看護師とフィジカルアセスメント
24時間ベッドサイドに近い看護師にとってフィジカルアセスメント能力は重要です。
この能力を高めるためには、臨床現場をリアルに再現したシミュレーションが必須ですが、皆さんはどのようなフィジカルアセスメントの教育を受けてきましたか?
私の場合は、呼吸音や心音が聴診できるシミュレーターを使ったり、瞳孔にライトを当てて対光反射を観察し合ったりしました。
ただ、このような身体診察の手技だけで終わっていたとしたら大きな間違いです。
看護師が学びたいフィジカルアセスメントとは?
「臨床看護師を対象としたフィジカルアセスメントの教育方法の検討」という報告の中に、「看護師が学びたい、学びを深めたい項目」がありまして、上位は心音の聴診や呼吸音の聴診、肝臓の触診・打診などが選ばれてました。
これってまんま身体診察の手技(フィジカルイグザミネーション)なんですね。
呼吸音や心音は診断がついている場合は予測できますし、医師も所見をとっている場合は聞き分けられるかもしれません。
また、肝臓の触診と打診って何のために所見をとってるのでしょうか。
恐らく、看護教育の一部ではフィジカルイグザムとアセスメントを混同して指導してしまってる流れがあったと推測されます。実際にフィジカルアセスメントの研究を探しても、イグザムの話しかしてなかったりします。
手段と目的が入れ替わってるので、触診難しい、打診して境界を探せないなどという弊害が起きるのは当然です。
もちろん、正確なフィジカルイグザムの技術は身につけたほうが良いと思いますが、アセスメントを伴わない技術になんの意味もありません。
また、頭からつま先まで診ましょう
なんてフレーズもありますが、毎回診られても患者にとってはいい迷惑です。
改めてフィジカルアセスメントとは?
では、フィジカルアセスメントを定義します。
看護基礎教育における「フィジカルアセスメント」教育内容の検討-文献と主要テキストでは以下のように定義されてました。
患者や家族へのインタビューから得られた主観的情報と、ナース自身の手で調べたフィジカルイグザム(視診・触診・聴診・打診)の結果である客観的情報のすべてを総合して下される、患者の身体状況に対する判断。
小坂 信子(2014),看護基礎教育における「フィジカルアセスメント」教育内容の検討-文献と主要テキスト
要は、問診やフィジカルイグザムを意図的に収集していき、判断することが求められます。判断の結果、看護介入や医師への報告、または何もしないということに繋がるわけです。
最終的なゴールが報告を含めた看護介入だとすれば、上記のような技術演習では到達できません。
どんなシミュレーション教育が良いのか?
・転倒した患者さんの対応(転倒の原因も、貧血、電解質異常によるふらつきや意識障害などなど色々)
・入院中の患者さんが呼吸苦を訴えた
・入院中の意識障害
など、症状から緊急度や状態を推論していけるような総合的なシミュレーションが必要ではないでしょうか。
また、優秀な内科医は80%の診断を問診だけでつける
臨床推論を看護に活かそうより
臨床推論と言えば、看護師にとって目新しいもののように言われますが、本来フィジカルアセスメントや看護過程と同じ概念だと思います。
肺炎の診断で入院中に心不全が合併(増悪)した場合、バイタルサインや身体所見はどうなりますか?
24時間ベッドサイドに近い看護師の臨床推論能力が向上し、こうした異変を察知し介入できれば、良いアウトカムに繋がる気がします。
アセスメント能力が身につかないと嘆いている管理職の皆様。
アセスメント能力が身につく教育をしていますか?
フィジカルイグザムの研修だけで終わってませんか?
ぜひ、フィジカルアセスメントの概念やアセスメントに結びつく教育方法になっているか見直してみてください。
最後に
フィジカルアセスメントのプロセスとACLSに含まれている体系的なアプローチやプライマリーサーベイなどは実質同じ概念です。
急変時に患者の症状や所見からアセスメントしたり、急変時ではない診断がついてる患者のアセスメントしたり、看護師として必要なフィジカルアセスメントのプロセスを身につけましょう。
患者アセスメント(フィジカルアセスメント)のプロセス2/2【看護師に必要な急変対応の知識】