負荷に注意
・輸液後にSpO2低下・呼吸数増加・肺ラ音が出たら肺うっ血のサイン。すぐ医師報告
晶質液(しょうしつえき): 電解質の入った輸液。生食やリンゲル液。
調整晶質液: 生食より体液組成に近い輸液(ラクテック等)。
調整晶質液: 生食より体液組成に近い輸液(ラクテック等)。
④ ノルアドレナリン|早期から併用
J-SSCG 2024では、低血圧を伴う場合「初期輸液と並行してノルアドレナリンを早期に開始」と明記されました。従来のように「輸液で反応しなかったら昇圧薬」ではなく、早めに併用するのがポイント。
目標MAP ≥ 65 mmHg
ノルアドレナリンを調整して平均血圧(MAP) 65 mmHg以上を維持する。
これは臓器(脳・腎・冠動脈など)に血液が届くための最低ライン。
MAP = 拡張期血圧 + (収縮期-拡張期)/3
これは臓器(脳・腎・冠動脈など)に血液が届くための最低ライン。
MAP = 拡張期血圧 + (収縮期-拡張期)/3
第一選択
ノルアドレナリン(SSCG 2021・J-SSCG 2024)
α1受容体刺激で血管収縮→血圧上昇
α1受容体刺激で血管収縮→血圧上昇
開始量
0.05〜0.1 μg/kg/分から開始し、
MAP 65以上を目標に漸増
MAP 65以上を目標に漸増
投与経路
できれば中心静脈路(CV)から。
緊急時は末梢から開始→早期にCVへ切り替え
緊急時は末梢から開始→早期にCVへ切り替え
追加の選択肢
ノルアドレナリン増量でも維持困難なら
バソプレシンやヒドロコルチゾンを追加検討
バソプレシンやヒドロコルチゾンを追加検討
ピットフォール|末梢投与の血管外漏出
ノルアドレナリンを末梢から投与する場合、血管外漏出で皮膚壊死を起こすことがあります。
・太い血管(肘正中静脈など)を選ぶ
・刺入部を頻回に観察(腫脹・発赤・痛み)
・できるだけ早くCVに切り替え
・太い血管(肘正中静脈など)を選ぶ
・刺入部を頻回に観察(腫脹・発赤・痛み)
・できるだけ早くCVに切り替え
⑤ 乳酸値・心エコー|治療効果の判定
J-SSCG 2024では乳酸値・心エコーの「繰り返し」評価が推奨されました。治療の効果を客観的に判定し、次の介入を決めるため。
乳酸値の意味
細胞が酸欠になると産生される物質。
2 mmol/L以上で組織灌流低下を示唆
4 mmol/L以上は重症・予後不良のサイン
2 mmol/L以上で組織灌流低下を示唆
4 mmol/L以上は重症・予後不良のサイン
繰り返しの頻度
治療開始後2〜4時間ごとに再測定
乳酸値が下がれば治療効果あり
下がらなければ介入強化を検討
乳酸値が下がれば治療効果あり
下がらなければ介入強化を検討
心エコーで評価
・IVC径:輸液反応性
・左室収縮:心機能低下なし?
・右室拡大:肺塞栓除外
・心嚢液:タンポナーデ除外
・左室収縮:心機能低下なし?
・右室拡大:肺塞栓除外
・心嚢液:タンポナーデ除外
感染源の探索とコントロール|看護師の視点が手がかり
抗菌薬だけでは感染は治まりません。感染の元となっている部位(感染源)を見つけて、物理的に取り除くことも同じくらい重要です。看護師の観察が、感染源特定の大きな手がかりになります。
主な感染源と対策
・肺炎 → 喀痰培養・胸部CT・気管吸引
・尿路感染 → 尿培養・閉塞あればカテーテル・ステント
・胆道感染 → 胆汁ドレナージ(PTCD・ERCP)
・腹腔内感染 → 膿瘍ドレナージ・手術(穿孔・絞扼)
・カテーテル感染 → カテーテル抜去・入れ替え
・軟部組織感染 → デブリードマン(壊死組織除去)
・尿路感染 → 尿培養・閉塞あればカテーテル・ステント
・胆道感染 → 胆汁ドレナージ(PTCD・ERCP)
・腹腔内感染 → 膿瘍ドレナージ・手術(穿孔・絞扼)
・カテーテル感染 → カテーテル抜去・入れ替え
・軟部組織感染 → デブリードマン(壊死組織除去)
看護師が見るべき感染源のヒント
・咳・痰・SpO2低下 → 肺炎
・頻尿・排尿時痛・濁った尿 → 尿路感染
・右上腹部痛・黄疸 → 胆道感染
・腹痛・腹部膨隆 → 腹腔内感染
・カテ刺入部の発赤・熱感 → カテーテル感染
・皮膚の発赤・腫脹・激痛 → 壊死性軟部組織感染
・頻尿・排尿時痛・濁った尿 → 尿路感染
・右上腹部痛・黄疸 → 胆道感染
・腹痛・腹部膨隆 → 腹腔内感染
・カテ刺入部の発赤・熱感 → カテーテル感染
・皮膚の発赤・腫脹・激痛 → 壊死性軟部組織感染
ICU急性期介入|初期バンドル後のケア
初期バンドルが完了した後も、ICUで継続的な治療・管理が必要です。J-SSCG 2024で新たに追加・強調された項目を中心に整理します。
血糖管理
目標144〜180 mg/dL(J-SSCG 2024新規)
厳格すぎる管理は低血糖リスクで逆効果
厳格すぎる管理は低血糖リスクで逆効果
抗菌薬デエスカレーション
培養結果が出たら標的の狭域抗菌薬に切り替え
耐性菌出現を防ぐ
耐性菌出現を防ぐ
DIC診断・治療
凝固・線溶系の異常を評価
必要に応じ抗凝固療法
必要に応じ抗凝固療法
家族ケア・情報提供
患者・家族への丁寧な情報提供
意思決定支援・倫理的配慮
意思決定支援・倫理的配慮
早期リハビリ
PICS予防のため早期から開始
筋力低下・認知機能低下・PTSD予防
筋力低下・認知機能低下・PTSD予防
鎮痛・鎮静管理
痛みを適切に評価・管理
過鎮静を避ける(ABCDEFバンドル)
過鎮静を避ける(ABCDEFバンドル)
DIC(Disseminated Intravascular Coagulation): 播種性血管内凝固症候群。全身で血栓と出血が同時に起こる重篤な状態。
PICS(Post-Intensive Care Syndrome): 集中治療後症候群。ICU退室後も身体機能・認知機能・精神面に長期的な障害が残る状態。
デエスカレーション: 広域抗菌薬から原因菌に効く狭域抗菌薬へ切り替えること。
PICS(Post-Intensive Care Syndrome): 集中治療後症候群。ICU退室後も身体機能・認知機能・精神面に長期的な障害が残る状態。
デエスカレーション: 広域抗菌薬から原因菌に効く狭域抗菌薬へ切り替えること。
1時間チェックリスト|急変を防ぐ看護師の動き方
敗血症を疑ったら、看護師はこのチェックリストを頭に入れて動きましょう。全部を並行して進めるのがポイント。このスピード感こそが急変予防の決め手です。
敗血症を疑った瞬間からの流れ
☐ 応援要請(ドクターコール・RRS起動)
☐ モニタリング開始(SpO2・心電図・血圧・体温)
☐ 末梢静脈路2本確保(18G以上)
☐ 採血+血液培養2セット(血ガス・乳酸・電解質・凝固含む)
☐ 抗菌薬投与の指示確認→即調製・投与
☐ 晶質液急速投与(低血圧・乳酸高値時30 mL/kg)
☐ ノルアドレナリン準備(MAP<65なら開始)
☐ 感染源の情報収集(問診・既往歴・最近のカテ等)
☐ 記録(時刻・介入内容・反応)
☐ 家族への連絡・説明準備
☐ モニタリング開始(SpO2・心電図・血圧・体温)
☐ 末梢静脈路2本確保(18G以上)
☐ 採血+血液培養2セット(血ガス・乳酸・電解質・凝固含む)
☐ 抗菌薬投与の指示確認→即調製・投与
☐ 晶質液急速投与(低血圧・乳酸高値時30 mL/kg)
☐ ノルアドレナリン準備(MAP<65なら開始)
☐ 感染源の情報収集(問診・既往歴・最近のカテ等)
☐ 記録(時刻・介入内容・反応)
☐ 家族への連絡・説明準備
鉄則|迷ったら医師を呼ぶ
敗血症は時間との闘い。自分の判断に自信がなくても早めに医師・RRT(院内迅速対応チーム)を呼ぶのが鉄則。「まだ大丈夫かも」と様子を見ている間に急変するのが敗血症の怖さです。
「空振りでもいいから呼ぶ」という文化が、患者さんの命を守り、急変を未然に防ぎます。
「空振りでもいいから呼ぶ」という文化が、患者さんの命を守り、急変を未然に防ぎます。
医師への報告|要点だけ電話で伝える
敗血症を疑った時は、要点だけを短く伝えて診察につなげるのが基本。SBARに当てはめすぎると堅苦しくなるので、「誰が・どんな経過で・今どう悪いか・見てほしい」を電話で30秒以内で伝えましょう。
電話報告の例
「先生、1人NEWS悪化してて見てほしい人がいるんですけど。
整形入院中で昨日尿路感染症の診断で抗菌薬投与中の70歳男性です。
呼吸も促迫し、HR 130台、MAPも65切りそうで、一度みてもらえないですか?」
整形入院中で昨日尿路感染症の診断で抗菌薬投与中の70歳男性です。
呼吸も促迫し、HR 130台、MAPも65切りそうで、一度みてもらえないですか?」
報告のコツ
・冒頭で緊急度を伝える:「NEWS悪化してて見てほしい人が」
・患者情報は最小限:年齢・入院科・現治療・抗菌薬まで
・悪化項目は数字で:「呼吸促迫・HR 130台・MAP 65切りそう」
・ゴールは診察依頼:治療指示は医師が判断するので看護師は提案しすぎない
・患者情報は最小限:年齢・入院科・現治療・抗菌薬まで
・悪化項目は数字で:「呼吸促迫・HR 130台・MAP 65切りそう」
・ゴールは診察依頼:治療指示は医師が判断するので看護師は提案しすぎない
やりがちな冗長報告
・「いつもと様子が違って...」→ 主観的、医師は困る
・バイタル全部羅列 → 悪化項目だけで十分
・「血培と乳酸と輸液の指示を」→ 診察後に医師が判断する
・経過を長々と → まず「見てほしい」を最初に
・バイタル全部羅列 → 悪化項目だけで十分
・「血培と乳酸と輸液の指示を」→ 診察後に医師が判断する
・経過を長々と → まず「見てほしい」を最初に
MAP: 平均血圧(Mean Arterial Pressure)。臓器灌流の指標で、65 mmHg以下は組織灌流不全のサイン。敗血症診療ではSBPよりMAPが重視される。
よくある質問(FAQ)
Q1. qSOFAは使わなくていいの?
使わないのではなく、単独で使わないというのが正確。qSOFAは予後予測には有用ですが、スクリーニング(早期発見)にはNEWS2やMEWS・SIRSと組み合わせて使います。SSCG 2021・J-SSCG 2024でもこの方針です。
Q2. NEWS2が5点以上ありましたが、敗血症以外の原因の可能性は?
もちろんあります。NEWS2は急変全般のリスクを評価するスコアで、敗血症だけを検出するものではありません。心不全増悪・肺塞栓・出血など他の急変原因も考慮しつつ、感染を疑う所見(発熱・感染源)があれば敗血症として対応を開始します。
Q3. 熱が出ない患者さんでも敗血症?
はい、あり得ます。特に高齢者・糖尿病・免疫抑制剤使用中・敗血症性ショック初期では低体温(36℃未満)を呈することもあります。発熱に頼らず、意識・呼吸・末梢循環などの総合的な評価が重要です。
Q4. 抗菌薬は1時間以内と聞いたけど、遅れそうな時は?
1時間以内が目標ですが、敗血症性ショックでは特に急ぎます。血液培養採取が難しく45分以上遅れるなら、先に抗菌薬を投与することが検討されます(SSCG 2021)。ルート確保・採血・血培・抗菌薬調製を並行で進めるのが看護師の腕の見せ所です。
Q5. 30 mL/kgの輸液で心不全にならない?
可能性はあるので輸液反応性を見ながら分割投与することが多いです。心不全既往・高齢者・腎不全患者では一律30 mL/kgではなく、バイタル・SpO2・肺ラ音を見ながら慎重に。輸液後に呼吸数増加・SpO2低下があれば肺うっ血のサイン、医師にすぐ報告を。
Q6. MAPってどうやって計算するの?
MAP = 拡張期血圧 + (収縮期-拡張期)÷3 で計算します。例えば血圧120/80なら、MAP = 80 + (120-80)÷3 = 約93 mmHg。敗血症ではMAP 65以上の維持が目標。モニターに表示されるMAP値を看るのが一番早いです。
Q7. 「なんか変」と感じた時、医師を呼ぶ基準は?
明確な基準はないですが、目安としてNEWS2 5点以上・1項目で3点・意識障害の出現があれば迷わず報告を。また、数字が正常でも「いつもと違う」と感じたら空振りを恐れず報告するのが急変予防の鍵です。RRT(院内迅速対応チーム)がある施設なら積極的に活用しましょう。
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執筆・監修
万波 大悟
MANAMI DAIGO
急変対応.net 代表
経歴・資格
現職
診療看護師(NP)
専門資格
元 救急看護認定看護師
インストラクター
AHA-ACLSファカルティ
(提携ITC: JSISH-ITC)
(提携ITC: JSISH-ITC)
学会活動
救急看護学会 評議員
本記事は日本版敗血症診療ガイドライン2024 (J-SSCG 2024)、Surviving Sepsis Campaign 2021、SCCM 2026、RCP NEWS2 Guidelinesに準拠して執筆しています。臨床判断にあたっては各施設のプロトコルに従ってください。
参考ガイドライン・文献
国際ガイドライン
・Evans L, et al. Surviving Sepsis Campaign: International Guidelines 2021. Intensive Care Med. 2021・SCCM. Surviving Sepsis Campaign Adult Guidelines 2026 Update
・Royal College of Physicians. National Early Warning Score (NEWS) 2. 2017
日本のガイドライン
・日本集中治療医学会・日本救急医学会. 日本版敗血症診療ガイドライン2024 (J-SSCG 2024). 2024年12月正式版公開主要論文
・Singer M, et al. Sepsis-3 definitions. JAMA. 2016;315(8):801-810・Seymour CW, et al. Time to Treatment and Mortality during Mandated Emergency Care for Sepsis. N Engl J Med. 2017
・Usul E, et al. NEWS outperforms qSOFA for sepsis detection. Antibiotics (MDPI). 2022
・Wang C, et al. qSOFA, SIRS and NEWS meta-analysis. PLoS ONE. 2022
・Mellhammar L, et al. NEWS2 is Superior to qSOFA. J Clin Med. 2019
・Levy MM, et al. The Surviving Sepsis Campaign Bundle: 2018 Update. Intensive Care Med. 2018